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120 手榴弾試作

「ダナイデ、ありがとう。もう一度ガラディーに会いにいくわ。」


「硝石とかの事ですね。火薬とか、なにか判りませんが大事な物のようですが。」


「あまり造りたくなかったんです。時代を大きく進めてしまいますので。でも、相手だけが手に入れると困る。準備だけはしておかないと。」


引っ込んだ直後なのに、また出てきたのでガラディーが驚く。


「すまん、重要なことを思い出した。ガラディーは知っているかな。砂漠とかで白っぽい石で斜めに石の目が通っているのがあるはずなのだが。」


「…白くて斜め?腹痛のときに使う薬のニトラテ石の事か?」


ああ、食中毒に効くから薬につかっているのか。たぶん当たりだな。


「あれば見せてくれるかな。」


実物を持ってきてもらう。やはり硝石だ。


「ありがとう。今回の戦が終われば、この石も大量に集めておいてくれるか。実はコレを使って恐ろしい武器が出来る。」


「そうなのか。強力な長弓を持ってきた伊織が言うなら凄い物ができるのだろう。」


「ああ。だが相手もこの石を狙っているかもしれない。」


「ニトラテ石は砂漠にいくらでも有るから相手も手に入れるぞ。」


…だろうな。第一名前でバレバレだ。ニトロが訛った単語とすぐ判る。参ったな、今回やって来る連中の士気を下げまくっても、新兵器の実験を目の前で見せられたら一気に士気が回復してしまう。それに火薬を使った新兵器でいずれ双方がやりあうなら、攻撃の手加減を今までして来たけど無意味になる。やはりお姉さんや信長さんの殲滅戦が結局正しいのか…


「そうだな。相手もいずれ手に入れるだろう。今回の戦が終われば、このニトラテ石から出来る恐ろしい武器への防御を加えた、村の守り方も話し合おう。新兵器も一個試作するので、実際に見てもらいたい。」



敵が来るまでの時間を利用して木炭を造る。ミドリやテイルにも手伝ってもらい、小さな木炭製造用の石造りのかまを造る。空気が入らないように隙間には詰めれるだけ砂や石灰を詰め樹液で固める。あとは炭になる木材を入れて、窯の下に火を入れて炭素以外の成分を飛ばしていく。粗雑な作りなので多少の木材は失敗するだろうが、だいたいは木炭になるはずだ。


「よし、こんなものだろう。あとは放置して冷えて黒くなったのを取り出すだけだ。」


「木材をこのように加工するのは初めて見ました。ご主人様。」


「普通は寒い時の暖房とかに使うのだけどな。そうだ、帰ったら木炭も暖房用に販売してもいいな。普段から造っておけばいつでも火薬に転用できるし。ドワーフたちが金属鍛える火種にも使えるぞ。」


ミドリが微妙な顔をしている。ミドリはドワーフ社会から疎外されていたからなあ。木炭でミドリに花を持たせてやるのもいいかな。



「主さま~~、かまもう冷えてて熱くなくなっていたーー」


速く造らせたいのだろうミドリは勿論、ダナイデまでセカセカと起こしに来る。後で見なきゃよかったとか思うだろうな…


「わかったわかった。火薬を造るから付いてきて。」


かまから木炭を取り出して丁寧にすりつぶして粉末にする。スライム狩でいつも持ち歩いている硫黄を混ぜて均一にする。硝石を混ぜるが発火しないように水も加えて土器の中で時間をかけて細かくすりつぶしつつ混ぜ込んでいく。


「火薬って、ほとんどがニトラテ石で出来ているのですね、ご主人様。」


「ああ、7割はニトラテ石だからな。よし、これで干しておいて乾燥して水分がなくなれば、火薬の出来上がりだ。火に触れると爆発するし、強い衝撃でも爆発する場合もあるから取り扱いは慎重にな。」


少量の試作品なので夕方には火薬が出来上がる。小ぶりの竹に火薬を詰め、導火線になる縄にも火薬を少量混ぜて、即席手投げ弾の完成だ。広場の中央に手投げ弾を置き、手投げ弾を中心に大きく円を描いて人が近寄らないようにさせる。


「伊織、こんなに離れていては見にくくないか。」


「ガラディー、ここからでも嫌でもその威力は目にするから大丈夫だ。近寄ると大怪我するぞ。」


導火線に火をつけ大急ぎで円の外に退避する。火薬を燃やしながら燃えていく導火線。本体まで火が届いた瞬間!


バーン………


轟音を発して竹筒が炸裂、あたり一面に飛び散る。皆肝をつぶしてへたり込んでいる。そういえば、初期の爆薬は実際の破壊力もさることながら、その轟音と閃光、異臭で人も馬も逃げ惑ったとか聞いたような…


「どうだ、コレが火薬を使った手投げ弾の威力だ。今回は投げずに実験したが、実戦では敵が味方の集団向けて投げ込んで来る。今日造ったのは、あくまで実験用の小さい物だ。実戦ではこの数倍の威力の物が飛んでくるぞ。」


「…こ、こんなものを投げられたら皆大怪我してしまう。戦えない…」


「ああ、だから防御手段を予め用意しないとな。なに、色々方法はある。まずは盾を装備することだ。離れていても爆発の破片で大怪我するので、盾で兵士は身を守る。矢の防御にも使えるので片手で持てる木製の盾を用意するのだ。火薬を使った攻撃がある場合は村を守るには、堀と柵だけでは不十分だ。掘の内側に石積の壁を造っておくとよい。壁にはのぞき窓をつけて向こうが見えるようにしておく。上から投げ込まれるので、敵が来たら家の屋根には水をかけて燃えにくくしておく。火薬は湿ってしまうと爆発しない。」


「そうか。それで防げるのか。だが受け損ねると大怪我だな。」


「ああ。それに火薬は手投げ弾以外にも武器として応用が利くので、何が来るかはわからないぞ。とにかく、今のように爆発するという事を知ってもらえれば良い。」


ついにパンドラの箱を開けてしまった。これから知っている限りの新兵器製造合戦になるのか。

剣と魔法で闘っていた時代なんて、かわいい物だったのかもな…

ダナイデ様と目が合うがお互い言葉が無い。

だが、ガラディー達には弱気な姿は見せられない。


「結局、戦争に綺麗事は通用しないんだよな…」



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