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そもそも魔法って

「まあ、そう落ち込む事無いよ」

「でも……」

「まあ、偶に居るんだよね。

 体質みたいなもんだよ」


 屋敷の食堂でお茶を淹れながらフルグレイさんに慰められる。


「私もそうだからね!」


 マーリーが明るく慰めてくれる。


 初歩の魔法。

 火を灯す。

 それすら、私には出来なかった。

 魔法の資質を伸ばすためには幼少期からの鍛錬が必要。

 そうフルグレイさんは言った。

 でも、いくら遅くても、遅すぎるという事は無い、とも。

 ただ、例外的に魔法を扱えないと言う体質の人が居るみたい。

 それが、マーリーであり、そして、私。


 マーリーの場合は、半魔族ハーフデーモンなので、人が使う四元素の魔法を扱うことが出来ない。

 その代わり、自身の力で魔法を行使する。


 溜息を吐いて外を眺める。

 庭でゼンさんとエリシャが剣の鍛錬をしている。


「力なんか、無い方が良いよ」


 そんな私を見て、マーリーがそう言った。


「それ、君が言っちゃう?」


 それにフルグレイさんが、口を尖らせる。


「私はだって、自分の手で扱える力しか使わないもん」

「自分で扱える力?」

「そう。エリシャの剣もだけど、自分の意志で、出して、そして引くことが出来る。

 それが出来ない力は、いずれ暴走する。

 人の魔法がそう。

 実はすごく危ういんだよ。放ったら後の制御が効かないから。

 自分の意志で消せないの」

「僕には関係ない話だね」

「アンタはその前にジルに撃たれて死ぬと思う。

 あと、銃も同じだよね。撃ったら、もう止まらない。

 その後にあるのは破壊。

 何も生まない」

「ごもっともだけど、なんでそんな高尚なのさ。エリシャの受け売り?」

「へへへ。バレたか。

 まあ、そういう訳で私はこの力を無闇に使わないように自重してるんだよ。これでも」

「制御の効かない力……か」


 フルグレイさんがエリシャを眺めながら呟く。

 まるで、彼女がそうであるかのように。


「そういや、ヒザマルちゃんも魔法使えるんだよね。ちゃっかり」

「竜魔法ね」

「え!? 竜魔法? 本当?

 何でヒザマルちゃんは! そんな重要な事を僕に教えてくれないんだよ!」

「だって、私は保証人だもん。と・く・べ・つ!」

「くそ! 汚いぞ!」

「ベッドで抱き合った仲だし!」

「僕だって! 一緒にお風呂入ったさ!」

「私もはいってるー!」


 ……何の言い争いだろうか。

 そして、私はそれに張り合うことが出来ず。

 ヒザマルは男にモテモテね。

 今は美人のエルフと一緒の筈だけど。


「しかし、竜の魔法か。古い魔法と同じくらいレアじゃないか」

「あの、それは何ですか?」

「ああ、ごめん。

 竜魔法はその名の通り、竜族が使う魔法で人には使えない。そう言われている力。

 なんでヒザマルちゃんが使えるのか今度問い詰めよう」

「よし、ベッドの中で問い詰めよう」

「それは嫌だ」


 フルグレイさんに断られたマーリーが、ニヤリと私を見る。


「ミラーシャも?」

「何が?」


 彼女の問い掛けに、笑ったまま首を傾げる。

 それを真似するようにマーリーが同じ事をする。


 何なのかしら。


「古い魔法は?」


 無視してフルグレイさんに続きを尋ねる。


「こっちは、伝承でしか無いのだけれど“未来から来た一族”のみが扱えた魔法。

 とても強力だったらしい」

「未来から来た、古い魔法。謎掛け?」

「まあ、こっちは存在自体怪しい。僕は信じてるけど」

「何で?」

「その方が楽しいじゃないか!」


 古い魔法。

 どちらにしろ、私には縁遠いのだろう。


「あとはエルフが使役する精霊も人から見れば魔法みたいなもんだね……何で怒ってるの?」


 何故か私の方を見るフルグレイさん。


「え? 別に怒ってませんけど?」

「そう? 何か怖い顔してたけど」


 そんな事、ないわよ。


「私も使い魔(ファミリア)使えるけどね。猫とか」

「え!? 猫!?」

「そう」

「どうして使わないの?」


 猫ちゃん!


「だって! 絶対に! 私より人気が出るじゃん!」

「良いじゃない! 一匹。是非この屋敷に!」

「いやーそこそこ良い調度品置いてあるから猫は勘弁して欲しいな」


 そうだったかしら?

 私は屋敷の家具を思い浮かべる。

 そこそこ。まあ、そこそこよね。


「後は、ピエンズ教で使う神聖魔法か」


 いつの間にかフルグレイさんの魔法講座になってしまっている。


「あれも、マーリーの力と同じような物だよね。

 人の力を使った魔法」

「彼らはそれを神の力って呼んでるのよね」


 そうなんだ。


「そうだね。でも実は神の力なんかじゃない。あ、これ、一応禁忌(タブー)ね」


 そう言って人差し指を立てて口に当て、窓の外のエリシャを見る仕草をする。

 軽く、頷き返す。


「なので彼らも僕達の魔法は使えない」

「厳密には違うけど」

「え?」


 マーリーの言葉にフルグレイさんが眉を跳ね上げる。


「原理的にはどっちも使えるの。

 でも、力の扱い方って言うのかな。

 それがまるっきり違うから、両方を使うことがとても難しい。

 何ていうのかな。

 甘いものと、しょっぱい物を同時にお皿に盛り付けたら変な味になるでしょ?

 そういう感じ?

 上手く力を扱える人は、甘いものとしょっぱいものを一つの皿に上手に盛り付けて味を壊さない。そんな事もできるの」

「なるほどー」


 何度も頷くフルグレイさん。


「それと、私の場合はお皿に他の物を置く隙間が無かったりするの。

 だから、人の魔法は扱えない。

 でも、それはお皿の上を半分片付けて、そこに乗せようすれば、多分出来ないことは無い。

 何の得も無いからやらないけれど」

「やろう! やってみよう!」

「やーよ。何の得にもならないじゃない。人の魔法なんて破壊の方向にしか発展してないし」

「マーリーは違うの?」

「私の魔法は! 愛を営むためにあるの!」


 ……どう言う意味かしら。

 世俗の言葉は難しい。


 結局、私はフルグレイさんの弟子となりつつ魔法を覚えることは諦めた。

 それでもフルグレイさんは魔法ギルドで上位の資格を手に入れてホクホク顔。


 つまり、上手いこと利用されたのね。

 まあ、お世話になっているのだから文句は言えないけれど。

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