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Gift――生物の多様な進化により淘汰されつつあった人類に、神が与えた唯一の慈悲。ある者は火や水といった四元素を操り、またある者は人類未踏の域まで卓越した剣技を身につけた。人類は次第に世界での覇権をかける程まで成長を遂げた。
「これが人類史における神の慈悲と加護の賜物である。……か。」
「実に恩着せがましい文書ですねぇ……」
「なぁリリス、俺のギフトは何だ?」
「マスターの特技ですか? それはもう、世界に終末をもたらせる程と存じておりますが」
「そうか。まだ見せた事無かったよな?」
「はい……もしや見せて頂けるのでしょうか? このリリス、幸甚の至に存じます!」
「いや、いいんだ。……行くぞ! ハァァァアアアッ!」
しかし何も起こらない。ただつむじ風が落ち葉を巻き上げるのみである。
「マスター?」
「人類に与えた唯一の慈悲……ねぇ。」
普段は静かであるが、ある程度の活気はあった図書館の空気が、一瞬で凍りついた。
「図書館ではお静かに!」
司書の指先から放たれた閃光で目が眩んだかと思うと、今度は本当の意味で彼の口が凍りついた。
「マスター!? おのれ小物風情が! 灰にしてくれるわ!」
「んぐっ! んむぅぅぅぅ!」
命令で止めさせようとするも凍りついた口元は筋収縮が困難になり、流暢な発音ができなくなった。やむなくリリスを羽交い締めで抑えようとする。
「あぁっ! マスター! そんなっ……急に積極的に……!」
「んぐーむ!!」(ちげーよ!!)
彼の貞操の危機と引き換えにリリスを止めることに成功した。リリスはいとも簡単に組み付きを振りほどいて、素早い動きで彼の肩に手を回しながら背中を自身の方に押し額同士を押し当てる。
「今ここで……ひとつになるのですね……!」
色んな意味で身の危険を感じた彼は、肩にかけていた鞄から紙切れを取り出し足元に投げつけた。彼の体を蛍光色の光が包む。
「マスター?」
その場に『マスター』の姿は無い。彼女の腕の中にあったのはみすぼらしい麻のローブとシャツにスボンと……パンツである。
「まぁ! 照れて逃げ出すなんて……可愛いですねぇ! でもテレポートのスクロールは未完成だったような……」
リリスと呼ばれる女がなにか口ずさむと、先刻の彼と同様に光に包まれて消えてしまった。
なろうを使ってて、やっぱり異世界ものを書いてないのは、なんか失礼かな(?)と思ったので思いついたやつを書きました。こっちは息抜きで書きますが、私は息抜き大好きマンなので、こっちがメインになる可能性も微レ存……?