ファーストログイン
更新頻度はまだ考えておりませんが、完結できるように頑張ります。
主人公が変身するぐらいまではすぐに投稿していきますので温かい目で見守ってください。
「赤羽!赤羽エイジ!寝てんじゃない!」
ボコっと教科書で頭を軽く叩かれて俺は目を覚ます。
見せしめになる程度には響く音をさせつつ、かといって痛くない絶妙な叩き方である。
まさに、長い教師生活がなせる業だ。
脱帽。
机の上には涎が少し垂れていて、汚いなと思いながら前を見ると先生が歩きながら教科書の内容を喋っている。
今日の授業で最後の時限だったのもあり気を抜いて寝ていたようだが、いつもの事なので反省の色は特にない。
こんな感じでやる気なくタスクをこなして、身に合った仕事をして感動無く人生が進んでいくんだろう。
そんなことを考えつつも残りの時間を少しスッキリした頭で授業を受け、授業終了のチャイムが鳴った。
惰眠の摂取量が足りないので授業後に追加摂取中、肩を叩かれ起こされる。
顔を上げると見慣れた男の顔が目の前にあるがとても近い。
「んー……キスするなら人目のつかないところって言ってるじゃない、ア・ナ・タ♡」
「んな気色悪い嫁さんもらった覚え無いッスよ!生き地獄か!」
軽口でそう答え一歩下がるのはツンツン頭で腐れ縁の源ヨイチだった。
明るいタイプで体育会系な人物に見えるが趣味はインドアでゲームばかりしていて、気の置けない友人でもある。
「エイジっていつも寝てるけど家で寝てないんスか?」
「映画ばっか観てて気づいたら時間が過ぎてるんだよ……ふぁーあ……」
「映画大好きッスもんねエイジは」
ヨイチの言う通り俺は映画が大好きだ。
世界観の違う話、歴史に沿った話、身近で起こりそうな話とすべてがワクワクさせてくれる。
特にヒーローが戦うようなアクション映画とか好み。
「そうだ、帰りのホームルーム終わったらゲーセン行かないッスか?昨日、面白いゲーム教えてもらったんスよ」
「お?いいぜ。新しいゲームか?」
「いや、いつからあったのか分からないけどエイジなら絶対気に入るッス!」
「そいつはワクワクだ」
大半のゲームはチェックしているから漏れでもあったのか、それとも実はやっているゲームか、行ってみればわかるだろうと焦らされる感覚を味わいつつ帰りのホームルームを過ごした。
帰りの途中でゲームセンターに寄ることは多く、その際にもヨイチと一緒にというのが大半である。
腐れ縁の始まりも中学の頃からクラスも同じで、ゲームセンターでも見かけるようになった後は一緒のゲームをプレイ。
話していたら仲良くなったと、よくある話。
「で、ヨイチさんよ。どっちのゲーセンで何階のゲームなんだい?」
駅から降りると俺はヨイチに尋ねた。
駅前にはゲームセンターが二つあるためだ。
「ん? おっきい方の地下ッスよ」
「地下の方で目新しいゲームなんて出てた記憶ないんだけど」
「行ってからのお楽しみ!」
てくてくと大きい方のゲームセンターの地下への階段に向かおうとすると、ヨイチは階段ではない側から奥の方から手を招いている。
訝しげに思いながらもついていくと奥のエレベーターまで招かれた。
「おいおいヨイチさんよー。爺さんでもあるまいし使わなくていいだろうに。むしろ遠回りじぇねえかこっちのエレベーターなんて」
挙句、地下に一階層降りるだけである。
何でわざわざエレベーターに……。
「急いてはホモと断じられると言うし、見てからのお楽しみッスよ」
「んなことわざあってたまるか。抱くぞ」
「あってるじゃないッスかぁ!」
エレベーターに乗るとヨイチは地下一階のボタンを押したまま指が離れない。
とうとう気でも狂ったのかと心配になり始めたあたりでエレベーターは動き始めた。
そして表示ランプを見ていた俺は目を見開いてヨイチに尋ねる。
「お、おい!地下一階の表示通り過ぎてんぞ!しかもエレベーター止まらねえし!」
「驚いたっしょー。俺も同じような反応したもんッスよ。うんうん」
ヨイチがそう言うと、エレベーターがようやく止まった。
「腰抜かさないようにするッスよー。エレベーター程度で驚いてたらこの先右肩上がりで驚きがぶっ込まれるんスから」
そして扉が開くとそこには広い空間が広がっており、中央の巨大なモニターではゲームの映像が流れているように見えた。
「お!丁度ランカー同士のエキシビジョンがやってるみたいッスよ!」
そういうとヨイチは見やすい位置まで行こうとするので、整理がつかない頭のままついていく。
