教会の狙いは?
翌朝。
まだ少し雨が残る中であったが俺達はスコルピオを後にした。
「追いつけるだろうか」
珍しくジェルメーヌが弱気だ。
「大丈夫だろう」
イネスの妖精達が先導してくれている。
「向こうは甲冑を着た集団。
歩様は自然と遅くなる」
「ん? 集団なのか?」
俺の言葉にルトが疑問を挟む。
「お前も見ただろう。
十人近い騎士を連れてたじゃないか」
一緒に山を登って来たくせに。
「あれは、違う」
その疑問に答えたのはイネスだった。
「違う?」
「あれは、レイス。霊体。
ヒザマルにも見えてたのか。
私だけだと思って居た」
「は?」
「待て。騎士姿のレイスだと?
伝承にある守護霊騎士か!?」
ルトが声を上げる。
ジェルメーヌも顔をひきつらせる。
「そう言うものだろう」
対してイネスは、淡々と答える。
「連中、本気で聖王戦争でも起こす気か?」
「よかったな。
お前らの軍隊に敵が出来たぞ」
ジェルメーヌが言った冗談にルトはピクリとも笑わなかった。
いや、まさか天羊騎士団と戦場で戦う事は……無いよなぁ?
◆
かなりの速度で山を下り、一日でおおよそ中腹まで辿り着いた。
しかし、アドナキエルの影は見えず。
そのまま夜通し走る訳にも行かずひとまずテントを張る。
雨は上がって居た。
ルトが簡単に夕食を作り、そして、何故か話題はは戦術の話へ。
「陣を組んで一斉に動く。
それが最早無意味なんだ」
ルトが、ブリズニツ軍で教えていることをジェルメーヌに説明する。
射程が伸びある程度連射に耐えれるスチーム銃の部隊ならば、戦場で陣を組み進軍するよりも、個別に散開し身を隠しながら敵を撃った方が効率的だと、そう言う事だ。
まだ、実戦においてそれは試されて居ないが、おそらくそうなだろう。
「魔法に対しても、固まるより被害が少ない」
「一つ、忘れているぞ」
「何!?」
「頭のおかしい魔法使いが味方にいた場合だ。
散開するとあちこち構わず吹き飛ばし、味方の被害の方が多くなるだろう」
「……そんな奴は、呼ばなきゃ良い」
「ごもっとも」
楽しそうにジェルメーヌが答える。
ルト。そんな奴にこれから会いに行くんだろ?
◆
「色々巻き込んで悪いな」
テントの中で妖精と遊ぶイネスを労う。
光の妖精、ウィル・オー・ウィプスがテントの中を飛び回り明かりを振りまく。
「私もあの連中は気になる」
「そうなのか?」
「ヒザマル。
お前達が聖輝石と呼んでいる物。
あれは、私達エルフにとっても浅からぬ因縁がある。
……多分」
「多分かよ」
「だって、聖王戦争の時に私はまだ生まれてないもの」
『じゃろうな』
「イネス、お前、幾つなの?」
「お前、淑女に年齢を聞くなんてド外道な?」
ジト目のイネス。
「さーせん」
一体幾つなんだろう……。
てか、ド外道って……。
「そう言う事。
聞きたければそれなりのものを捧げる」
「それなり?」
「ルトとの絡みで良い。
薔薇が咲く感じで」
「咲かない!
絡まない!!」
「黒薔薇が良い」
「良くない!!!」
「冗談」
どうだか。
「ところで、ヒザマルはどうしてそんなに知っている?」
「……」
「聖職者でも無いのに姿を隠遁しているレイスが見える」
「……」
「当てて見せようか。
竜人の末裔に……」
「……」
「体を売ったな?」
「売ってない!
なんでそんな発想になるんだ?」
「でなければ竜が人に力を渡すなどあり得ない。
そう聞いている」
『そうじゃな。人に力を与えるなど天地がひっくり返ってもあり得ぬ!』
お前が言うか?
「何で竜だと?」
「時折、力が漏れる」
そう言って、イネスは自分の目を指差した。
「本当に?」
「目が、竜の目になる」
「目が……?」
俺は自分の目をそっと触る。
違いなどわかる筈が無かった。
◆
翌、夕方に俺達は麓の町へと辿り着いた。
そして、昨日の夕方には既にアドナキエルがこの町に下りていた事を知る。
追いかけた相手との距離は開いて居た。
俺達はそこで二手に分かれる。
オレンに向かう、ジェルメーヌとルト。
俺とイネスは真っ直ぐ西へ。
ひとまずベルソーを集合地点に定め。
小休止の後、俺とイネスは馬上の人となった。




