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3 『マッチ・ザ・ニード』

 振り向くと、そこにいたのは、青いフード付きのマントを被った、小柄な女性だった。フードのせいで顔は見えない。


「失敬だな。カーキー。僕のどこがストーカーなのだ。ちょびっとだけ愛情が強いだけだろ。」


 僕はその怪しげな女性に声を掛けた。

 こいつは、僕の後輩で何でも屋(マッチ・ザ・ニード)の異名を持つ、傭兵的な立ち位置の奴だ。

 文字通り、回復、魔法、物理的な戦闘、情報収集、ある程度のレベルのことは何でもできる。オールラウンドの能力を持つ奴だ。


 こと、なんでもできることに関しては、英雄Kなんて呼ばれている僕なんかよりもできる。ポリーナが子どもの頃に、ベビーシッターを冗談で頼んだら、「いいっすよ。」なんて言って、そつなくベビーシッターをこなしてしまった。多分、料理・家事・邪神退治、ある程度のことならばなんでもやってくれるんじゃないかな?邪神退治のときも僕の次に多くの邪神を倒していたし。


「先輩、マジで言ってます?知っていますか?一方的な愛情をストーカーと言うんすよ。」


「なら、大丈夫だ。僕の娘は、僕を愛しているからな。」

 昨日も怒られたし、何なら、最近は、微笑みすら見せてくれないけど。でも、我がプリティーエンジェルは心の中では僕のことを大大大好きなはずだよね?


「それも、ストーカーが言うことっスね。ま、いいっす。別に先輩の娘さんが自殺しようが僕には関係ないっすからね。」


 カーキーは、お金だけが友達の淡泊な人間だ。

 だが、僕はそれが気に入っている。僕が英雄Kであることを知っていても、こんなに本音を言ってくれる奴はこいつしかいないからだ。まあ、僕はストーカーじゃないけど。


「で、首尾はどうだ?僕の言った三英傑の手配は済んでいるだろうな。」


「それはバッチリっす。とはいえ、初めてのミッションに現ギルド最高峰の戦力である三英傑を連れていくとはさすがに過保護過ぎませんか?」


「ふんっ。むしろ、あんな若造どもが僕の最高に可愛い娘と話すだけでおこがましいわ!ポリーナに話しかけるって言うんだったら、せめて、僕を倒せるくらいに強くなりやがれってんだ。」


「…うわー。盛大なパワハラっすね。神界含めて、最高峰の戦力を倒すのが条件って難易度高すぎっすよ。」


 そうは言うが、神界含めて最高峰の美女に話しかけるんだから、つり合いは取れているだろう。

 むしろ、戦闘にブランクがある僕との勝負でいいって言っているんだから、娘の可愛さを思えば楽すぎる条件だろう。


「素行調査の方は?」


「バッチリです。まずは、ブライアントっす。こいつは、浄化魔法と回復魔法の使い手で原初の魔法も三つ使える奴ですね。この人の悪い噂は聞かなかったっす。」


「ふむ、よかろう。」


「偉そうっすねぇ。ま、いいっす。次にですが、トーマス。こいつは、格闘系の能力を全てコンプリートした凄腕戦士ですが、素行が悪く女遊びも派手ですね。いつも、六股しています。友人たちには、『一週間で違う種類の女を抱くのがいいんだよ!えっ?だったら、なんで、一週間は七日なのに、付き合っている女性が七じゃなくて六かって?んなもん、一日女を抱かない日を作ることで、その我慢が女の味を上手くするからだよ。ほら、料理でも、空腹が最大の調味料っつーだろ?それと同じだよ、ガハハハッ!』って豪語しているっす。」


 死刑っ!死刑っ!死刑っ!


 僕の娘に悪影響を及ぼしそうな奴は全員死刑でいいと思う。とりあえず、娘の見守りが終わったらどっかに埋めてやろう。


「先輩、目が邪神のラスボスの時のそれっすよ。流石に殺しはやめたほうがいいっすよ。」


「ばれなきゃいいだろ!ばれなきゃ!!そんな奴は殺されて当然だ。」


「いや、殺すのは別にいいんすけど、結構、死体の処理って面倒くさいからやめたほうがいいっすよ。国外追放とかの方が後腐れなくて楽っすよ。」


 …こいつ死体処理も受け持ったことあんの⁉何でも屋すぎるやろ!


「まあ、それはいい。そいつはとにかくダメだ。ポリーナのパーティーにはふさわしくない!」


「先輩ならそういうと思ってトーマスには別の任務を発注して代わりにトーマツっていう似たタイプの人を探してきたっす。別任務の発注料金も後で振り込んでおいてくださいね。」

 さすカーキー。…にしても、似たタイプって名前が似ているだけじゃないだろうな。


「それで、最後は女剣士のアンドリューっす。まあ、女性なんで大丈夫っすよ。…たぶん。」

 あくびをしながら退屈そうにカーキーは言う。

 そして、そのまま、じゃあ、と言って僕の前からカーキーは忽然と消えるのだった。隠蔽スキルは僕よりもレベルが高いようだった。正直、どこに消えたのかさっぱりわからん。



『うわああああああああ!!!!ブラボー!!!!!!』


 その時、娘のいる方から盛大な歓声が上がった。


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