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1 『娘よ、英雄Kとは僕のことなのだよ』

 僕には娘がいる。

 それはもう、可愛い可愛い天使みたいな娘だ。何故か羽は生えていない。この世界の神様には文句を言いたい。


「おい、オーディンのくそ野郎。お前は、なんで俺の娘に天使の羽を生やさせないんだ?」

 言っちゃった。てへぺろ。昔、悪魔と邪神の連合軍を倒した時の知り合いの神様にお願いしてみたよ。


「もう、お前ほんと、やだ。普段はおとなしい寡黙な英雄のくせに娘のことになるとめんどくさすぎ。」

 失敬な。むしろ、あんな可愛い娘に天使の羽が生えていないことの方が間違っているんだ。そんなんだから、邪神を呼び起こすことになったのだ。反省してほしい。


「いいから、やれよ。」


「おいおい、お前、人族には無暗に手を出してはいけないって暗黙の了解がこっちの神界にはあるん…」


 ブン


 ブン


 僕は、聖剣エクスカリバーで素振りをしていた。別に他意はない。


「お前、聖剣が俺の髪の毛を切ってんぞ。」


「当たってないですよ。」


「いや、しかし。」


「ないです。」


 魔力を、剣を覆うように1㎜ほどコーティングしたからそれが当たっているのだろうか?でも、魔力だけをあてるなんていう芸当ができる奴はいないよね。だから、きっとオーディンちゃんの勘違いだろう。


「いや、物理的には当たっていないが、魔力が当たっているんだが。」


「ははは。」


 僕は、微笑む。

「そんな芸当は聖剣使いの私でもできるわけないじゃないですか~。」


 *

 オーディンは、なんだかんだで優しいから、僕のいうことを聞いてくれた。

「俺、神様やめて、転職しようかな?」

 とか言っていたけど、僕には関係ないだろう。神様も、神様関係とか複雑だからな。大変だな。


 家に帰ると、可愛い可愛い娘が待っていた。

 母さんに似た色白の肌。とんがったハーフエルフの耳。パッチリとした二重のおめめ。細い腕。きれいな流線美を描く鼻筋。そして、白色の真っ白な羽。やはりうちの娘に真っ白な羽は似合う。


「パパ、また何かやったでしょ?羽が生えてきたんだけど。凄く動きにくいからどうにかして!」

「パパがやったわけじゃないぞ。神様のオーディンが、お前の可愛さに見とれて、思わず羽を生やしちゃったんだよ、きっと。」


「パパ、またそんなこと言ってんの?神様なんてこの世界にいるわけないじゃん。それより、明日は、ギルドにメンバー登録しにいくんだから、早く、どうにかしてよね!こんな格好で行ったんじゃ変な目で見られちゃうじゃない。」


「でも、似合っているぞ。」

 もう、本物の天使と言っても過言ではない。


「パパ、家から追い出されるのと、羽を治すのどっちがいいの?」

 絶対零度の新緑の瞳が僕を見つめる。…そんなところまでママに似なくてもいいのに。

「…はい、オーディンに頼んできます。」


「もう、オーディンさん?も、無駄飯食らいのパパの言うことなんて放っておけばいいのに。」


「いや、俺は…」


「リードヴィちゃんのパパも、クラインのパパも、トルネリのパパも皆一流冒険者をやっていて格好いいんだから。それなのにパパときたら、いつも家にいて、偶に家をあけると、オーディンとかいう謎の友達にあってきて、ろくでもないことをして帰ってくるだけだし、嫌になっちゃう!私も、皆のパパみたいに恰好よくて強いパパが良かったなぁ。もっと言えば、伝説の英雄のKみたいな人がパパだったらなぁ。」


 Kって君の父親のことだよ!ダニエル・枢木の枢木の頭文字のKだよ!


 それに、父さんも、今だって、冒険に行きたいとは思っている。


でも-お前は知らないかもしれないが-僕は勇者として、有名すぎるから、冒険しようとしても、人が集まってきちゃって、冒険にならないんだよ!


 しかも、ギルドからは名誉プラチナ階級SSSランク冒険者に認定されていて、SSSランクの任務以外は受けられないことになっている。


 お偉方が自分たちの利益を確保したいがために、俺を体よくあしらったのが、この形なんだ。そりゃ、有名で実力もある僕みたいな冒険者は、有事の際以外は目の上のたんこぶになっちまう!ぶっちゃけ、お偉方の言うことよりも、僕の言うことを皆、聞いてしまうからな。


 実際、SSSランクの任務って邪神とか出てこない限り、発生しない任務だ。

 『お前、邪魔だけど、有事の際だけは手を貸しやがれ』、っていうのがこのランク、名誉プラチナ階級SSSランク冒険者の実態だ。


 流石に人類を救った英雄に対して、あんまりな仕打ちだ、と思ってくれた人もいたみたいで、何もしなくても、お金だけはたんまり、毎月もらっている。


 通常の冒険者の上位1%のみが名乗ることを許される、S級冒険者の平均給料と同じだけの給料、百万エンジを毎月もらっている。しかも、ギルドがとる手数料や国に納める税金は納めなくていいことになっている。


 というわけで、金だけあって、暇すぎるのだ。名誉プラチナ階級…ええい、長ったらしい⁉SSS冒険者でいいや。そのSSS冒険者としてギルドから認定されたのがちょうど、結婚して娘が生まれた時だったから、娘は僕が英雄として動いていた時期を知らない。


『娘よ、悪いのは、俺ではない世界なのだ!世界こそが悪で、僕こそが正義なのだ!』

と思ったが声には出せない。


「何か言いたいんだったら言えば。」

 娘がその艶やかな唇から低い声を出す。


「ふっふふ。娘よ、実はその英雄Kが俺の正体なんだよ。」


「何、言っているの?頭だいじょうぶ?そんな戯言言っているんだったら、とっとと私の羽を治しなさいよ。」


 何故か信じてもらえない。本当なのに。


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