110 サールト巻き込み
ダナイデ様に代金と要望を託して小屋に届けてもらう。
人間の女だけの家にいくのは面倒くさいことになりそうで嫌だからな。
エロ本が出来た時に何処でばら撒くのがよいかも考えておかないと…
…
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今朝もよい天候だ。そういえば殆ど雨に降られた記憶がない。そういう地域なのか。
「サールトにエフソス様とメガロドンのアクセサリーを頼んでから日も経つ。各地の罠を増設しながらジャラランバードに行ってみようか。」
「ご主人様、そろそろ荷台が窮屈ですので、荷車を2台にしましょう。」
「そうだな、運搬物資も多くなってきた。だが交代で曳けなくなるが大丈夫か?」
「戦闘が全くないのですから、余裕です。こんな楽なパーテイーは有りません。」
「そうか。ミドリ達が大丈夫なら2台に増やそう。」
村でもう一台の荷車を調達して各地の罠を増設して回る。漁師のミルセリクも狩人のミエリキも、ちゃんと管理してくれているようで、獲物がかかったまま放置されている様子は無い。霞網は、より目立たないように偽装までされていた。
「ミルセリクもミエリキも、上手くやってくれているな。」
「主さま~、あの二人は臭くないから安心していいと思うよーー」
「そうか。どんな匂いだ?」
「美味しそうなご飯の匂いだよーー」
まあ、二人とも食材管理だからな、そんなとこか。
アチコチ寄り道したのでジャラランバード到着が午後の昼下がりになる。
「ミドリもテイルもお疲れ。サールトの店で休ませてもらおう。」
ダナイデが降り立つと通りの人々がざわつくが、もう慣れっこになったな。美人は3日見たら慣れてしまうと云うが、そんなものかもしれない。
「いつも世話になる、伊織だ。サールト殿はおいでかな。」
「あ、伊織さん遅かったですね、もう出来てますよ。」
「いつもながら見事な出来栄えだな。この大きい方は変なサイズだが、職人はなにか言っていたか?」
「それ、それ、何回もサイズ確認されましたよ。どこの巨人に使うんだ?って。でも伊織さんの注文だから…って言ったら納得してくれました。『あの人ならそんなもんか…』って。」
「そうか。それは良かった。また変なサイズを頼むかもしれないが、うまく言ってくれ。紹介してもらったミエリキは仕事の飲み込みが良いようだ。さすがサールトの口利きだな。」
「そのミエリキがね、先日結構な金額を持ってきたんでビックリしましたよ。結構暮らしぶりも良くなったようで、伊織さん何させてるんですか?」
「そうか、持ってきたか。売る方もうまく行っているんだな。今日、仕事増やしておいたので、また来るだろう。持ってきた金は黙って受け取っておけばよい。」
「伊織さんがそう言うならそうしますけど…。あー、それから先日アーミル将軍のお召がありましてね、まあ、たまーにうちの店も使って貰っていたんですが、邸宅に呼ばれるなんて何事かと。ただ話が聞きたいだけだ他意はない…と言われても困っちゃって。ご本人が来られたので断るわけにもいかず…」
「それは、俺が将軍にサールトを推挙しておいたからだな。悪い人じゃないから、時々行って手解きしてやってくれ。領内統治の知恵なら商人に勝るものはないから、師と仰げと言ってある。」
「伊織さんが?ほんとに将軍相手にそんな事を?」
「ああ、すでに3回邸宅にお邪魔しているよ。3回目のときにコルストンと共にサールトを推挙しておいた。」
「そりゃコルストンさんは悪魔も裸足で逃げ出すヤリ手で有名だけど、なんで私を。」
「確かに、コルストンのような飛び抜けた才能は貴重だが、あそこまで行くと将軍に将来不安を与えかねないからな。切れすぎるスタッフは使う側にも負担が大きい。そこで仕事が手堅く確かなサールトも推挙した。おそらく、将来的には将軍はサールトに頼る事が多くなると思う。ま、そう悩むな。ちょっと気になったり思いついた事を進言してやれば良いだけだ。いつも思っているだろ?貴族ってなんて馬鹿なんだろう、〇〇すりゃいいのに…って。それを小出しにすればいい。」
「はー。伊織さんが暗躍していたんだ。しょうがないなあ、それじゃあ断れませんね。」
「まあ、悪い事ばかりじゃない。これから貴族王族相手の需要が増えるはずだから手堅い窓口にもなる。ああ、そうだ、コルストンに唯一神帝国向けに使うように渡している珊瑚と真珠の残りがまだ有る。これで小物作り置きしておくと良い。庶民向けの小物だ。」
「え?庶民向けですか?」
「そうだ、庶民向けだ。これからエフタール王国は庶民の生活が劇的に向上するぞ。余裕のできた庶民はプチ贅沢を始める。いち早くそれを掴め。」
「ふーん。ちょっと信じにくい話だけど伊織さんが云うとなあ…判りました。こんな良い素材、小物にするのは惜しい気もしますが庶民が買えそうな小物に加工しておきます。」
「まあ騙されたと思ってやってみてくれ。代金は成功報酬でいいから。」
…
…
アクセサリーを受け取りサールトの店を出て家路につく。実際将軍のようなタイプにはサールトのほうが良いだろう。コルストンはかなり踏み込んで来るだろうからな。
ジャラランバードの大通りを2台の荷車を連ねて通っていく。ちょっとした隊商の気分だ。
「旦那さま、サールトさんは珍しいタイプの商人ですね。」
「そうですね。目いっぱい稼げるだけ稼ごうという欲がない。腹八分目の珍しい商人です。」
「あの人は農園の匂いだったーー」
「なるほど、農園か…。ん?あの人集りは何だ?」
「ご主人様、露店のようです。なにか叫んでいますが、よく聞くと喧嘩ではないようです。」
近くまで寄ってみにいくと、そこには…
「あれ、おい、ミルセリクじゃないか。」
「あー、伊織の旦那、助けてくれ…」