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2、「武器を作る」

 んあっ……クラクラする……俺どうしたんだっけ?

 

 ああそうだ。夢で会ったフェンリルが裸の女性になったから、鼻血だして倒れたんだ。もう、夢から覚めちゃったかな……?

 

 恐る恐る目を開けてみると、目の前には二つの山がそびえていた。なんだこれは? 柔らかそうで吸い付きたく──


「って!! なんでおっぱいが!?」

「お、やっと起きたか」


「フェンリルさん!? な、なんで膝枕!?」

「なんでとは失礼な。お前が血を出して倒れてしまったから介抱してやったのではないか」


「え、ああ……それはありがとうございました。と、とりあえず、服を着て下さい! じゃないとまた鼻血出そう……」

「だから服などない! お前が我の姿が怖いと言うから、この姿になってやったのになんだ! 喰うぞ!」


「ご、ごめんなさい……兎に角、その姿だとまた倒れそうなので元の姿に戻って下さい」

「ちっ、面倒なやつだ──」


 フェンリルはそう言うと、元の狼へと戻っていく。

 良かった。これで倒れる心配はなさそうだ。


「ほら、これで良いか」

「は、はい! それで、ちょっとお聞きしたいんですが……」


「なんだ?」

「この辺りに、何か珍しい鉱石とかないですかね? オリハルコンとかアダマンタイトとか」


「あるぞ」

「ええっ!? 本当ですか!?」


「ああ、我が持っておる。オーディンから強奪した財宝の中にそんな名前の鉱石があったと記憶しておる」


 す、凄いな夢の世界……此処はもしかして、ファンタジーな世界なのかもしれない。


「あの~、それを少し譲って貰えたりしませんか?」

「なぜだ?」


「え~と、二つの物を組み合わせて新しい物を作れるという力を貰ったみたいで、しかも最初に作る物は、神様が特別な力を授けてくれるみたいなんです。オリハルコンとアダマンタイトなら凄いのが作れるかなと……」

「ほーう、面白い力を持っているようだな。うむ……ならば良かろう。どうせ我が持っていても使わぬしな」


 お、やった! 聞いてみるもんだな。

 え、土を掻いてるけど、そこに埋めてあるの……。


「ほれ、これがその鉱石だ」


 フェンリルが咥えて俺の前に出した金色の鉱石と銀色の鉱石。

 どっちがどっちか分からないが、どうせ組み合わせるからどっちでも良いか。


「ありがとうございます! 早速組み合わせてみますね!」

「ああ、どんな物が出来るか見せてみろ」


 バスケットボール位の大きさがある二つの鉱石を手に取り、何を作るかイメージを膨らませてみる。



 そうだな……最初は武器を作ろうと思ったけど、武器の扱いなんて出来ないしな。そうなると、何か身を守れる物が良い。


 だったら……これだな。


(クリエイティブ──)


 作る物を決め、頭の中で呪文を唱えながら二つの鉱石を合わせる。すると、二つの鉱石は輝きを放ちながら俺の手を離れ、空中に浮かび上がっていく。


 そして、頭の少し上で浮遊した鉱石は、目が開けていられないほどの眩い光を放った。


──二、三秒経つと光が治まったので、目を開けて二つの鉱石が浮かんでいた辺りを見てみた。するとそこには……。


「なんと荘厳な盾だ……」

「はい……凄いですね……」


 銀の槍が中央に装飾された金色の盾が浮かんでいた……。


「これはなんという?」

「イージス……イージスの盾です」


 イージスの盾──ゼウスやアテナが所持していたとされる最強の防具だ。後は、神が付与した力と、自分がイメージしたものが合わさって、どんな物になるかだな。


「フェンリルさん。試しに俺に向かって攻撃してみてくれませんか? 寸止めでいいので」

「ふむ、この盾の力を確かめたいのだな?」


「そうです。もし当たっても良いように加減はして下さいよ?」

「フッ、加減など出来るか分からんが良いだろう。死んでも恨むなよ──」


 不敵な笑みを浮かべたフェンリルさんの前足が上がり、俺へと鋭い爪が振り下ろされる。


『攻撃を確認──防御モードが作動します』


 機械のような声が盾から流れると、俺の周りにバリアが張り巡らされた。


「なっ! なんだそれはっ!」


 攻撃を弾かれたフェンリルさんが怒っている。

 そこへ、またもや機械的な音声がイージスの盾から流れた。


『防御成功──反撃モードへ転換しますか?』


 反撃か……試してみたいけど、反撃するにしても手加減は可能なのか?


『可能です』


 ありゃ、この盾は心が読めるみたいだな。

 兎に角、フェンリルさんに聞いてみるか。


「あの~、反撃しても良いですか? この盾の性能を確かめたくて……勿論、手加減はしますんで」

「なにっ!! このフェンリル相手に手加減だと? 舐めるな小僧!! 全力でこい! 返り討ちにしてやるわ!!」


 フェンリルさん激おこだけど、一応反撃の許可は貰えたな。

 それなら……死なない程度で反撃だ。

 死なれたら夢見が悪いどころじゃないからね。


『了解しました。反撃モードへ転換します』


 相変わらず空中で漂っているイージスの盾から、装飾された槍と同じ物がニョキッと、飛び出てきた。


「なんだその極悪な槍は!? オーディンの非ではない神気……」


 俺にはなんとも感じないが、出現した槍にフェンリルさんが驚いている。あれ? 出現する槍は一本じゃないんだ……。


「ちょっと待てっ!! その槍は、一体何本出る!?」


 十本……五十本……百本──


 だめだ……数えきれない。空中には、数えきれない程の槍が出現し、矛先をフェンリルさんへと向けて攻撃の合図を待っている。


『千本の槍を出現させました。これより反撃を開始します』


「止めろっっ!! その数は流石の我でも──」


 フェンリルさんの悲痛な叫びも虚しく、一斉に放たれた千本の槍。手加減しろって言ったし、大丈夫だよね……?


「くそっ!! 我は神喰らいのフェンリルぞ! 舐めるなっっ!!」


 うわっ、フェンリルさんの口からビームみたいなのが出てる……。それで消滅させようって事か。


──数十秒後、イージスの盾対フェンリルさんの結果は、悲惨なものになってしまった……。


 口からビームを出して槍を消滅させようとしたフェンリルさんだったが、槍は消滅するどころか勢いを増して迫っていた。


 そして、千本の槍を浴びたフェンリルさんは……。


「クゥ~ン……」


 小さい子犬になっていた。小さい体をプルプルと震わせ、先ほどまでの威勢が嘘のようだ。


「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないわっ!! めちゃくちゃビビったではないか!」


 怒ってる怒ってる。でも、その体で怒られても全然怖くない。

 寧ろ可愛い。どれ、抱っこしてみるか。


「や、止めろ! 気安く我に触るでない!」

「ごめんなさい。でも可愛いくて」


 抱き上げた子犬サイズのフェンリルさんを、ひたすら触りまくった。毛並みも良くて肌触りが最高だ。それに、怒ってるわりには尻尾を振って喜んでいる。


 兎も角、最初の物作りは大成功だな。

 このイージスの盾があれば身の安全は確保された。


 それに、こんな可愛い子犬……いや、神喰らいのフェンリルさんにも出会えた。


 まあ、本当に夢なのかは分からないが、糞みたいな世界から解放されたんだ。存分にこの世界をエンジョイしてやろう。


 よし、そうと決まれば、次は衣食住を揃えるとするか……。

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