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レイドバトル3

大将ボスの方に近づくと、フードの男が刀を鞘に納め対峙していた。


「龍宮流抜刀術『彼岸花』」


ゾクッとした寒気のようなものを感じる。

その後を追うように連続した斬撃音と共に、複数の剣閃が見える。

だが、複数の斬撃によるダメージは皆無というようにHPバーには変化がない。


「言ってた通りダメージは無い様だな」

「ねえ、兄さん。なーんでここにいるのかしら」

「おっと」


鉄と鉄がぶつかる音が木霊する。

事もあろうにアカリがフードの男に攻撃していた。


「ちょっとなにしてるのアカリさん!?」

「とめないで。ここなら殺しても犯罪にはならないから」

「その殺意はあの黒い方に向けてくれませんかねえ!」


こころなしか大将ボスも首を傾げて戸惑ってるように見えてしまった。


「くるッスよ!」


一人、弓を構えて俯瞰できる位置に陣取っているヨイチが叫ぶ。

大将ボスが高く飛び上がり、アカリ達に向かって剣を振り下ろしながら着地する。

土煙が上がる中、別々の方向から飛び出した二人を見て無事なことに安堵した。


「エイジ、その剣は投げて手元を離れても意識すれば手元に戻るわ」


土煙が晴れる頃、後方からアテナが教えてくれる。


「よし、試してみるか」


俺は剣を逆手に持ち、大将ボスに向けて投げると大将ボスの胸に想像したような軌道で迫るが剣で弾かれた。

宙を舞った剣は離れた場所に突き刺さる。

こちらを見据えた大将ボスは手元に視線を向け、武器が無いと見るや剣を背中に担ぎ上げてこちらに向かってきた。


(剣を意識する......)


目の前に近づいた大将ボスは俺目掛けて剣を振り下ろすのにあわせて、何も持ってない腕を振りぬく。

ガィンッ!と耳に響く音がし、手に戻った剣で攻撃を防いげたようだ。


「お上手お上手♪」

「上品なマダムかお前は!」


アテナへのツッコミをしている最中にも次の攻撃がくるのを剣で防ぎ、一度後退をする。

後ろに下がる俺を大将ボスは追おうとするが、ヨイチの弓が身体を射抜く。

怯んだ隙にアカリが攻撃を加え、俺も後退しながら剣を投げつける。

先ほどまではダメージ自体が入る事のなかった大将ボスはダメージが入ることで動きが鈍り始める。


「おい、アカリちゃん」

「あ?」

「そんな怖い顔しないでくれよ......で、本題なんだが何故本気を出さないんだ?」

「チッ余計なことを......やっぱ死ね!」

「おっと」


フードの男はアカリの刀を今度は手に持った鞘で防ぐ。


「仲がいいのね」

「どこがッスか!?」


アテナは天然なのだろうか。

3度会ってもつかみどころが無いのでよくわからない。


「仕方ない......使うか『四季神しきがみ』」


アカリの刀から炎が現れ周囲を焦がす。


放一閃はなちいっせん


先ほど見た攻撃と違い、今度の攻撃は炎を纏った斬撃が飛んでいく。

直接の斬撃ではなく炎を纏っている為、大将ボスが剣で防ぐも炎が身体を襲う。


「UGUAAAAAAAAAAAAAAAAAAARUUUUUUUUUUUUUUAAAAA!!!」


叫び声のような咆哮を上げ、剣を持っていない左手をアカリに向ける。

掌を広げると黒い玉のようなものが現れすぐに大きくなっていく。

一度腕を引く動作を始めると黒い玉に周囲が吸い込まれていくような感覚に陥る。


(あの攻撃は明らかにやべえな、攻撃すれば黒い玉で何かするだろうし、かといって放っても置けねえ)


そして大将ボスが腕を前に解き放つと黒い玉が弾け、黒い光の濁流がアカリを襲う。


円陣えんじん!」


アカリはとっさに刀で地面を斬る動作をし、斬った線から炎の壁が現れ黒い光の濁流が激突する。

だが、一瞬の拮抗も空しく炎の壁は瓦解すると同時にアカリに攻撃が襲い掛かる。


「やれやれ、攻撃が通らなければ壁にでもなるしかないな」


アカリの前に飛び出したフードの男が言う。


「龍宮流抜刀術『天衣無縫純潔てんいむほうじゅんけつ』」


フードの男が目の前に剣を抜くと、空間が斬られたかのように白い裂け目が表れる。

その裂け目は濁流を寄せ付けず触れたところから二つに割れ、フードの男とアカリを避けるように大地を荒らし、やがてそれは収まった。


「おい、反撃開始だ」


あまりの衝撃に見ていることしかできなかった俺はフードの男の声で我に返る。


「エイジ、その状態でも英雄の一撃は使えるわ」


ヨイチの後ろでアテナが言う。


「ちょっとぉ!後ろ隠れないでッス!」

「いい壁だったわよ」

「やっぱりそういう扱いッスかぁ!」


ヨイチのおかげで固まっていた身体も少しほぐれた。


「なら一発お見舞いするか」


大将ボスも連戦な上、今の一撃で体力を消耗したのか動きが鈍い。

そこをアカリとフードの男が良いコンビネーションで攻撃を与えている。

フードの男がヘイトを買い、アカリが隙をついて攻撃を加え、ヨイチが後方から矢で射抜く。

俺も負けていられないとばかりにカートリッジをシリンダーに入れる。


『クライマックス!英雄の一撃』


剣の柄から光を放つようにして巨大な光の剣が出来上がる。

俺はこの剣で何ができるか少し想像して、行動に移し始めた。


「二人とも避けろ!」


アカリとフードの男が俺を一瞥すると察したのか後方に飛びのき、俺は巨大な剣を回転させるように大将ボスに投げつける。

意識していなかった方向からの攻撃に反応できず、大将ボスは光の刃をその身に受け後方によろける。

俺はそのまま大将ボスに近づき、剣を俺の手に戻してそのまま駆け抜ける勢いで袈裟斬りをし、後ろに回ってから斬りつけつつまた正面に回る。


「こいつで......とどめだ!」


両手で剣を構え、大将ボスの頭から真っ二つにするように斬りつけると大将ボスの動きが止まり、やがて消えていった。

あまりの疲労感にその場で大の字に寝っ転がると俺は叫ぶ。


「やっと終わったぁ!」

「お疲れ様エイジ」

「いつもいきなりすぎるんだよアテナ」

「私にもいつ出るのかは予測できないのよ。だから今度は驚いてね」

「またこんなんやらせる気か鬼!」


そんなことを言っているとポップアップが表示される。

『大将がたおされました。残存チーム、大将撃破チームには別途報酬が贈られます。このアナウンスの後にログアウトが行われます。再度ログインの場合は休息を十分にとってからお願い致します。』


アナウンスが終わると転送が始まる。


「じゃあ、エイジまた会いましょう。今度会う時はもっと強くなっててね」

「俺としては厄介事も持ってくるから嬉しさ半分、恐怖半分だけどな」

「あら、嬉しいと思ってくれてるんだ?」


俺のことを覗き込むその笑顔に俺は顔を赤面させるだけで答えを返すことは出来ずにログアウトが開始された。


フードの男の正体はアカリの兄でした。

年末年始の投稿感覚が結構開いてるので申し訳ない。

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