師匠
次の日、日曜日で学校も休みだった俺とヨイチは朝から修行を始めていた。
ヨイチはトウジロウさんに連れられて俺とは別の場所で修行を行っている。
俺は昨日ガンジさん達に初めて会った場所......『秘密の滝』にいる。
そんな俺の修行は......絶賛空中を舞っていたりして、いやあ、ゲームの中で空を飛べるとはなあ!と、のんきなことを考えていた。
ついでに言えば落下も今から体験するよ!
「死ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
「ヌワハハハハハハハハ!!!!」
俺を空高く吹き飛ばした元凶が笑い声を上げている中、俺は覚悟を決めて着地に備える。
なぜ、こんな事になったのかというと少し前の事だ
~少し前~
「つまり武術が初心者の壁というよりは、初心者の壁というのは想像力の壁とも言うのですぞ」
「なんかイメージがよく?」
「ヌワハハハ!こういうのは実体験したほうがいいかもしれませんな!少し離れた場所に立ってくれますかな?」
「了解です」
言われるがままガンジさんから距離をとる。
「いきますぞ!ヌゥン!」
ガンジさんの上半身の服が吹き飛んだ。
「なんでそうなる!?」
「ここで驚くのはまだ早いですぞ!ヌワァ!」
ボディビルで筋肉を見せるようなあのポーズ。
これは......サイドチェストである。
「これは見事な......筋肉山脈!」
「からの......マッスル......ビィィィィィィィィィンム!!!!」
「はい?」
ガンジさんが叫ぶとサイドチェストの形状をしたビームが放たれた。
「なんじゃそりゃああああああ!!!!」
ビームが俺に直撃し、大爆発が起こる。
その衝撃で俺は天高く放り出されていた。
~時間が戻る~
「あべびゃ!」
カエルのような声が漏れ出て無様な着地を披露する。
「わかりましたかな?」
「なにが????!!!!!!」
空はどこまでも青い事と、地面は硬いという事は分かった。
「今の技はゲーム内の元々の技でも無く、現実で使える武術でもないのですぞ」
「え?じゃあなんでビームなんか出るんです?しかも筋肉で」
「吾輩は思うのですぞ.....」
なんか語り始めそうだ。
「筋肉に不可能は無いと。全ては筋肉から生まれ、筋肉に辿り着くと!」
ガンジさんは涙まで流し始めてそう語る。
俺は何を聞かされて、何を見ているんだろう。
「ゆえに吾輩は筋肉からビームも出ると思い、出してみた。それだけですぞ」
「なるほどなるほど」
ダメだ全然わかんね。泣いていい?俺
「もう少し分かりやすく言うと、武術をしている人は自分の理想の動きを想像しやすいからこそ、このゲームでの初心者の壁を超えやすいということですな」
「ということは俺の場合はこの能力でどんなことができるのか想像すれば強くなれるってことですか」
「そういうことですな!自分自身という枠の上で想像力を膨らませるのはなかなか難しい事。まずは徒手空拳での戦い方を心得ている吾輩と修行することで、エイジ殿自身の戦い方や理想の自分を見つけるのがこの修行のゴールですぞ!」
今までのゲームは技やできる事は決まっていた。
だけどこのゲームはそんな枠を超えて自由に戦うことができる。
「俺自身の戦い方か」
「そのためには吾輩と.....」
ガンジさんの目が光を放ち、身体に響くような威圧感が俺を襲う。
「吾輩のマッスルスキルの数々を受けてもらいますぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ゲームの中だけど、生きて帰れるかなあ俺。
こうしてガンジさんの明らかに筋肉だけで説明できないデタラメな技の数々をこの身で受ける地獄が始まった。




