疑惑凍結
トウヤについていくと『STAFF ONLY』と書かれた扉に着く。
扉の横のカードリーダーにトウヤがカードをかざすと扉が開いた。
トウヤに続いて扉の中に入ると巨大な画面の前にたくさんのパソコンが並び、その前にオペレーターが座っている光景が広がる。
ロボットアニメとかでありそうな作戦室という雰囲気にワクワクしていると、黒いスーツに髪をオールバックにした40代ほどの金髪外人の男が話しかけてきた。
「ウェルカム!待っていたヨ」
「お待たせしました局長」
「いやいや早いくらいだよトウヤ君、私なんてまだこのチーズケーキを食べきっていないからネ」
よく見ると本当に手に持った皿の上にはケーキがあり、それを食べている。
しかもホールで。
「はじめまして、私はこのゲームの運営責任者だヨ!適当に局長とでも呼んでくれたまえ」
「「よろしくお願いします(ッス)」」
「挨拶が済んだところで本題に入ろう。谷和原ちゃーん!画面うつしてー」
「かしこまりました」
目の前の大きな画面に俺とアテナが映し出される。
「さて、質問の前に私からの話をさせてもらうヨ。まず、今回のボスキャラなんだけど意図していない行動をしている。あの黒くなる現象だネ。あんなのは組み込んだ覚えもないし、バグと呼ぶにはゲームに対して支障が無さ過ぎるってところだネ。とはいえ納得もいかないだろうから調査は引き続きさせてもらうから安心して」
「ならそんな奴あいてになんでコイツは勝てたんだオイ!」
ガイが俺の方を向いて言う。
「そこの説明をする前にエイジ君に質問だ。こちらの女の子はフレンドではないよネ?」
「登録しようにも気づいたら居なくなってるんですよアテナは」
「アテナちゃんっていうのだネ。ここで報告があって、彼女に関してもプレイヤーとしての登録がないんだよ」
「え?だって普通に会話もしてますよ!ヨイチ達だって見てるし話してるよな?」
「そうッスね。確実にその場には居たって証言できるッス」
「アタシも同意見」
ヨイチとアカリも相槌をうってくれる。
「その点を踏まえて、運営としての見解を言わせていただくヨ。彼女はエイジ君のアクトスキルではないのかな」
「はい?」
「このゲームの特徴として、ユーザー毎のアクトスキルやスキルがあるのは分かるネ?あのシステムの仕組みは前任者が開発してた上、亡くなってしまったからブラックボックスなところがあるんだ。こちらで説明できるのはユーザーの想像力をトリガーとしてスキルが作られるということだ」
「補足しますと用意されたスキルが割り振られるのではなく、スキル自体が作られるということです」
谷和原さんと呼ばれてたグラマーで知的な感じの女の人が補足説明をする。
「そこでエイジ君にはヒーロー願望があったとして、ヒロインがいるってのもお決まりの展開だよネ」
言われて納得してしまうあたりヒーロー願望があったのだろうか。
「ヒーローとしての力をくれる存在としてアテナちゃんをアクトスキルで作り出して、ヒーローものお決まりの強くなるプロセスを踏んでいってるのではないかと考えている」
「それであのボスを倒せた理由にはならないだろオラ」
「まあ、待ちたまえ。ここからその説明もするから。エイジ君のアクトスキルという事は想像力のトリガーは彼自身。彼が強敵に会った時、そのピンチを打開するためにはどうしたらいいのかという想像が武器としてアテナちゃん経由でエイジ君に渡される。そんな風に考えると黒いあのボスに対して戦うための方法を無意識で想像してたのではないかと思ったのだよ」
「ご都合主義の塊みたいッスね」
「うるせえやい!」
ヨイチに茶々を入れられ、少し緊張がとける。
「ってことは俺のアクトスキル自体はバグとかチートの類ではないって事でいいんですよね?」
「仮説ではあるけどそういう事だネ」
ほっと胸を撫でおろすが、ガイの怒号がそれを阻む。
「オイ!俺は納得できねえぞ!それでも俺がダメージも与えられずに負けた相手をこいつは負かしたんだ!」
「では、こんなのはどうかネ。エイジ君、今度行う大会にエントリーしないかネ」
「え、俺がですか?初心者ですよ俺」
「その大会にはガイ君も出場する。そこで君自身がバグやチート、まぐれなどではなく勝つべくして勝ったと証明するというのはどうだろうかネ」
「まず、俺と当たれるか疑問だがな。初心者の壁も超えてないようじゃな」
(......初心者の壁?)
「いいぜ、出場して俺と戦えるレベルだったら認めてやるぜオイ」
「わかりました。そういう条件だったら出場します」
「よかったヨ。ちなみにトウヤ君もでるよネ」
「その予定です」
「では、大会は一週間後。それまでこの話はおしまいだヨ!解散~」
トウヤを先頭に全員で部屋を出る。
「じゃあ、大会でな。下手な戦い方したらタダじゃおかねえぞオイ」
「了解です。俺も納得してもらいたいですから」
「フン」
ガイが去っていく。
「俺も用事があるから失礼するよ。アカリちゃんをよろしく」
「余計なお世話よ!とっとと居ね!」
「辛らつだなあアカリちゃんは」
「エイジも、ちゃんとかつけるなぁ!」
俺が茶化してる間にトウヤも去っていく。
「とはいえ現実問題、今のエイジじゃ勝ち目ないわよあの化け物」
「だよなあ......初心者の壁ってのもよくわからないし」
「俺もそこは気になったッスね、アカリはわかるッスか?」
「もちろん、ぶっちゃけ超えてるし」
「「はい?」」
「アタシの場合、偶然ってよりかは二人より超えやすい立場にあったから仕方ない部分もあるから気にしなくていいわよ。そうねえ、アタシが説明してもいいんだけど適任者がいるわ」
「マジか!?紹介してくれ!」
「ただ、地獄見るわよ」
「そ、それでも教えてくれ」
たじろぎながらも答える。
「わかった。なら、今からいきましょ。今日もいるはずだし」
「了解。ゲームの中でいいんだよな?」
「俺ももちろん行くッスよ!」
「同じエリアでいつも遊んでるはずだからとりあえずログインしてから合流しましょ」
アカリがアクタークレイドルの部屋に向かうのに俺とヨイチもついていった。
連続での投稿になります。




