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103 ドルイド教爆誕

2日掛かりで塩湖の別荘に到着する。塩湖の水位が少し上がっているような気がする。


「とにかく、ずはメガロドンの卵見ないとな…」


とくに変わったこともなく、無事、綺麗な色のままだ。魚でも淡水魚より海水魚はデリケートなのでホッと一安心だ。

事前にダナイデが連絡してくれていたようで、程なく親メガロドンもやって来る。なにも話せるわけではないが昔からの友人に会うような不思議な感覚だ。


「明日はケルート人に会うので、長弓を造ってしまおう。」


普通は2人がかりや3人がかりで張る弓だが、俺とダナイデが弓を支えているだけで、力のあるテイルが弓を張ってくれる。


「さすがテイルだな。よく一人で張れるものだ。」


「主さま~、こんなカチカチの弓、引っ張れるのーー?」


「ああ、それは大丈夫だ、こうやれば俺でも…」


頭上高く持ち上げて、肘を曲げないで弓を下ろしながら引いていくと少ない力でも引ける事を見せる。


「すごーい。そうやって引くんだーー」


「な、出来るだろ。あと矢もプレゼントしとこう。音の鳴る矢だ。かぶらと云う。」


「えー、音なんか出たら、獲物が逃げちゃうよーー?」


かぶらは味方への連絡用に使うんだ。先の形を工夫すればいろいろな音が出せて音の差でいろいろな事が連絡できるぞ。」


旦那イオリさま、強い弓はいままでにダナイデも色々見てきましたが、かぶらは初めて見ます。」


「元々は俺の居た世界の昔の武人がいくさを始める儀式に使っていたのです。お互い陣形を造っていくさの準備ができたらかぶらを撃ち合って、『ではいまから始めましょう。』ってな具合で(笑)。古き良き時代のいくさの作法ですよ。」


「まあ、旦那イオリさま、それ、いくさと呼べるのですか?」


いくさではあるのですが、当時の武人の一世一代の晴れ姿の見せ場でも有ったのです。なので、まずは双方の代表が一騎打ちします。この時は双方の兵が手だしせずに味方を応援するだけです。基本的に馬上で弓を射ます。それも双方が示し合わせて駆け寄ってすれ違いざまに射掛けます。それを数回くりかえして勝負がつかない場合に初めて『よき敵ござんなれ、いざ組みあおうず!』とか言って剣を抜いての接近戦に入るのです。」


旦那イオリさま、まるでセレモニーですわ。」


「ええ。それでもいくさのたびに数人は死者もでますから、いくさではあります。」


「主さまが変なのは、ご先祖さまの伝統だったんだーー」


…変って…変なのか?


「十分変ですわ。旦那イオリさま。」


…そうか、変なのか。まあ、褒められていると思っておこう。


「ま、そういう感じだったんだ。では俺は今夜はここで卵見ながら寝るから。」


「水辺で寝たら風邪ひくから、テイルが添い寝したげるねーー」



尻尾もふもふテイルのお陰で今朝も快調だ。親メガロドンが目の前まで来ていたのは驚いたが。

ダナイデの通訳で、帰りにはメガロドン・キャビアも用意してくれる事になった。


弓と矢を持って森を抜けケルート人の縄張りへ歩を進める。


「今日はグリフォンのマンディーが来てないので、目立たないな。一本射てみるか。」


かぶらを誰も居ない岩場に向けて放つ。甲高い音が出てケルート人が、わらわらと集まって来る。

群れの中から見覚えのある顔が出てくる。ケルテイクのガラディーだ。


「グリフォンに乗る者、伊織…よく来た。今日はグリフォンは居ないのだな。」


「ガラディー、久しぶりだ。グリフォンはちょっと用事があって今日は来ていない。」


「見てくれ、伊織。伊織の弓でコレが出来るようになった。」


言うやガラディーが2本の矢をつがえて同時に放って見せる。さほどバラけずに器用に同じ方向に飛ばす。


…ああ、こんなマニアックな技に進化したのか。まあ、中身は短弓と同じで射弾数向上だな。


「凄いなガラディー。そのような事ができるとは。」


「伊織、さっきの凄い音はなんだ?」


長弓の使い方とかぶらを説明する。射程が長くなる利点はまだピンときてないようだが、長弓で放つ矢が高威力な事は気に入ったようだ。そこで、曲射と集団で撃つ利点を説明する。


「なるほど。この威力ならどれか1本当たればいい。大きな獲物なら遠くからまとめて射ると味方も安全で良いな。」


その後、ガラディーが獲物を我々に振舞ってくれて食事会になる。

雑談しながら、神の話を織り交ぜてゆく。


「…つまりだ、全知全能の神などと云う奴が来たら、そいつは嘘つきだから気を付けろってことだ。」


「全知全能の神は居ないのか?」


「いるかどうかわからん。わからんが、もしも居たら、この世界は平和で穏やかでなんら困る事のない世界のはずだろ。なんら困ることが無いのだから神に頼る場面も無い。全知全能の神を認識する者も出てくるはずがない。だから嘘つきなのさ。」


「なるほど、だが全知全能ではない神は居るかもしれんぞ。」


「ああ、ココに居る ドリュアスのダナイデ は結構神に近いぞ。」


「やはりそうだったんだな。最初見たときからそうじゃないかと思っていたが…ん?いま、ドリュアスと言ったな!」


「…ああ、ドリュアスだが…」


「ドリュアスとはドルイドがなまっているのではないのか?」


たちまち周囲の雰囲気が変わる。程なく大方の者がダナイデに向かって平服してしまう。


「ドルイドだと?どういうことだ。」


「ドルイドは俺達ケルテイクがここに暮らすように導いてくだされた方だ。遠い遠いご先祖様からの言い伝えだ。」


「…うむ。そうだったのか。以前ダナイデはお前たちの祈りに応えて薬を分けてやったことが有るそうだぞ。」


「おお、あのときの神霊様であらせられるか。ありがたい。」


「うむ。お前たちにはドルイドのダナイデも控えている。嘘くさい与太話に騙されないようにな。もちろん、ダナイデも全知全能の神ではない。出来ぬことも多々ある。だが、どうしても困ったときにはまた祈りを捧げるがよかろう。森の恵みを分けてくれる事だろう。」


「おお、ありがたい。我らケルテイク、あだやドルイドを疎かにすることなどありませぬ…」


…よしよし、偶然も重なって上手くいったな。ダナイデは…穏やかにたたずんでいるがすがに気まずそうだな。でも嘘は言ってないですよ、神に近いって言っただけだし。せっかくの神々しい容姿なんだし、資源を有効活用しなきゃね。




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