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いずれルビーかサファイアか  作者: いつき
第五章 陽炎 面影 君の声
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三十話

 ルヴィナが使ったのは禁術であったことはわかった。

 その上でいくつかの疑問がルヴィナの頭に浮かぶ。


「私が使ったのは禁術だったんだよね? じゃあなんで、私は……壊れてないの?」

「壊れてない訳じゃないよ……。今のお姉さんはとても不安定な状態なんだ。ただ壊れきらなかったはお兄さんの剣を使ってお姉さんの禁術を強引に解除したからに他ならない。だからもし、次、同じように使ったら本当に元には戻れなくなるろうね。」

「そう……か。解除できるなら戦闘で使えるかもしれないって少し期待したんだけどそういうわけにもいかないんだね。」

「そりゃそうだよ。だから禁じられてるんだもん。」


「みんなごめんね。何かしなきゃって思ってもっと迷惑な事態になっちゃった。」

「いや、謝るなら俺がそもそも暴走させなければこんなことには……。すまなかった。」

「どっちもどっちだよ!アルスもルヴィナも悪いけど、結果皆無事だしそれはもういいじゃん。大事なのは次、でしょ?」

「カオル……ありがとう。」


「……ルヴィナ。怒りや……恨みっていうのはあんなに苦しい感情なんだな……。ルヴィナは……でも、俺を……。」

「……あんたは少し疲れてるのよ。もう少し休んでなさい。」

「……そうだな。」


「かなた……ありがとう。俺が暴走した時なんの義理もないのに助けてくれて。ルヴィナを止めてくれて。」

「……起こったことは変わらないよ。今捕まってることも、お姉さんが半壊なのも、お兄さんが重傷なのもね。」

「すまないついでに、かなた……いくつか質問させてもらうが、俺の持っていたあの剣はなんなんだ。没収されてしまったが……あれで禁術を止めたんだろう?」

「そうだね……その説明はしないといけないか……長くなるよ?」

「俺は構わないが……。」


 チラリとルヴィナと薫風の方をアルスが見る。かなたに色々聞きたいことがあるのはルヴィナも同じだったがそれでも優先度は高くないと判断した。


「ボク達は構わないよ!どうせこの牢屋の中じゃ大して何か出来る訳でもないし。」

「そうか。」


「それじゃあどこから説明しようかな……。」


~四本の剣~


今から結構昔の話。一人の心優しい人間の鍛冶屋がいた。その鍛冶屋は人間界で剣を作るのに飽きて、新しい鉱石を求めて魔界へと降り立った。

そこで彼はとても素晴らしい出来の剣を二つ作った。

一つは『始まりの太刀、朔』もう一つは『終わりの太刀、晦』。この一対の太刀は後に恐れられ『対太刀・二禍(ふつか)』と呼ばれるようになった。

ある日彼が魔石を求めて魔界をふらふらしていると、一匹の悪魔が虐められている様を目撃した。


何があったのかは知らないが、悪魔といえど虐めは虐め。見ていて気分が良くなかった鍛冶屋は『二禍』を持って、虐めていた悪魔達を成敗し、その悪魔を救い出した。


その虐められていた悪魔によると、その悪魔の出自が呪われたものであり、いつか大きな災厄となると予言されているらしかった。

そんなことがあってなるものかと心優しい鍛冶屋はその悪魔と一緒に魔界で暮らすことにした。



別のある日、一匹の寂しそうにしている悪魔を鍛冶屋は目にした。その悪魔は強すぎる為誰にも理解されず、孤独になってしまったそうである。

すっかり不信に陥った悪魔と数日かけて話し合い打ち解けた鍛冶屋は自宅へとその悪魔を誘った。

そうして鍛冶屋の家には二匹の悪魔が住むことになった。


その二匹はすぐに仲良くなった。二匹とも決して望んで孤独になっていたわけではないのだ。仲の良い二匹の悪魔と家族同然に暮らしていた鍛冶屋は二人に自分の作った『二禍』を一本ずつ渡した。

