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123 宴

ケルート人主催のささやかな宴が村の広場で開催される。ケルート人にとっては初めての組織的な戦争での勝利だ、盛り上がらないはずがない。近隣の村から女子供まで総出で集まってきている。戦利品のハルバードが皆の注目の的のようだ。


「伊織、今回はいろいろ有り難う。他の村の女や子供にも皆、伊織の事は知らせてある。」


どういうわけか、男だけでなく初対面の親子や婦人が代わる代わる挨拶にやって来ていたのは、そういう事か。まあ、男どもの目的の半分はダナイデだったようだが。


「ガラディーも今日は立派な指揮だったぞ。ケルテイクが皆決められたとおりに頑張ったから勝てたのだ。それにあの罠は素晴らしかった。防衛戦にはこれからも役立ちそうだな。」


さきほど呼びに来たケルート人の少女が何かの獲物の骨付き炙り肉を配って回っている。俺も一つ受け取りかぶり付く。


「…美味い!!」


「どうだ、伊織、ケルテイクのご馳走もイケるだろう。」


「ああ、これは美味いな。」


「オーロックのあばら肉だ。こういう日のために各村で燻製にして保存してある。」


「オーロック?」


「こういう奴だ…」


地面にガラディーが描いていく。どうやら野生の牛のようだ。


「オーロックのあばら肉を食うときは、コレだ!!」


ガラディーが飲み物を突き出してくる。山葡萄を自然発酵させたぶどう酒のようだ。


「んぐ、んぐ、んぐ…くあーー。渋みが効いて肉に合うな。」


「ははは。いい飲みっぷりだ。いっそこのままココに住まないか。伊織の嫁になりたくてうずうずしている女共がゴロゴロ居るぞ。」


「それは嬉しいな。だがガラディー、これで当分奴らは来ないとは思うが、警戒だけはしていてくれ。次来る場合は火薬を使ってくるからな。」


「ああ。村ごと守れるようにだな。火薬に耐えられる石の壁だったな。」


「急ぐ必要はない。相手も立て直しはかなりの時間がかかるだろう。それに、次に攻めてくるのは多分魔物領だし…」


「ダナイデ様のカザーフの森にも攻めてくると云うのなら、我々も戦う。」


「有難う。だがそれはまだわからないな。魔物領も広いからな。人間の小国か半独立状態の公領を占領して横から魔物領に攻めて来るかもしれん。」


「人間同士で戦うのか。」


「帝国にとっては、異教徒は最終的にすべて敵だからな。何が有っても驚くには値しない。」


「そうか。わかった。伊織が帰って行くのは仕方がないが、いつ来ても良いように家は造っておこう。それから…おい、ベレヌイをココへ。」


伝令の少女が呼ばれる。この子がベレヌイらしい。


「ケルテイクの女では、今一番頭が良く働き者の女だ。容姿も見ての通り悪くない。伊織の嫁に連れていけ。15歳になったから安心して子供も産ませられる。他にも嫁にさせろと女共がうるさかったが多すぎても伊織が困るだろう。一人に厳選した。俺よりも頭が良いから伊織の難しい話も理解できるはずだ。ベレヌイが伊織から学んだ事が、いずれケルテイクを豊かにするだろう。なあに、足手纏まといにはならん。男ほどではないが猟もできるし弓も放てる。短剣の腕も仲々なものだぞ。」


…いきなりで唖然としている俺を見てすかさずミドリが受ける。


「有難うございます。ガラディーさま。主は小心者ゆえ固まっておりますが主の好みはよく存じ上げています。ベレヌイさんであれば、内心小躍りしているのは間違い有りません。主の7人目の后ですが、我ら7人は全く同等、分け隔てない付き合いですので、どうぞご安心ください。」


ミ、ミドリ、その言い方はちょっとなんとかならんのか…


「ベレヌイさん、これからも旦那イオリさまの嫁は増えていきますが、驚かないでくださいね。旦那イオリさまはどのような種族でも、たぶん神や悪魔であっても皆同じ扱いですよ。すでに嫁の中の2人は魔物ですし。」


ダナイデもこれ幸いと尻馬にのって受け入れ前提で話をすすめていく。


「ダナイデ様、そのお二人のうちのお一人が、あのグリフォンでは御座いませんか?」


なっ!!何故解るんだ。これが噂に聞く『女の勘』というやつか?


「察しの通り、あのグリフォンも嫁の一人ですよ。旦那イオリさま、ベレヌイはとても聡明ですわ。きっとケルテイクと旦那イオリ様を、今以上にしっかりと繋いでくれるでしょう。お言葉を…」


「う、うむ…ベレヌイ、俺は女性の扱いがあまり得手ではないので苦労をかけるかもしれぬが、よしなにたのむ。」


なに言ってんだ、えらいピンボケのお言葉じゃないか…しかし…ベレヌイ…こうして見るとミドリの言う通り、しっかり俺の好みだな。標準サイズの身長に標準サイズのボリューム。特別美女ではないがかなり可愛げがある。その普通さが良い…うぬ、ミドリめ、いつの間に俺の嗜好を盗み取っていたのか…侮れん。



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