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竜の魔法

 回復薬で傷を塞ぎ、ブブラを迎えに行く。


 馬をゆっくりと走らせる。

 後ろにはババロが乗っている。


 何でだろう。

 心臓が早鐘を打って居る。


 勝利の喜びで我を忘れたババロに抱きつかれてからずっと。


 ……いやいやいやいや。

 まずいまずい。


 だって、蜥蜴だぜ?


『美人じゃがの』


 黙れ!

 俺は、人間だ!


 イチャイチャするなら!

 可愛い人間の女の子が良い!

 なのに!

 ババロに後ろから抱きつかれてドキドキする!

 悔しい!


 選り好みはするな。

 クソ親父の言葉。

 いや! まだ選ぶ余裕はある! 俺は若い!


 可愛い、そう、可愛い女の子の事を考えよう。


『ババロ、可愛いぞ?』


 黙れ!

 クソ残留思念!

 とっとと消えろ!


 ◆


「おかえり!」


 鉱山近くの町へ戻るとマーリーが居た。

 美少女が居た。

 ほっとする。


 いや、待て。

 それも駄目だ。


「どうしたの?」

「助けに来たんだよ! て言うか、一言声かけてよ」

「急いでたんだよ」

「で、何で蜥蜴さんと仲良くしてるの?」

「いや、よくわからん」


 ババロが、離れない。


 ブブラは、足に包帯を巻いて居るが町の子供達と走り回って遊んで居る。


「“さあ、ブブラを連れて戻れ”」

「“……また、会えるか?”」

「“さあな”」


 これ以上、一緒に居ると絶対ヤバい。


「“いつか、お前の卵を産んでみたい”」


 いやいやいやいや。

 無理無理無理無理。


 人間、卵、産まない。


 困惑する俺を抱擁し、そして、ババロはブブラを伴い集落へと戻って行った。


「鱗竜語、喋れるんだ。

 何て言ってたの?」


 二人が見えなくなってから、マーリーこちらに奇異の目を向けながら言った。


「んー、生まれ変わって来世で会おうとさ」


 適当に誤魔化し、ブブラを泣きながら見送る髭の親父に事後報告に行く。

 おばさんが上機嫌で晩御飯をご馳走してくれた。


 ◆


 厚意に甘え、そのまま一晩泊めてもらう。

 口は悪いがみんないい人ばかりだ。

 あっという間にマーリーが人気者になって居た。


 そして朝。


 荒野で昇りかけの朝日を見ながら刀を振るう。

 まだまだ未熟だ。

 あんな奴、親父なら初めの一太刀で両断して居ただろう。


 刀を正眼に構える。水の型。

 踏み込みながら刀を振り下ろす。

 そして刀を立てる。木の型。

 袈裟斬りにして、刀を頭上へ。火の型。

 一息に振り下ろし、下に刀を構える。土の型。

 そのまますくい上げ、体を引きながら剣先を後方へ。

 腰の位置に構える。金の型。

 一息に振り上げる。

 五つの型を相生の順に。

 再び水の型。

 そこから、火の型、金の型、木の型、土の型と相剋の順に繋ぐ。

 再び水の型から相生の順と繰り返して行く。


 三十分程にかけ百セットを終わらせる。


 そして、しばらく息を整えてから次へ。


 さて、魔法を教えてもらおうか。


『ふむ。お主、人が使う魔法についてどれほど知っておる?』


 火水土風の四つの属性があって、便利。

 戦場には欠かせない。

 大魔道士一人が騎士団百人に相当するとか。

 一時期はブイブイ言わせて居た魔道士ギルドだけど、最近の蒸気機関の発達で若干涙目。その阿漕なギルドの所為で習うのに金がかかる。

 くらいか?


『まあ、四属性有るのがわかっておれば良い。

 儂等、竜の扱う魔法はそれとは少し異なる』


 ほう。


『水、風、火、地、天。その五つの力を用いるのじゃ』


 ほう?


『それを扱いやすい様に簡易化したものが人の扱う魔法ではないかと思っておる』


 へー。

 そういやマーリーのは?


『奴のは、己が力を用いておる。

 悪魔の血を持つ者で無ければ使えん』


 へー。


『そう言う訳で、教えてもやるが必ず使えるとは思うな。

 儂は、無理だと思ってる』


 何でだよ。


『言った様に、人では天の力を操るのが難しいのだろう。

 それ故、独自に発展させたのだろう。

 それは、だが、お主の言った様に人が操る分には十分に脅威となるものだ。

 大人しくそれを習った方が賢明だ』


 言った様に高いんだよ。

 一般人は魔道士ギルドに入るだけで金貨五枚とか聞く。

 だから、つべこべ言わずに教えろ。

 魔法使いはモテる。多分。


『……理由が不粋だがまあ良い。

 体の力を抜き、右手を前に出せ』


 言われた通りに脱力し、立つ。

 そして、右手を前に。


『―――――』


 頭の中を、聞いたことの無い言葉が流れる。

 それに伴い、力、そうとしか言いようの無い物が体を巡る感覚。


「―――――」


 俺の口が、聞き取れない言葉を発する。


 直後、目の前に巨大な火柱が出現し、全身を熱気が包み込む。


 すごっ……。


『まあ、こんな感じである』


 業火の収まった後、ドヤ声。

 地面が黒く焦げている。


 ふむ。


 俺も右手を掲げてみる。


 そして、意識を集中。

 先程の竜の実演をなぞる様に。


 五つの力。

 それを取り込み、そして循環させながら練り上げる。

 そんなイメージ。


「―――――(火よ。在れ)」


 声と共に俺の目の前にロウソク程の炎が揺らめき、そして消える。


「……え?」

『嘘だろ!?』


 二人同時におどろく。


 何だよ!

 今のカスっちぃの!


『いやいや、あんなのでも出る筈ないんじゃ!

 お主、どうなっておるんだ?』


 よし、もう一回。


 再び集中して力を練る。

 さっきより、長く。


「―――――(火よ。在れ)」


 先程よりは大きな炎が現れる。

 しかし、それは一瞬で消える。


 成る程。

 魔法を放つ時に練った力が拡散して行く感じがした。


 練るのが弱いのか?


 もう一度。


「―――――(火よ。在れ)」


 僅かに、火が強くなった。

 なかなか難しい。


 と言うか、俺が扱えなくても残留思念が居るんだからそれで良くね?

 そしたら俺、スーパー魔道士じゃね?


『残念ながらそれは無理じゃ。

 さっきの様に、お主がじっとして動かなければ使えるじゃろうが、そんな事、戦場で出来んだろう』


 確かに。


 うーん。

 当面、練習が必要そうだな。

明日より21時更新で続きます。

よろしくお願いします。

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