予選
『さぁ始まりました! 毎年恒例のカップル参加大会~!!』
司会者の女性がマイクを片手に、勢いよく宣言する。
大会の場所は、町のど真ん中にある広場。
祭りの中でも一番の行事なのだろう、町中の人間がいると言えるほどの人数がこの大会を観戦している。
「はぁ…………どうしてこうなったかなぁ」
今の自分の置かれている状況を冷静に考えて、ヨゾラはそう呟かずにはいられなかった。
『今年はなんと、十五組のカップルが参加してくれました! この中から予選を勝ち上がり、決勝に進めるのは三組だけ!』
ヨゾラ達以外にも、多くのカップルが参加している。しかし、どのカップルもこの町の人に見え、ヨゾラ達のように旅人で参加しているカップルはいないようだった。
「これ……俺ら、どんな感じで周りに見られているんだろうな……」
「絶対に優勝するわよ、ダーリン!」
「……」
大会への意気込みが凄いアマネは、まともに話を聞いてくれない。それどころか、また彼女役を演じ始めた。
いや、演じられているのかも怪しい。ただダーリンと言っておけば、彼女のふりができるとでも思っているのだろうか。
『さぁ、カップルの皆さん、係員の誘導に従い、所定の位置についてください!』
司会者のその言葉を皮切りに、係員が各カップルに一人ずつ付き、誘導を始める。ヨゾラ達にも係員が一人近づいて誘導してきた。
どうやら大会に参加しているカップルを、あらかじめ決めていた位置まで誘導し、等間隔で並べているようだ。
「二人とも向かい合うように立ってください」
「「?」」
係員の指示に従い、ヨゾラはアマネと向かい合う。誘導してくれた係員はその近くで座り込んだ。
『えー、皆さんの準備ができたようなので、さっそく予選を始めます』
一体、これから何をやらされるのか。大会のチラシは事前に呼んだが、予選と決勝戦を行うというだけで、その内容については一切書かれていなかった。
「今年は何をやらされるんだろうねぇ」
「何かなぁ」
隣のカップルも予選の内容を知らないようだ。町の人間も知らないとなると、毎年違うことをやらされているということか。
会場全体が静かになり、司会者の女性の言葉に注目が集まる中、彼女が予選の詳細を告げる。
『予選の内容は単純! 互いの悪い所を言い合ってください! 係員がその数をカウントし、上位五組になったカップルが決勝に進めます! 制限時間は一分!』
「「え?」」
予想外の内容で、隣のカップルが驚きの声を上げ、他の参加者も戸惑いの表情を露わにする。
『それではスタート!!』
「この根暗ぁ!」
「うるせぇ、我儘女っ!」
そんな中、ヨゾラとアマネが一番に声を上げた。
『おっとぉぉ! ヨゾラアマネのカップルは互いへの悪口が止まらない!! 他のカップルがためらう中、あの二人は容赦なく悪口を吐き続けているぞぉ!』
「根性なし!」
「自信過剰!」
『おおっ、まだまだ悪口は出てくるようだ…………ねぇ、あの二人、本当に付き合ってんの??』
いえ断じて付き合ってないです。ヨゾラは司会者にそう言ってやりたかったが、グッとこらえてアマネの悪い所を時間が許す限り言い続ける。
普段からアマネに苦渋を飲まされているヨゾラにとって、これは絶好の機会だ。普段の鬱憤を晴らすことができるし、アマネに自分の悪いところと向き合ってもらうことができる。
大義名分が得られた以上、何を言っても許されるのだから遠慮などしない。それはアマネも同じようだった。
『そこまでぇ~! 予選終了です! 集計するまでもなく、一位はぶっちぎりで、ヨゾラアマネのカップルだぁ!!』
「デリカシーの欠片もない男!!」
「金のことしか頭にない女!!」
『いや、ちょ、終わったって! 係の人、止めてあげてっ! どんだけ互いに不満を抱えて過ごしてきたのよ!?』
係の人に慌てて止められ、ヨゾラとアマネは文句を言うのをやめる。お互いに息を切らすほど言い合ったが、それでも足りないぐらいだ。
アマネとにらみ合いながらも、ヨゾラは決勝戦へ挑む。決勝戦では、一体何をやらされるのだろう。




