スクリーンをぶちやぶれ
「変身ったってどうやるんだよ」
「その腰にあるフィルムを腕の装置にセットして」
「こいつか」
腰に手を伸ばすと確かに一昔前の丸いフィルムの形をしたものがあった。
押せそうなボタンがあったので押してみると『オーバー・ザ・ヒーロー!』と、書いてあるタイトルの音声が出る。
そして腕にピッタリはまりそうな場所があるが入れ方が分からない。
「スイッチを押して」
入りそうな部分にスイッチがある。
押してみると上部が開くようだ。
その隙間に先ほどのフィルムを滑り込ませる。
「蓋をそのまま閉じて」
『フィルムセット!』
右腕の装置からまた音声がする。
目の前のモンスターが黒い色に染まりきるのも目前だ。
おそらく染まった瞬間、襲ってくるのだろう。
それを前にして、この目の前の女の子を信じてこんなことしてると考えると泣きたくなってくる。
蓋を閉じると『アクトレディ!』の音声の後、ブーッ!ブーッ!ブーッ!と、映画の上映開始前のブザーのような待機音声が流れる。
そうしている間にも目の前のモンスターが黒く染まり切る。
途端、女の子目掛けて駆けだそうとしているのが見えた。
「腕を前に出して一番手前のボタンを押しなさい!こう!こうよ!」
めっちゃ右腕を突き出すポーズをしている。
実はとんでもなく大物なのでは?このおなご。
「こうなったらヤケだ!」
同じようなポーズをして一番手前のボタンを押すと巨大な映画フィルムが周りに現れ、映写機を回すようなガガガガガという音とともに③と表示された。
②と移り変わる間にも女の子にモンスターが迫っている。
①の表示になると女の子が叫んだ。
「飛び込んで!」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
無我夢中でスクリーン越しに女の子の前に飛び込む。
飛び込んだ先にはモンスターが俺に向かって口を大きく開け、牙を剥いていたがそれを殴ろうとした瞬間に死を覚悟し目をつむっていた。
だが、目を開けると目の前の光景は上に吹っ飛んだモンスターだった。
そして自分の姿を見る。
赤いメカニカルなデザインのスーツを着て、頭にもヘルメットをしているようだった。
そして腕の装置から音声が鳴る。
『スクリーンオーバー!』
空を舞っているモンスターが体勢を直し、地面を響かせ着地をする。
「そのスーツならあの子とも対等に戦えるわ。ナックル装備だったのに合わせて格闘戦に特化させたから違和感無く戦えるはずよ!」
(マジか!変身してるよ俺!やっべえ!ワクワクしてきたぁ!)
内心興奮している中で、モンスターが俺を見据えている。
一度攻撃を加えたことで俺を最優先の敵と認識したのだろう。
足の筋肉が膨張した次の瞬間、地面が爆発が起こる衝撃で俺にとびかかってきた。
爪による攻撃を後ろに飛んで避け、ジャンプするように前に飛び出し殴る。
先ほどの攻撃の時はモンスターが油断していたからか、今度の攻撃では吹っ飛んだりはしない。
(だが、まったく効いてないわけでも、ない...!)
「おらぁ!」
続けざまに蹴りを入れ、その反動を利用して後ろに身体を一回転させながら飛び距離を取る。
俺が着地するとモンスターが大きく息を吸い、こちらも身構える。
胸が大きく膨らん後にけたたましい咆哮が鳴り響き、こちらの動きを心に反して動けなくさせた。
その隙にこちらに距離を詰め、勢いのまま俺の体を吹き飛ばす。
「がはぁっ!」
木にたたきつけられ思わず苦しい声が出る。
ステータスバーを確認するとHPも大分削られているのが分かった。
(そりゃそうか、変身とかしてステータス強化されててもレベル自体は始めたばっかで低いもんな...!だが、ビビってても負けちまうからよぉ!)