地下に降りたのだが降りたのは地下施設の2階とでも言える階層のようで、手すりの方まで行くと階下が見下ろせるようになっていた。
大型の画面では映画やアニメのように派手な戦闘を繰り広げている二人が映し出され、息をのんだ。
一人は大柄で大きな剣を持っており、如何にもTHE筋肉という感じの男。
もう一人は細身で刀を構えた男。
お互いに相手の様子を窺っていたかと思ったら大柄な男が大剣を振りかざしながら細身の男に飛び込んだ。
「らあああああああああああああああああああっっっっ!!!」
咆哮がモニター横のスピーカーからビリビリと伝わる。
細身の男が居た場所を中心に爆発でも起こったかのような衝撃が起こり、土煙が視界を遮った。
だが、土煙は晴れたその場に立っていたのは大柄な男だけである。
細身の男がどこに行ったと目で追うように大柄な男はあたりを見回す。
俺もどこに行ったのかとモニターを注視していると、その男は突如として現れた。
大柄の男の懐には刀を鞘に納め居合の構えを取った細身の男が居た。
次の瞬間、大柄な男は吹き飛んで動かなくなったまま光の粒子となってからだが消えていく。
細身の男は刀を抜いた様子が見えなかったが、抜き放った状態で立ってその様子を眺めている。
何が起こったのか見ることは出来なかったが、おそらくあの一瞬で切り伏せていたのだろう。
モニターに注目していた俺はヨイチに向き直って興奮気味で問い詰める。
「え、これゲームなのか?プレイヤーはどこにいるんだ?」
「ふっふっふーいい反応ッスねー」
あからさまなドヤ顔である。このゲームで必ずボコそうと決めた瞬間だった。
「まずこのゲームの名前はアクターズレイド。ちなみにあのモニターの下にプレイヤーがいるッスよ」
「下?」
下を見ると大きめなマッサージチェアのようなものが二つあり、それから人が立ち上がるところだった。
「実はこのゲーム...ゲームの中に入ってプレイするVRゲームで、ゲーマーの夢がついに実現したって感じ!あの機械...名前がアクタークレイドルっていって座るとゲームの中に飛び込めるんだけど...あーもう説明しきれないから百聞は一見にしかず!さっそくユーザー登録をするッスよ」
言われるがままインフォメーションセンターのようなところに連れていかれた。
受付までつくとメガネをかけた知的な女性がにこやかに声をかけてくる。
「初めまして! 私は当ゲーム、アクターズレイドのプレイヤーをサポートするナビゲーションをしております。気軽にナビさんと呼んでください」
「こんにちはッス! ナビさん」
「今日も元気ですねヨイチ君。隣の彼が昨日言ってた新規プレイヤーですね。仕事が早くて私、感激です。」
「ウッスウッス」
「簡単なユーザー情報はヨイチ君からお聞きしておりますので早速始められますよ」
「よろしくお願いしますナビさん」
「ではこちらのパスをお渡ししておきますね。料金に関しては月額制で学生さんにも優しいお値段となっております。最初の一月はヨイチ君からの招待特典で無料となっておりますので、次の月からお支払いはこちらの受付でお願いします。お支払いが無い場合はプレイが出来ませんのでお気をつけて」
ナビさんからカード型のパスを手渡される。
「ありがとうございます。ナビさん」
仕事が出来る女性というのはこういう人を言うのだろう。
「では、プレイの方法など細かい説明はー……面倒なのでヨイチ君に任せますね!」
「面倒って一番言っちゃいけないキャラでしょあなたぁっ!」
前言撤回である。
挙句の果てに、ついツッコんでしまった。
ヨイチは慣れてるのか適当に笑っていた。よく見ると目は死んでいる。
「では、お二人が良き戦いを演じられますよう……」
そういってお辞儀をしたナビさんから離れ、ヨイチについていった先には広いフロアがあった。
中には先ほどのアクタークレイドルが並んでいて、二つ空いている席の片方にヨイチが座ると俺を呼んだ。
「まずはここに座って、目の前のモニター下にさっきのカードパスを突っ込むッス」
言われたとおりにすると目の前のモニターが動き出し音声が出た。
『アクトパス承認。アクトモードスタンバイ』
次の瞬間、上部が影が延びて頭を覆うようにアクタークレイドルが動き出した。
『システムオールグリーン。アクトモードスタート』
その音声を聞いた途端、自然と瞳を閉じた。
遅筆なので、応援とかされると調子乗ってやる気出します。