ドロー!俺のターン!-1-
俺は追い詰められていた。
残された手札は2枚、デッキの枚数は残り2。そして、残りライフは10。
場には[血塗られたネズミ / P2]しか居なかった。
”P”とは、そのカードが持つ”パワーポイント”のことだ。
この数値が高いカードほど優れていると言える。しかし、Pの高いカードほど手札から場に出す為の制限が厳しかったり、様々なデメリットをもつことが多い。その為、Pの低いカードにも利点はある。しかしながら、現在の状況では、[血塗られたネズミ]はまるで役に立っていなかった。
(くそー、どうすればこの不利な盤面を好転出来るんだ……)
相手の場には[クラシックなオーガ / P7] と、 [アンダルシアの守り人 / P5] が並び立っていた。
(仮に次の相手ターンに[クラシックなオーガ]と[アンダルシアの守り人]の攻撃を順番に受けたとすると、[クラシックなオーガ]の攻撃を[血塗られたネズミ / P2]でディフェンスして、7-2で5点のライフダメージを受ける。そして、[アンダルシアの守り人から5点ダメージを受けて……ちょうどライフはゼロ……俺の負けだ……)
対戦相手の笹山は、ニヤニヤと笑っている。どうやら、中々終わらない俺のターンや、俺の苦痛に滲む表情から、勝利が近づいていると思っているようだ。
(だが、まだ終わったわけじゃないぜ。笹山……最後まで足掻くのが、俺のプレースタイルだ!)
俺は、残された2枚の手札から、勝機を探った。
(手札のカードは[天使の涙 / 魔法] と [サーチペンギン / P2]……か)
[天使の涙 / 魔法]
“効果: ライフを3ポイント回復させる。”
[サーチペンギン / P2]
“効果: 場に出した際、デッキから、好きなカードを一枚手札に加えてもよい”
(よし、ここはひとまず……)
俺はカードを手札から、場に出した。
「[サーチペンギン / P2] を手札から場に召喚!そして、その効果を発動!デッキから、好きなカードを一枚、手札に加えさせてもらうぜ!」
俺は、デッキからこの状況を逆転させるカードを探した。
そして、一枚のカードに注目した。
(こいつは……そうか!これなら、何とかなるかもしれない!)
俺は、そのカードを手札へと加え、すかさずそれを場に召喚させた。
「体現せよ![アルファデーモン / P4]!」
俺が、そう叫ぶと、最初は驚愕の表情を浮かべた笹山であったが、すぐに以前の余裕を取り戻していった。
「はんっ、くだらない。何かと思えば[アルファデーモン]じゃないか。お前が何の自信を持ってるか知らないけどさ……P4のそいつじゃ、僕の[アンダルシアの守り人]でさえ倒すことは叶わないぜ?分かってるのかよ」
笹山のその言葉を受けて、俺は笑いを堪えるのに苦労した。
「おいおい、早とちりは困るぜ、笹山。確かに、こいつではお前のカードを倒すことはできないさ……だけど、お前のカードを倒すのは[アルファデーモン]ではなく、横のネズミさんなのさ」
「横の……ネズミ……はっ!」
笹山はようやく[血塗られたネズミ]に隠された能力に気が付いた様だった。
[血塗られたネズミ /P2]
“効果: 自分の場にいるP4以上のカード一枚を墓地に送ることで、このカードをP10にすることが出来る”
「つまり、貴様がやろうとしていることは……」
笹山が目を見開いている。それもそのはずだ、今から自分のカード達が俺のネズミに食い散らかされる未来が見えたのだろうから……
俺は容赦なく、[血塗られたネズミ]に命じた。
「[血塗られたネズミ]よ![アルファデーモン]を食らえ!」
ドロー!俺のターン!-1- -完-