俺はモンスターめがけて駆ける。
爪を利用して斬り払ってくるのを飛び上がって避け、両腕で何度も顔を殴りつけた。
するとモンスターはするどい牙をはっきりと見える程に大きい口を開け、俺を喰らうためか顔を近づけてくる。
顎を右足で蹴り上げ喰らいつかれるのを阻止し、右手で頭を殴るついでに態勢を整えて左足でモンスターを蹴るようにして後ろに宙返りする。
さすがに効いているのかモンスターは両手で顔を覆い、呻いている様子だ。
(ただ、決め手にかける......このまま戦ってても一撃のダメージ差でキツイな)
その時だった。
「このカートリッジをシリンダーの1番にいれて!」
カートリッジを投げつけられ受け取ると英雄の一撃と書かれている。
「シリンダー?これか!」
よく見ると右腕の装置にリボルバーの弾丸を入れるシリンダーのような形をしている部分がある。
弾丸を込めるときと同じように横に開くようだった。
開くとシリンダー部分に穴があり、先ほど受け取ったカートリッジと呼んでたものを形に合わせて差し込んだ。
「入れたらシリンダーを戻して!」
『クライマックス、英雄の一撃』
言われた通りにするとガシャン!と弾丸を装填する衝撃と共に、右腕の装置からまた声が流れると右拳が光りだす。
「その攻撃のチャンスは一度よ!」
(プレッシャーかかるなおい!当ててりゃいいんだろ!当てれば!)
モンスターが頭を振ってこちらを見据え、仕切り直しといった状態だ。
足の筋肉が膨張し、土煙を上げ飛び込んでくる。
モンスターは鋭い爪のある右腕を突き出しさらがら弾丸のように迫ってくる。
俺はそれを身体をひねる事で右にかろうじて避ける。
その際に左ひざで思い切り蹴り上げる。
空中で動きの止まったモンスター目掛けて光り輝く右拳を突き出した。
「これが英雄の一撃だぁっ!!!!」
右拳から大きい衝撃が自分にも伝わる。
次の瞬間光が拳の先から大きい柱のように放出され、まばゆい光に俺も目を細める。
力を抜いたら自分も吹き飛ばされそうで油断ができない。
光が落ち着き、細めた目を開けるとモンスターの身体の上半分が消し飛んでいた。
時が止まったかのように呆然としていると、モンスターの身体がぐらりと地面に倒れる衝撃でハッとする。
「さ、さすがに倒したよな?」
「ええ、あの子はもう大丈夫よ」
真後ろに女の子が立っていて飛びのくように驚く。
「腕のカセットを取ると変身が解けるわ」
「お、おう」
言われた通りにするとスーツとマスクが消える。
「君は一体何者だ?運営の人とかか?」
「私はアテナ。アテナって呼んでくれていいわよ。運営の人って言われると似たようなものね。ちなみにその腕のやつの名前は......そうねえ、シネマチェンジャーとかにしましょうか」
「DXとかついておもちゃ化しそうな名前だなおい!しかも今考えただろ!」
「ちなみにシネマチェンジャーがあなたのアクトスキルね」
「爆速で死んだヨイチも言ってたけどそのアクトスキルってなんなんだよ。チュートリアルのくせにモンスターの異常な強さとか。この腕の......シネマチェンジャーの事とか」
一瞬死にゲーかと思ったほどだ。
まず、ヨイチはどこいきやがった。
「あの子については少し弄られて苦しんだ状態...としかわからないわ...。アクトスキルについてはお友達のが詳しいと思うけど?シネマチェンジャーがアクトスキルだって言えば納得してくれると思うわ」
(ちょっと妄想癖でも入った人なのか?ただ、ヨイチに聞けっていうならそうしたほうが俺も聞きやすい)
アテナは踵を返すとすれ違いざまに言う。
「その扉の先を進んでいけばこのエリアを出られるわ。また困ったとき助けてもらうかもしれないからお願いね」
「おい、アテナはどこ行くんだよ!」
すると彼女の姿はどこにもなかった。
「あと、アクトスキルと同じようにシネマチェンジャーは強くなっていくわ。英雄の一撃とはまた違ったカートリッジも増えるかも。でも、そこはあなたの想像力次第だから次に会うまでに頑張って強くなってね」
声だけが木霊し、アテナが言い終わると静けさだけが残った。
ニ〇アサとか超大好きです。
あとすでに設定いじったりしてててんやわんやで爆笑中