その剣の力もあって二匹はどんどん強くなっていった。

二匹の力は本当に五分と五分であった。


しかし、しばらくして鍛冶屋はその危険性を考えた。

二匹は邪悪な悪魔ではない。片方が暴れそうになってももう片方が止めてくれはするだろう。

だが少し嫌な予感がしてならない。止めることが出来なかった場合お互いが持っている剣を一匹が使うことになるだろう。

人間ですら悪魔に太刀打ち出来るほどの名剣。

仮に二本揃うようなことがあれば、その悪魔は手をつけられなくなるだろう。

そこで鍛冶屋は新たに二本の剣を作った。

最高傑作である『二禍』に勝るとも劣らない、互角の名剣。

そしてその二本は『二禍』を含めたいずれとも同時に使用できない制約をつけた。


そのうちの一つが始まったものに終わりを与える『零の剣』と

そしてもう一つが終わったものに始まりを与える『壱の剣』

である。

この二振りは全ての魔技を無力化する『零の剣』と、魔力を無限に供給する『壱の剣』とが反発するため対という扱いはされなかった。

一人が二本持てば持ち主の体を大量の魔力が無限に流れ続け、魔力の流れを支えきれない持ち主は爆発四散する。


そうして世の中に四本の剣が生まれた。

鍛冶屋は新しい二本を魔界で新たに知り合った一組の天使と悪魔の(つが)いに捧げた。

天使と悪魔の恋愛は禁じられている。その悲恋が定め付けられようとも貫く姿勢に感銘を受けたのだ。


ここから先は別のお話。


~四本の剣 おわり~




「こんな感じだよ。お兄さんが持ってるのは『零の剣』。ぼくが持ってるのは『壱の剣』。だからぼくは属性が異なる魔技をいくつか使えるし、お兄さんの剣を使えない。」

「なるほど。俺の剣は魔技を無力化できるのか……。」

「お兄さんの剣は正しく使えばどんな盾よりも強い剣になる。でもその剣では魔技は打てないからお兄さんの戦い方だと二刀流が必要になるけど。」

「二刀流……か。」


 アルスはマグナも二刀流であったことを思い出していた。二刀流は剣と盾を持つのとそこまで大きく変わらない。

 防御用の短めの剣と、攻撃用の剣の二刀流が主流である。

ただ本来はその防御用の剣でも攻撃できることが盾と異なるところであるが『零の剣』を使う二刀流はそうもいかない。

 アルスとしては使い勝手が悪そうに感じた。


「ルヴィナがあの剣を使うか?」

「うーん……。弓を使うと両手が塞がるから私はいいかな。」

「そうだよな。」

「活用できれば間違いなく便利なんだから、あんたには慣れてもらわないと。……それはそれとして、なんでその零の剣(?)が私達の世界にあったの?かなたがもう一つを持ってるっていうのも変だとは思うけど。」


「……。……さぁ? なんでだろうね。」

「……。」


 かなたが返答するまでに妙な間があった。

 恐らく知ってはいるが教える気がないといったところだろう。

 ルヴィナはそれならそれで構いはしないが、言えない理由があるならその理由も気になってくる。


「ぼくがもってる理由は簡単だよ。ぼくは(くだん)の鍛冶屋の子孫だからね。家に飾られてたのを拝借してきたのさ。」

「なんでかなたの家に飾られてるの?その剣は天使と悪魔に渡されたんじゃないの?」

「その二匹はもう死んでしまっているからね。返還されたのさ。」

「一本だけ?」

「そりゃそうだよ。二匹の死んだタイミングが同じって訳じゃないんだから返ってくるとしても一本ずつ。『零の剣』は返ってくる前に異世界にいってしまったんだね。」

「残りの二本はどうなったの?」

「そっちは危険視されたからどこかに封印されたらしいよ。誰も所在は知らない。いや、封印した本人は知ってるだろうけどさ。少なくともぼくは知らないね。」

「そっか。」


「剣に関してはこんなとこだよ。お兄さんが『零の剣』に慣れたらもっと強くなるんじゃないかな。」

「だがそれもこの牢屋から出れたらの話だろう。あれだけ暴れたんだ……俺は多分処刑されるだろう。」

「う~ん。それはそうかもしれないね。そうしたらお姉さんが『零の剣』の後継者として頑張るしかないね。」


「ねぇ。かなたはどうして、レヴィアの世界で私達と戦ったの?」

「あの世界でレヴィアタンが暴走したら誰も止められないからだよ。あの世界は果てる運命にあった。それを止めてたのにわざわざレヴィアタンを起こすようなことされたんじゃたまったものじゃないよ。結局起こされたけどさ。」

