ファーストログアウト
今回短めです。
アクトスキルや、ゲームの育成方法の説明回というイメージ。
扉を抜けるとRPGによくあるセーブ地点のような物があった。
近くの看板を読むとポータルという名前で、ここからログアウトが可能でナビゲーションセンターに改めて行けとある。
俺はポータルの上に乗るとナビゲーションのポップアップが表示される。
ログアウトを選択し、この世界に来た時のように光に包まれ、自然と目を閉じた。
『ログアウトが完了しました』
目を開けると眼前にヨイチの顔があった。
なんて目覚めの悪さだ。
「おい、目覚めのキスで起きる程、夢見る乙女じゃねえぞ。それともする前かコノヤロウ」
「んな気持ち悪いこと金積まれてもやらないッスよ!てか男だろテメエ!ねじり切って乙女にしてやろうか」
アクタークレイドルから起き上がるとヨイチは言う。
「俺は気がついたらログアウトしてて、チュートリアルは大丈夫だったッスか?あの女の子も!」
(運営っぽいっていうと話がめんどくさくなりそうだし、とりあえずは黙っておくか)
「女の子の方はフレンド登録も出来ないまま分かれちまったよ。アクトスキルだっけか?それでなんとか勝ったよ。だけどアクトスキルってのがいまいち理解してないから解説頼めないか?」
「そんな状態でよく勝てたッスねえ...。アクトスキルはゲーム本来のスキルとは別のスキルで、内容も個人個人のオリジナル。チュートリアル中の行動や、思考に合わせたアクトスキルが発現する仕組みッス」
「そりゃ、とっておきって言ってるわけだ。自分だけの必殺技って感じなんだな」
今更ながら凄いシステムだ。
俺の知らない間に時代は進歩しているらしい。
「ちなみにアクトスキルは勝手に使えるようになるのか?」
「そうッスね!俺はボス戦でポップアップが出て使えるようになったんスけど、エイジは違うんスか?」
「いや、俺もそんな感じ」
ってことは受け取るって状態は結構イレギュラーなのでは?
なおさら黙っておく方針を決めた。
「ちなみにレベルアップした時にもらえるポイントをステータス、スキルに振る事で強化が出来て、アクトスキルも例外じゃないッスよ。ちなみに俺のスキルは放った遠距離攻撃が全て相手に命中するように動くって内容ッス。名前はセカンドロックオンって地味なんスよね。エイジはどんなスキルなんスか?」
「俺のスキルはシネマチェンジャーって道具が出てきて、それを使うと変身してステータスが上がったりする」
「拗らせてるッスねー」
「うるっせえ!泣くぞ!」
冷静に考えるとゲームの中で変身するってなんだそりゃ。
ロールの中でロールしてるようなもんだ。
「とりあえずはポイントで欲しい攻撃スキルを何個か取って、ステータス上げるのがいいんじゃないッスかね。アクトスキルは強力な分、ポイント使うから」
「んじゃあ、とりあえずは強化していくか。どこでできるんだ?」
「そこのターミナルッスよ~」
それっぽい端末があり、IDパスを読み込ませる部分があったのでパスをかざした。
多少の読み込み時間の後、メニュー画面のような物が出てくる。
その中にステータス関連の項目があったので選んでいき、スキル取得の項目まで進むと......何もない。
「このスキルって後からでてくるの?」
「いや、取得できるものは可能性って形で全部出てくるはずッス」
「なんもねえんだけど......」
「HAHAHA、冗談はよしてくれよエイジ。そんなことが......あるやん!?」
「欧米なのか関西なのかどっちかにしろ」
「いや、なにこれ!バグ?ちょっと端末借りるッスよ!」
言われるがままヨイチに貸してステータスやらを弄ってるとこちらを振り向く。
「もしかして、この装備のせいかもしれないッスねえ」
しばらくした後にヨイチが指さす先には『装備:シネマチェンジャー』と、ある。
「本来スキルは自分の装備のジャンルとかに合わせてこの画面に出てくるッス。装備っていうのはアクトスキルとは別で、装備する事でステータスに反映されるんスけど、アクトスキルで出る装備自体が固定装備になってるせいかなのか、外せるか試しても駄目だったッス。アクトスキル自体は別枠としての強化ポイントが振れるから、そっちの強化がイコールでスキルとしての強化になっちゃってるんじゃないッスかね?」
「つまり?」
「通常スキル使えないからアクトスキル育てろ」
「語尾消えるくらい簡潔な説明ありがとう」
「でも、俺もこのゲームは始めたばっかで分からないことも多いッス。だからナビさんにでも聞きに行くッスよ」
端末をログアウトし、ナビさんの元に向かった俺たちは事の経緯を説明した。
もちろんアテナとかのくだりはヨイチにも話してないし、無しの方向でだ。
すると帰ってきた返答は......
「そんな感じでございます♪」
「「雑だなおい」」
「真面目に説明すると」
「「あ、する気はあったのね(んスね)」」
「特殊な装備にはそれに合わせたスキルになることがあります。珍しい武器やレアリティの高い武器を装備した際に起きる現象ですね。ただ、今回のようにスキルが何も出ないケースは初ですが、スキルとしての強化と、アクトスキルとしての強化が重複してしまうためこのような状態になったとご説明させていただきます」
「「要するに?」」
「仕様でございます♪」
「ほんと便利ッスよねその言葉......」
ニコニコと笑顔のまま手を振るナビさんに見送られながらヨイチと話をする。
「でもアクトスキルの強化ポイントを見たら、普通の人より大分ポイント食うみたいで強化には時間がかかりそうだったッスね。当面はステータスを上げて、余裕があればアクトスキルを強化すれば強くなれるんじゃないッスかね」
「普通より楽しみの幅は減っちまったかこれは……」
「とはいえ、落ち込むのはまだ早いッスよ。フィールド探索やイベント攻略とかも楽しいし、さっきのバトルロイヤルモード...いわゆる対人戦も能力だけで決まるんじゃなくて、プレイヤーの腕によるところッスから。考えようによってはヒーローに変身して戦うって凄い能力ッスよ」
「そういわれると、変身して戦った時もワクワクした」
「とりあえず今日はもう遅いし俺は家に帰るッスよ。エイジは?」
「俺も今日は帰るかな。腹も減ったしな」
「じゃあ、ラーメン食おうッス!ラーメン!」
チュートリアルだけで大分疲れた。
今日は帰って、また明日やることにしよう。
家に帰ったら夕飯が用意してあって母親に舌打ち後に中指立てられた。
ゲームの設定考えてるのか、ストーリーを考えているのか。