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女三人寄ればかしましい

「これがベーコンとチーズ。

 で、こっちが玉子とハム」


 王都レグラスへ向かう汽車の中で持ってきたお弁当を広げる。

 三種類のサンドイッチ。


「これは?」

「ウスターソースで炒めたパスタを挟んでみたの」


 私の自信作にマーリーが眉を顰める。

 ……失礼な。


「エリシャどうする?」

「僕は……ベーコンが欲しいです」


 エリシャへベーコンサンドを渡す。


「玉子貰って良い?」

「いいわよ」


 結局、自信作が残る。

 良いですよ。

 美味しいから。


「お嬢様、料理に悪戯心は要らないよ?」


 食べながらマーリーがそんな事を言う。


「そう言う訳じゃ無いもん。

 一口食べてみたら良いのに」


 しかし、頑なな二人は首を横に振る。


 窓の外を慌ただしく景色が流れて行く。

 その窓に少し不貞腐れた私が映る。


 後ろの通路に護衛の姿は無かった。

 それが少し寂しく、心細い。


 ◆


 王都レグラスの駅で下車する。

 ブリズニツの首都パリルよりは、幾分地味な街並み。


 その街の中が少し、ざわついている。

 そんな風に感じられた。



 宿を取り、少し休んでいるうちに冒険者ギルドへ行っていたマーリーが戻ってくる。


「南は比較的大丈夫そうだって。

 でも、明日から汽車は止まるみたい」


 レーヴの東部、トラス地方で起きた小さな反乱の余波で少し混乱しているみたい。

 でも、私達が目指す南はまだ大丈夫そう。


「ヒザマルの場所も分かった。まだブリズニツにいるね。トルズ。知ってる?」


 問われ、私は頷く。


「レーヴとの国境近くの町。山の麓」


 行ったことは無いけれど。

 そこから更にレーヴへ向かえば、山を上りスコルピオと言う小国へ辿り着く。


 私が、行くはずだったかもしれない国。


「セイールからは、そう遠くないわ」


 そう付け加える。


「そっか。じゃ、予定通りガラを目指そう。

 ただ、一つ予定外なことがあります。

 言ったように、汽車は当分動かないそうなので、ひとまず馬で南下」

「「はい」」


 私とエリシャはマーリーの言葉に声を揃え返事をした。


 ◆


 街道を三頭の馬が並んで歩く。


 借りた馬が老馬だという事もあるし、なるべく周りに注意を払おうとマーリーが言った事もある。

 だから、比較的ゆっくりと旅は進む。


 先頭を進むエリシャは、王都レグラスで買ったと言う細剣を取り出し馬上の上で振り回す。

 重さや、振り心地を確かめているのだろうけれど、危なっかしい。


「馬を切らないようにねー」


 後ろからマーリーが注意する。


「大丈夫です!」


 勢い良く剣を振り下ろしながら、エリシャが振り返りもせずにそう答える。

 どうしてかしら。

 ちっとも大丈夫そうじゃないのは。


 ◆


 王都レグラスから十日ほどかけて、ベルソーと言う町まで南下した。


 そして、マーリーが冒険者ギルドから戻るなり、渋い顔で言う。


「あいつ、また山に登ってる」

「スコルピオ?」

「そう。そのままこっちに戻る気かな」

「どうします?」

「ここで小休止しようか。あのバカの考えが読めないから」


 マーリーは暫く考えてから、そう提案した。


 その日と、その翌日の二日間。

 私達は、ここまでの旅の疲れをとりながらベルソーの街でゆっくりと過ごした。


 ◆


「動かないなぁ」


 冒険者ギルドから戻ってきたマーリーがボヤく。


「どうしよっか?」


 昨日一日でこの町の観光は済んでしまった。


「この辺、他に見るようなところもないんだよね」

「聖ミスカの都市遺跡がありますよね?」


 そうエリシャが思い出したように言った。


「聖ミスカかどうかは知らないけど、遺跡はあるよ。

 この先の、鉱山の町のもっと先」

「行ってみたいです!」

「良いけど……蜥蜴の巣になってるよ?」

「え!?」


 ◆


 行くと途中の鉱山の町で一泊するような時間だけど男臭くて嫌なんだよと言うマーリーをエリシャが説き伏せる。

 他に行くべきところもないので、今は蜥蜴人リザードマンの集落になっていると言うその遺跡へと向かう。

 何だかんだで、マーリーはエリシャに甘い。

 そんな気がする。


 蜥蜴人リザードマンか。

 そう言えば、オレンに来ていた彼らが売っていた蜂蜜は美味しかった。


 ◆


 昼を過ぎ、やや陽が傾きかけた頃に鉱山側の町へと辿り着く。

 遠巻きに蒸気機関の大きな歯車が回っているのが見える。

 そして、蒸気の煙が秋の気配が漂いだした空へと高く上っていく。


 私達は、その町で少し遅くなった昼食を食べに食事処へ入る。


 朝昼晩と食事の時間は鉱夫で賑わうというその店は、少し味付けが濃かったけれどとても美味しくて、どんな人が作って居るのだろうと見たら、私と変わらないくらいの歳の女の子だった。


 ここにきて数ヶ月だけれど、たまに厨房に立たせて貰っているらしい。


 食べ終わって、まだお客さんの居ない店でそんな世間話。


「遺跡は、もうちょっと行った所だよ。

 リザードマンが住んでるけど、皆友好的で怖くないから。

 戻ったら晩御飯食べに寄ってよ」


 そう言って送り出される。

 私達は晩御飯に寄ることを約束して、遺跡を目指し出発した。

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