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股間を狙うのはやめて、ほんとに

 人類は絶滅の危機に瀕している。


 驚異的な再生能力を持つ『ゲノヴァ』という生物によって。


 どんなに傷つけても死なない怪物。その姿形は様々で、ネズミのように小さな個体もいれば、先ほど出会ったような巨大な個体もいる。

 謎多き生物だが、ゲノヴァは人類が誕生する前から存在していたという説があり、人類の歴史は、その脅威からどのように逃げてきたかが主に記されている。

 その圧倒的な存在に敵わない人類は、巨大な壁を作る、地下に潜るなどして生き残ってきた。


 しかし、全ての人間が、巨壁や地下空間の中で生活できるわけではない。

 人手も資源も足りない村では、ゲノヴァに対してロクな対策もとれずに人々が生活している。


 故郷に帰るために旅をするヨゾラが辿り着いた村もまた、そのうちの一つだった。

 時刻は深夜。

 村の店は全て閉まっており、どこかで食事をすることもできない。


「ったく、いつまでもじもじしているのよ。男のくせに情けない」


 ヨゾラにそう言ってきたのは、旅仲間である少女。

 少女の名はアマネ。ヨゾラよりも年下ではあるが、彼女は何年も商人として旅をしており、その経験を活かしてヨゾラの故郷への旅に協力してくれている。

 減った腹を満たすことができずにいらついたのか、アマネの元々悪かった機嫌はさらに悪くなったようで、その怒りの矛先をヨゾラに向けてきた。

 文句を言われたヨゾラは、先ほどの少女の一撃による股間の痛みで未だに悶えている。


「なぁ、アマネ……片方つぶれた気がするけど、気のせいだよな? 気のせいじゃないと困るんだけど……」

「もう片方も潰してあげようか?」

「勘弁して下さい……」


 アマネなら本気でやりかねない。

 アマネと共に旅をして彼女の性格をようやく理解してきたヨゾラは、なるべく距離を取る。特に今のアマネは機嫌が悪い。これ以上悪くならないように話題を変えてみる。


「と、とにかく宿を探そうぜ。せっかく村に着いたのに、また野宿なんてしたくないし」

「……それもそうね。はぁ、久しぶりにふかふかのベッドで寝たいわ」

「うんうん、そうだよな…………はぁ……」


 年下の少女に気を遣う自分を情けなく思ったヨゾラはため息をつき、空を見上げた。

 闇夜の中で、白い川を形成する星の群れが輝いている。


「知らない空か……」


 自分に言い聞かせるように呟いたヨゾラは、自分の左腕を見た。

 そこには、橙色に輝く腕輪が一つ。


「早く荷物を運びなさい」

「へいへい……」


 悲しげにそれを見つめたヨゾラは、自分を置いて先に行ってしまったアマネの背中を追いかけるのだった。




 やっとの思いで見つけた宿。

 受付はボロボロ。しかし、その横に飾られている絵画は手入れをされているのか、とても状態が良い。


 そんな宿で今夜は過ごすことになったのだが、問題が一つ発生した。


「一部屋しか空いてないですって!?」

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