「それなら私達を殺せばよかった話でしょ?かなたならそれができた。」

「ぼくにも都合があるんだけど……。まぁいいか。それも説明しておくよ。」


「ぼくがお姉さん達を殺せば、他のやつにぼくが殺されるんだ。」

「他のやつ?」

「そう。だからぼくは殺せはしないんだよ。」

「他のやつって誰のこと?」

「それを言っても殺されてしまうから言えないね。」


 どうやらかなたは、そこまで自由な身ではないらしい。


「カナタンはボクの世界のことも知ってるの?」

「カナタン……。トリ君の世界はあんまり知らないけど、まぁトリ君と風神のことなら大体知ってるよ。」

「えっ……あぁ……うん。そっか。」


「何の話だ?」

「あはは!なんでもないよ!アルスは気にしないで!」

「……そうか。わかった。」


 薫風は薫風で何か隠している。

 ルヴィナとアルスの関係を薫風に隠している都合上隠し事に関してはお互い何も関与するつもりはないが、それはそれとして気にはなる。

 ルヴィナとアルスの関係性は教えることは不仲を生みかねないため明確にやらない理由が存在するが薫風のそれはどうなのかは不明である。


 一瞬の静寂を破ったのは、牢の扉の向こうからの話し声だった。


「そろそろ完成するらしいな。」

「あぁ。完成すれば本格的にこの世界は俺達人間のものになる。町人共が重税で文句をいう生活ももうすぐ終わるだろう。」

「……。だが本当に大丈夫なのだろうか。あの兵器は俺達が制御できる代物なのか?鬼や龍の力を使ってるんだろう?」

「使うのは俺達ではないからな。偉そうにふんぞりかえってる学者やらなんやらが責任を持って動かしてくれるさ。」

「責任……か。学者達も国に頼まれて無理難題を強引に解決しようとしてるのに、いざ完成となるとその責任は丸投げされてしまうんだな。」

「同情か? らしくないな。国は研究費、開発費に金をふんだんに使ってるんだ。責任を負うのは必然さ。」

「……そういうものなのか。金を払った相応の結果を出してほしいのはわかる。それは町人や俺も同じ気持ちだ。だが……十分な時間もなく金を積んだからと無理強いされるのは……。」

「責任とは言ったがな。結局この兵器が失敗したら人間は恐らく終わりだろう。だから確実に一回で相手を殲滅せにゃならんのさ。学者達が負いきれない責任は前線で戦う騎士と侵攻されるルート上の町人が負うんだ。」

「その戦いに何の意味がある!?どんな大義があって戦争なんかする!?結局泣きをみるのは上層部ではないではないか!」

「お前はまだ若い。現実がなにも見えてない。いいか。どのみち俺達人間は鬼や龍を倒さないことには未来はないんだ。その為にわざわざあいつらが争いあうように仕向けたんだ。もう戻れないんだよ。」


 その話を聞いていた薫風が、話をしている二人に聞こえないように小声で話す。


「ねぇねぇ、兵器ってなにかな?」

「兵器。戦闘に用いる器材の総称。……要は武器だな。」

「そんな話してないよ!どんな兵器なのかなって話!」

「鬼や龍の力を使ったものって言ってたな。」

「ね!すごいね! ボク見てみたいな!」

「見てみたい……か。やめといた方がいいぞ。」

「なんで? きっとカッコいいよ?」

「カッコいいかどうかは問題じゃない。殺戮の兵器なんて……。」

「アルス?」

「……。」


「お兄さん。それとお姉さんも。」

「何だ?」

「お兄さん達はさっきの話を聞いて人間達が正しいと思う?」

「生きるために、鬼や龍を滅ぼさないといけない。って話か?俺は理には叶ってるとは思う。」

「お姉さんは?」


「私は……正しいとは思えない。グレンくんとも対話できたように、人と鬼や龍だって、種族は違っても言葉が通じるならわかりあう道もあると思うから。」

「わかりあうって言ったって、もう試した上で無理だったんだとしても?」

「対話を試みて無理なことだってあるのはわかる。人間同士でも絶対に相容れないなって思うこともあるぐらいだから、種族が違えば価値観も倫理観も違うんだろうなって思う。

でもそれぞれがそこにいたらダメな理由にはならない……よ。少なくとも私はそう思う。」


「鬼や龍は人間の何十倍も強い力を持っている。非力な人間なんて一捻りだ。それがいつ牙を剥くかわからない。人間達はそんな恐怖に怯えながら日々の生活を送ることを強いられる。

それがお姉さんの望む平穏な世界なの?」



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