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09「鏡が出来ました!」

ブックマークありがとうございます!

──ブルーゾさんをこの土地に引き留めるため、鏡を作る事になった。この世界の鏡は、金属鏡という金属を研いて表面を綺麗にするものみたいだ。


 金属鏡だと、どうしても色などがそのまま映らないし、ハッキリは見えない。きっと、姿形そのままで映る鏡を見ればブルーゾさんも驚いてくれるだろう。


 早速、鏡作りに移りたい所だが、一つ問題が浮上した。

 材料が足りないのだ……。


 鏡を作るには、ガラス、銀、銀を沈着させる硝酸水溶液が必要だ。まあ、硝酸水溶液はクリエイティブスキルがあれば要らないと思う。


 とりあえず、ガラスから先に作るか。ガラスの材料は、石の中に含まれる物質と、砂の中に含まれる物質で作れる筈。


 待てよ……砂や石ころだって、元は岩石や鉱石が細かく砕かれて出来たものだ。という事は、その辺の石ころを組み合わせれば……ガラス出来ちゃう?


 そう思い、足元に落ちていた石ころを二つ手に取った。

 イメージは、円形のガラスを思い浮かべる。

 

(クリエイティブ──)


 さあ、どうだ? これは……紛れもなく、無色透明のガラスだ!!


★★★★


 ガラスの作成に成功したので、鏡に必要な素材は残すところ銀だけになった。そこで、フェンリルさんに銀が採れる鉱山か洞窟はないかと訪ねた結果──

 

 

「ほれ、ここがそうだ」

「ここに鉱石が……」


 一寸先も真っ暗な洞窟へと連れてこられた。この洞窟は、東の神殿からフェンリルさんと初めて会った中央部を抜け、さらに西へと進んだ先に存在していた。


 暗闇を恐れ、俺が入るのを躊躇していると、早く行けとばかりに背中を押されて洞窟内部へと足を踏み入れた。

 

「うわ……真っ暗でなにも見えない」


 灯りも無い中、恐る恐る手探りで洞窟を進んでいると、ふと、右手に柔らかい感触が訪れる。


「ひぇぇっ!!」

「なんだその情けない声はっ! 全く、暗闇も見えんとは、ほら行くぞ」


 なんだ、フェンリルさんが手を握っただけか……。

 てっきり、オバケでも居たのかと思ったよ。


「今、我を化け物みたいだと思ったな?」

「ヒ、ヒェェェェーッ!!」


★★★★


 さて、怖い狼に手を引かれて洞窟の奥まで進むと、広い空間に出た。高さは人が三人分位で、広さはスタジアム位。そしてそこには……。


「金銀財宝ザックザク!」


 壁一面にびっしり生えた鉱石の群が、神々しく光っていた。


「どうだ、凄いだろ?」


 いや、凄いのは鉱石の群で、フェンリルさんじゃないからね?

 そんなどや顔しても褒めないよ?


「凄いだろ?」


 あー、もうっ……分かったよ!


「よーしよしよし。良く見つけましたね~」

「ワウォーッ! ウヲンウヲンッ!」


 犬、じゃなくて、狼に戻るなよ……。どれ、狼に戻ってはしゃぐフェンリルさんはほっといて、銀を見つけないとな。


 どれどれ……おっ! 銀色に輝く鉱石の一帯があるな。

 

「フェンリルさん。あの銀色の鉱石を砕けますか?」

「勿論だとも! 待っていろ!」


 子狼姿のフェンリルさんが尻尾を振って駆けていく。銀色の鉱石の一帯に着くと、鉱石に飛びかかりながら小さな前足を振り抜いていた。


「持って来たぞ!」

「よーしよし~、良い子だな~」


 砕けた銀色の鉱石を咥えて持ってきたフェンリルさんを、いつもの様に頭を撫でて褒めて上げる。


 よし、これが銀なら鏡が作れる筈だ。早速、胸ポケットにしまっておいた円形のガラスと組み合わせてみるか。


(クリエイティブ──)


「眩しいっ!! 今度は何を作ったのだ!?」

「……これです」


「おおっ、これは!! ……我って、こんなに可愛いの!?」

「……はぁ?」


★★★★


「ブルーゾさん起きて下さい」

「……んあ? どうしたユズル?」


「鏡が出来たんですよ」

「はあっ!? 嘘言うな! こんな短時間に鏡が作れる訳ねえだろ! 鏡ってのはな、金属を何日も何日も研いで磨いて作るんだ!」


「いや、でも、出来たのは本当ですし……」

「さては、前もって作ってあった物をだすきだな? そんなものじゃ、俺は納得しねえぞ!」


「本当に今日作ったんですよ! 兎に角、文句は見てから言って下さい!」


 ログハウスの客室で昼寝をしていたブルーゾさんを起こして、鏡が出来た事を伝えたが、作るのが早すぎて信じて貰えていないようだ……。


 とりあえず見てくれと伝えると、ブーブー言いながらも着いてきてくれた。


 ブルーゾさんを連れ神殿に着くと、既にフェンリルさんとレイアさんが椅子に座って待っていた。ブルーゾさんも椅子に座ってもらい、保管していた鏡を持ってくるため、寝室へ向かう。


 見てろ……この鏡を見れば、絶対に驚く筈だ。



「──それで、鏡はどこだ? まさか、その木製の物とか言わんだろうな」


 俺が持ってきた鏡を見て不審がるブルーゾさん。今は鏡が見えないように反対向きで持ってきたから、しょうがない。


 俺が作ったのは、木製の枠に嵌めてある“姿見”だ。

 材料は──銀、ガラス、木だけ。


 クリエイティブスキルのお陰で鏡を作るための色んな工程をすっ飛ばして作れるから、改めてクリエイティブスキルの凄さを感じた。


「まあまあ、では、いきますよ」


 反対にしていた姿見をひっくり返し、相変わらず眉をひそめるブルーゾさんへ向ける。さあ、どうだ!


「おい……これはなんだ」

「なんだ、って、鏡ですよ」


「嘘をつくなぁぁーっ!! こ、こんな、こんな精巧に映る鏡があるか!! 屈折もなく、色まで完璧に映し、光沢で見えずらくなる事もない鏡なんて作れる訳……しかも、それを半日も経たずに……」


 あれ? なんだか落ち込んじゃったみたいだけど、大丈夫かな……。


「私、こんなに綺麗に映る鏡は初めて見ました! まるで神の道具のようです……ユズル様は本当に凄いです!」

「だろ? ユズルは凄いのだ!」


 いやいや、なんでフェンリルさんが胸張ってるの?

 褒められてるのは俺なんだけど……。


「褒めてくれたレイアさんには、手鏡をプレゼントします」

「これは……す、凄い!! こんな小さいのに、大きな鏡と同じように見えます!」

「み、見せろっ!!」


 あ、ちょっと! なにも強奪しなくても……。


「くっっ……これは、本当にユズルが作ったのか」

「そうですよ」

「作っていた所を見た我が保証する!」


「そうか……」


 だ、大丈夫かなブルーゾさん?

 下を向いてプルプル震えてるけど……。


「お、俺を……弟子にしてくれぇぇぇぇーっ!!」

「えぇぇぇぇーっっ!! しかも、土下座の上位互換の寝土下座ぁぁぁぁーっっ!?」

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