剣戟突貫娘
12月はいろいろ忙しく投稿がまちまちになると思います。
今後投稿するにもある程度気息性はあったほうがいいかなと感じ、週2~3投稿な具合ではやろうかと。
『BATTLE START』
柵をくぐると先ほどのスパッツ少女がコロシアムの中央に立っている。
「自己紹介がまだだったわねー!私の名前はアカリ。見たまんま刀で叩っ切るから変身しちゃってねヒーロー君」
「俺もヒーロー君じゃなくてエイジだ。さっき一緒に居たのがヨイチ」
「よろしくッスー」
声のする方を見たら呑気に観客席で見てやがる。
「そんなことより早く変身!ハリーハリー!」
「待ってくれるんだな」
「だって目の前で見てみたいじゃん変身とか!」
このアカリという子は男のロマンを分かっている。
では、ご期待に答えるとしよう。
俺はカセットを取り出し、セットする。
いつもの変身音が鳴り、目の前の①の表示がされたスクリーンに飛び込む。
『スクリーンオーバー!』
変身が完了すると
「やっぱり変身っていうのはかっこいいわね!」
アカリが目の前で刀を振り上げている。
「やっ......べえなオイ!」
とっさに右腕で刃を弾くとガキィン!という音がコロシアム内に響く。
だが次の刃がまた身体に迫る。
防いだと思ったら次が、それを防いでも次がと連続した攻撃が俺を襲う。
一度距離を取るために隙をついて相手の刀に拳を叩きつけると、アカリ自身はダメージが無いものの衝撃自体は伝わったようだ。
その隙に相手から少し距離を取ることが出来た。
「なかなか重いパンチ!でも届くかしら...ね!」
今までは線の攻撃だったが今度は点の攻撃...つまり突きである。
視界を遮るような点が急遽襲ってくる光景は恐怖以外のなにものでもない。
寸でのところで首を傾けることで直撃を避けられたが、かすってしまったせいでHPバーが少し減る。
体勢を崩した俺に対し、アカリは身体を回転させてその勢いを利用した蹴りをいれてくる。
今度はモロに喰らってしまい地面を転がると同時にHPバーも半分近くになってしまう。
「刀持ってるのに蹴りまで入れてくるのか!このじゃじゃ馬スパッツ娘!」
「足癖悪くてごめんねー!でもなかなか斬らせてくれないからついつい」
刀の柄を肩にポンポンと叩きながら言う。
さて、刀と拳のリーチ差、確実な対戦経験の差が目に見えてある。
相手が格上なのは前提として、ただやられるっていうのも癪に障る。
「降参ッスかー!」
ヤジまで飛んでくる始末。
「うるっせー!ポップコーンとコーラ持ってゆっくり見てろ!」
先ほどアテナから貰ったカートリッジを取り出す。
「一発本番だ!」
「なになに!?なにするの!?」
アカリはめっちゃ目を輝かせて待っていてくれている。
舐められてるなあと感じながらもシリンダーを開き、カートリッジを挿すとシリンダーを閉める。
ガション!という音がすると『スピードエフェクト!』とまた聞いたことない音声がする。
すると視界のあまり邪魔にならない場所にポップアップが表示される。
内容は数字のカウントダウンのようだ。
「「ねえねえなにが起こるのー(ッスー)?」」
既に仲良しかあんにゃろうども。
そんな事を考えている間にも刻一刻と時間が減っている。
アテナは加速って説明してたな。
俺は構えすら解いているアカリに向かって一歩駆けだした。
「ちょちょぉーっ!」
「うお!」
自分でも驚くくらいのスピードでアカリの目の前に辿り着く。
アカリが驚いている隙に右拳でパンチを喰らわせ、回し蹴りでアカリを吹き飛ばす。
先ほどやられたことの意趣返しだ。
「いっっったいわねえ!女の子殴るとかヒーローか!」
「そうだそうだー!」
「ゲームに女も男もあるかーい!」
ヨイチはどっちの味方だ。ヤジ聞こえてっからなあの野郎。
気付くとカウントの0が近い。
「速さで勝てるならぁ!」
アカリの背後に移動する。
「こんのぉっ!」
アカリは刀で背後を一閃する。
加速状態でなければとてもじゃないが避けられる自信が無いが、今は加速状態。
しゃがんで避けながら右拳を構える。
「リーチの差なんてぇ!」
そしてアカリに向かって渾身の一撃をお見舞いする為に、カートリッジをシリンダーに入れる。
『クライマックス!英雄の一撃』
右腕が光る。
そしてアカリに向けて右腕を突き出し英雄の一撃を撃ち放つ。
「とどめだぁああああああああああ!!!!!」
「アクトスキル!」
刀に当たった拳は狙いがずれ、光の濁流がアカリの真横を地面を穿ち衝撃波が周りを襲う。
その衝撃で俺もアカリも地面を転げまわる。
アカリのHPバーも半分近く減ってはいるが、俺のHPはほぼほぼ無い。
アカリが起き上がると言った。
「アクトスキルが無ければ危なかったわ」
「英雄の一撃がずらされたが、種明かしはしてくれるのか?」
「そんなもん答える馬鹿がいる?だからヒントをあげる。ヒントはバウンス」
「答えじゃねえか」
「正解正解!まあ、細かく言うとカウンターバウンスって名前で、ダメージや攻撃の反射が効果よ。威力高すぎて跳ね返せなかったこっちが驚きよ」
なるほど、いろんな能力がありそうだなアクトスキルってのは......。
「そっちの本気も見ちゃったし、私の本気も見せてあげる!四季神!」
その瞬間、アカリの刀から炎が現れる。
炎はメラメラと刀を中心に燃え上がり、威圧感を覚える。
「じゃあ、覚悟はい...やぁっべ」
なんか急に顔色が悪くなっているが、どうしたんだ?トイレか?
そして炎が消えるとアカリは俺に言う。
「ごめん、急用を思い出したから降参降参」
「はいぃ?」
本当に降参しているようだった。
「ほんっとごめん!じゃ!」
ウィンドウメニューを操作している様子だったが急に指が止まるとこちらにドドドドドと走ってくる。
そして手を掴まれて無理矢理握手をさせられる。
「はい!これでフレンド!また今度!」
そういうとアカリは目の前で転送され、ログアウトしていったようだ。
「よっと」
ヨイチが観客席から降りてきた。
しかもポップコーンとコーラを持って。
「ほんとにあんのかよ!」
「味覚共有でちゃんと美味かったりするッス」
ポップコーンを突き出されたので食べてみる。
「ちゃんとポップコーンだすげえ!」
「とはいえ飲食アイテムの種類は少ないッスけどね。それにしても忙しい子だったッスね」
「なんだったんだろうな...俺も疲れた。今日はもう帰ろう」
「ッス」
二人して今日は疲れたのでログアウトすることにした。
コロシアム内に誰も居なくなった観客席で初老の男と、フードを被った男が居る。
「ほっほっほ、逃げられちまったの。お前さん嫌われとるのか?」
「さあな」
フードの男はそのまま踵を返し、転送が開始する。
「それにしてもキレーな一撃だったの。ほっほっほ」
「そうだな」
そう言うとフードの男は観客席から姿を消した。
人が増えると話が進む。
VRで飲食できたら結構未来な気がする(ただし廃人ゲーマーは餓死する)