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マッスルとソード

ログインを終え、アカリとヨイチの居場所をメニューから確認する。

今いるのはフィールドエリアのポータルのようで、タウンエリアからは出ているようだった。

俺も合流するため、ポータルから二人のいる場所に近いポータルに転送を開始する。



転送が終わるとヨイチとアカリが待っていた。


「エイジも来たわね!さっそく行くわよ!」

「行くってフィールドか?」

「隠しエリアっていうのかな。見つかりにくい場所から入れて、モンスターが出てこないってところが特徴の場所」

「そんな場所があるッスか!?このゲーム、公式で攻略本でも出したら絶対売れると思うッス」

「そういうのを見つけるのも醍醐味ってことなんじゃないのか?初心者の壁ってのもその類の話だろ」

「実際私のも偶然ってところが大きいのよね」


アカリについていくとフィールドエリアの中でも道から外れた森林地帯に入っていた。

時折出てくるモンスターを倒しつつ、5分ぐらい進むと草木に隠れて見えにくいが洞窟の入り口がある。

迷わずアカリが中に入るので続いてはいると、アカリがげんなりとした表情をして言う。

「......っと、まーたやりあってるわね......」

ドゴォン!ガキィン!と激しい音が聞こえ、ただ事ではない。


「モンスターが出てこないんじゃないのか?」

「モンスターは出てこないけど化け物が住みついてるというか、たむろっているというか」

「なにそれこわいッス」


洞窟を抜けると開けた場所に出る。

綺麗な砂浜に、空間を覆うようにした崖、奥には滝があり小さい湖まであった。

隠れた楽園のような場所に似つかわしくない音がなお一層際立つ。


「ヌワハハハハハハハハ!!!我が筋肉!受けるがよいわぁ!」

「チェストァ!!!この刀で三枚におろしちゃるわぁ!」


大柄で筋骨隆々でスキンヘッドの老人と、細身で引き締まった身体をした白髪の長髪を後ろに纏めた老人が戦っている。

ちなみに二人とも上半身裸だ。

しかもその凄まじい攻防は、時折目で追うことも出来ないほどレベルの違いを見せつけられる。


「おじーちゃーん!殺し合いストーップ!友達引いちゃってるから!」

「ヌ?」

「チェ?」


二人の老人はアカリの言葉で戦闘を止め、こちらに向かって歩いてきた。


「おーアカリちゃんが友達連れてワシに会いに来るなんて珍しいのぉ。で、彼氏どっち?」


白髪の老人の眼光が光り、刀の切っ先を向けてくる。

まずい、殺される。

ここで彼氏だった方は確実に殺される。

俺は助かるために手段を選んではいられなかった。


「「こいつです」」


俺とヨイチがお互いに指をさす。


「おいてめえ裏切ったなヨイチ!」

「ブーメランって知ってる!?鏡でもいいぞコンチクショウ!」

「二人と付き合うとはなかなか罪な孫じゃの。両方でいいか」

「「いやあああああああああああああ!!!」」


俺とヨイチは抱き合って悲鳴を上げる。


「冗談はそれくらいでいいでしょうトウジロウ殿。吾輩はトウジロウ殿の友人でガンジと申しますぞ」

「もう分かってると思うけど刀を持ってるほうが私のおじいちゃんで刀の師匠」

「「よろしくお願いします(ッス)」」


俺たちは正座をしている。


「すまんすまんやりすぎちまったのお。改めてトウジロウじゃ。よろしくの」


握手を求められ、それに応えながら立ち上がる。

それと同時にフレンド登録も完了した。


「今日はおじいちゃんってよりはガンジさんにお願いがあって」

「ヌワハハハ!この吾輩にお願いですと?」


ガンジさんはボディビルで見るようなポージングをとっている。

それに見合う筋肉量でとても老人には見えない。


「こっちのエイジに戦い方を教えてあげてほしいの。もちろんゲームでの強さで」

「ゲームでのってどういうこと?」


言い方に少し引っかかるものを感じて聞く。


「それには初心者の壁についても説明しなきゃね」

「ならワシが説明しようかの。このゲームは想像力によって戦い方が変わるってのは知っちょるの?」

「はい。先ほど細かく知った状態ですけど」

「この話には続きがあっての、想像する事で強くなれるなら元々使える能力はどうなると思うかの?」

「え?......あっ」


俺はアカリを見る。

そういえばアカリは刀を使ってはいるが元々が刀の扱いを心得ている言いぶりだった。


「現実世界で覚えていることはゲームでも使える?」

「その通りじゃ。わしらの場合は元々武術の心得があったから気づけた話じゃがの」

「ってことは俺も現実で武術を学べばいいってことですか」

「それはちょっと違いますぞ」

「どういう事ッス?」

「想像するには現実世界だけでなく、このゲームの世界でももちろん可能って事じゃ」


目から鱗だった。


「このゲームは決まった動きをするだけのゲームじゃない。動きたいように動けるならゲーム内で修行もできるって事じゃよ」

「アカリ殿が吾輩に任せるということは彼は武器を持つタイプではないという事ですな?」

「さすがガンジさん!察しがよくて助かるわ!」


ガンジさんが俺の前に立つと身体の迫力に圧倒される。


「誰かに武術を教えるというのは久しぶりですな。厳しくいきますぞ。よろしいですかなエイジ殿」

「お、お願いします!」

「良い返事ですぞ」


ガンジさんがうれしそうに笑うとこちらも笑みがこぼれる。


「いいのおいいのお!ワシも弟子ほしいのお!」

「おじいちゃんにはヨイチの方を頼めると思う」

「マジッスか!?俺の武器は弓ッスよ?」

「おじいちゃんは弓も達人だから大丈夫よ」

「よっしゃ、久しぶりに滾っちょるぞお!ヨイチ君、覚悟はいいかね!」

「よろしくお願いするッス!」


こうして俺たちはトウジロウさんとガンジさんに教えを乞うことになった。

だが俺たちは知らない。

ゲームとはいえ本物の武術家との修行。

地獄が待っていることに......。


あぁ...筋肉いいわぁ...老人キャラ大好きぃ...

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