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08「職人を引き込むため」

──異世界転移? してから二日目の朝。


 フェンリルさんのせいで寝不足気味なので、食糧庫から見つけたコーヒー豆らしきものを使って、モーニングコーヒーを作り、目を覚ます。 


 味はほろ苦く、爽やかな酸味が刺激的。

 これは間違いなくコーヒーだ。


 朝から皆神殿に集まったので、フェンリルさんとレイアさんには、ミルクと砂糖を入れて出してあげた。ブルーゾさんは俺と一緒でブラックだ。


 評判は上々。皆、もの珍しそうにコーヒーを啜っている。

 

「それで、レイアさんとブルーゾさんはこれからどうするんです?」

「わ、私は……」


 俺の質問に言い淀むレイアさん。昨日のプチ宴会の時に少し話してくれたが、レイアさんは家出してきたらしい……。


 なんでも、家のために婚約を決めて、いざ相手と会ったは良いが、言い様のない嫌悪感に苛まれたとか。相手の男性は、容姿は良くて女性に人気だったのだが、性格が最悪だったみたいだ。


 婚約の際に出された条件を聞くと、その性格の悪さが滲み出ている。


・一つ──妻となった際は、夫の言う事に全て同意し、逆らうべからず。

・一つ──妻は夫を立て、でしゃばるべからず。

・一つ──夫の世話は、どんなに体調が悪くても、手を抜くべからず(夜の相手も含む)

・一つ──妻は夫の所有物であり、夫の仕事で身を捧げねばならない時は、喜んで捧げねばならない。


 とまあ、これは氷山の一角で、他にも様々な要求が並べられたらしい。この一文だけを聞いても糞野郎と分かる。


 そんな訳で、レイアさんは糞野郎と結婚など出来ないと逃げてきたのだ。いや~、もう逃げて来て正解だよ。


「行くあてがないなら、此処に居れば良いじゃないですか! まあ、俺が言うのもなんですけど……。良いですよね? フェンリルさん」

「んあ? ユズルが良いなら、我は構わん。んぁぁっっ~、頭痛い……」


 ダメだこの狼……バリバリ二日酔い中だ。


「フェンリルさんもこう言ってますし、レイアさんが良ければ気がすむまで居て下さい」

「ありがとうございます……。多分、何処へ行ってもあの人の追っ手が来ると思います。でも、此処なら大丈夫な気がするんです。淫らな者ではございますが、お世話になろうと思います」


「え、ああ、はい……」


 だから、言葉の使い方が変なんだよなレイアさん……。


「ですが、ただ居候するのは申し訳ないので、何か出来る事があればなんでも致します。私に務まるか分かりませんが、例えばメイドとか……」


 ダークエロ──いや、ダークエルフのメイドか……うん、悪くない。でも、メイドってほど仕事がある訳じゃないしな。そこら辺はおいおい考えるとするか。

 

「分かりました。レイアさんの仕事はおいおい考えます。それまでは、自由に過ごして下さい」

「分かりました。ユズル様の大きいアソコに感謝申し上げます」


 おいおい……大きい器って言いたいのか? フェンリルさんもブルーゾさんも変な顔しないし、突っ込むに突っ込めないんだよな……。


 まあ良いや。突っ込んだら負けだと思う事にしよう。とりあえず、レイアさんは此処に居る事が決まったし、後で家を作ってあげないと。後は……。

 

「ブルーゾさんはどうしますか?」

「あっ? ……俺は、珍しい物が見たいだけだからな」


 そうそう、ブルーゾさんからも迷い人になった理由を少し聞いた。ブルーゾさんはドワーフ国の宮廷鍛冶師らしく、弟子もいっぱい居たんだって。


 でもある日、流れの若い鍛冶職人と、宮廷鍛冶師長を賭けて鍛冶バトルになったそうだ。対決内容は、友好国へ贈呈品として贈る物を作る、というものだった。


 そして対決の結果、ブルーゾさんは若い鍛冶職人に負けてしまった。ブルーゾさんは自分の腕の甘さを痛感し、そのまま放浪の旅へ出たのだ。珍しい物を“見て触り”目を肥やし、いつか──負けた相手に勝つために。


「珍しいものか……そうだ! 良かったら、俺が作るものを見て貰えませんか?」

「ユズルが作ったもの? もしかして、ユズルも鍛冶職人なのか?」


「あ、いえ! 鍛冶職人ではないんですが、物を作れるというか……うーん、見て貰った方が早いですね!」


 そうと決まれば何を作るかだ。

 普通の物じゃブルーゾさんを引き留められないしな。


 物作りをする中で、熟練の職人さんがいるのは大きい。出来れば、暫くここに居てアドバイスをくれると嬉しいんだけどね。


 うーん、どうしよう……この世界になくて、現代にある物を作れれば、ブルーゾさんの目を引くと思うんだけど。


「ブルーゾさん。この世界に、ガラスって有りますか?」

「ガラス? ああ、あるぞ」


「そうですか……だったら、鏡はどうです?」

「鏡? 金属鏡のことか?」


 おっ、金属鏡って事は、この世界はまだ銀をガラスに沈着させる方法が開発されてないって事か。それなら……。


「なら、俺が凄い鏡を作って見せます! その鏡が、ブルーゾさんのお眼鏡にかなったら、ここに暫く居てくれませんか?」

「凄い鏡か……まあ、見るのに金はかからんから構わねえぜ。だが、俺に評価させるからには、目玉が飛び出るもんじゃねえと納得しねえぜ」


 よし、とりあえずブルーゾさんの了承は得た。

 後は、鏡作りに取りかかるだけだ──

お読み頂きありがとうございます!


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