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急ごしらえの義勇軍

 通りを正門へ向け走る。

 城郭の上の見張りが騒めいて居るのが遠目に見て取れる。


 そして門が閉められようとして居る。


「おい、門が閉まるぞ」


 いや、それで良いだろ。


「そしたら上から撃ち放題だろ。

 簡単に蹴散らせる」


 僅かに、走る足を緩めたその瞬間、爆発音と共に木造りの巨大な扉が弾け飛んだ。


 再び足に力を入れ、全力で駆ける。


「町に入られたら終わりだと思え!」


 そう、後ろに声をかけ単独で外へと向かう。


 石畳の上に飛び散った木片を避け、土煙の中へ飛び込む。


 辛うじて、門の外で会敵出来そうか。


 ……俺、一人だけど。


 戦い方は、動きながら考えよう。


 門から飛び出る。


 その先はなだらかな下り坂になって居て、下に怒号を上げる人の山。


 不仕合ふしあわせのとき草臥くたびれる者は、やくにたたざるなり。

 一瞬、逃げようと、そう思った自分を奮い立たせる。


 一振一殺。

 五百も殺れば……。


 街道をこちらに向かい走って来る騎馬が十数騎。

 刀を抜き、それを待ち受ける。


 馬に乗りながら銃を撃つなんて芸当が出来る奴は俺の知る限りに於いて一人しか居ない。

 その向こうの連中も、いきなり味方を巻き込んでの射撃はして来ないだろう。


 野盗連中にも、一欠片の常識がある事を願う。


 俺を無視して町へ向かおうとする先頭の馬を下からすくい上げ、馬ごと斬り捨てる。


 ……上の人間にまで刃が届かなかったか。

 まだまだ未熟だな。


 次いで迫る二頭目、三頭目を切り落とした所で街道から飛び退く。


 直後、乾いた音と共に城門の跡に並んだ連中から一斉射撃。

 馬から転げ落ちる野盗連中。


 巻き添えを食らわない様に街道を外れながら下がる。


 ひとまず、雪崩れ込まれる心配は無くなったか。


 ◆


 向こうから魔法が飛んで来て、こちらが城郭の上から倍にして返す。

 そんな攻防が暫く続く。


 奇襲で攻め入るのが失敗した時点で引いても良さそうなものだが……。


 門の内側から眺めながらそんな感想を抱く。


 このまま距離を詰めずに撃ち合いを続けて何になる?


 いや、相手は覚悟を決めたか。

 一斉に動き出した。


 こちらの魔法使いに射線を集中させ、その隙に全員で突撃して来るか。

 相手に弾の余裕が無くなって来たのだろう。


 ……それは、こっちも同様か。


「突っ込んで来る。

 後ろから当てないでくれよ」


 門に並ぶ連中の間をすり抜けながらそう声をかける。


「そっちこそ、しっかり避けてくれよ 」

「てめぇ。何なら一緒に来い」

「俺たちはここを死守するんだよ」

「良い心がけだ」


 絶対死守しろよ。


 刀を抜いて、敵陣へ突っ込んで行く。

 足を止めるな。

 動き回れ。

 一人でも叩き斬れ。


 ◆


 袈裟斬りにして切り落とす。

 その隙に横からすり抜けられる。

 そいつを、背中から斬る。


 何人かが門に取り付いて居る。

 チラリと後方を見たその隙に、思いっきり体を当てられ吹き飛ばされる。

 そのまま上から振り下ろされる刃より早く、そいつの喉笛を切り裂く。

 しかし、周りを囲まれた。

 横から飛んで来た足が脇腹に食い込む。


「—————(地よ、畝れ)」


 左手を地に当てる。

 それに合わせ、ズンと地面がうごめく。


 突然の衝撃に体勢を崩した周りの連中を捌いてその囲みから抜け出す。


 城門の方から、一際大きな声が上がる。

 崩れたか!?


 いや、弾き飛ばされて居るのは野盗達。

 それを割って出て来るのは……騎士団か!


 先頭に立つのは……デルシア。

 こっちに回って来たか。


 一歩引き、敵を捌きながら彼らの戦いを横目で観察する。


 ……行けそうだな。


 俺は出来る限り斬って後は任せよう。

 余力は、それほど残って居ない。


 ◆


 その後、結局十人程斬って、そして、騎士団連中の勢いに押された敵が総崩れで敗走を始めたのを見て引き上げる事にした。


 騎士団は、完全に勢いづいており、逃げる敵にも情け容赦無く襲い掛かって居た。


 日が暮れ、これから門が直るまでは夜通し人を立たせなければ成らないだろうななどと呑気な感想を抱き、そして、今日の宿を押さえて居ない事に気付く。


 この混乱で、普通に営業して居るだろうか。


 そんな事を考える程には落ち着いて来た辺りで城郭の上へと上がる。

 さほど高くは作られて居ない。


「お見事」


 見張りの一人が声をかけて来る。


「まだまだです」


 答えながら体の傷を確認する。

 深くは無いが結構な切り傷があった。

 親父なら無傷で切り抜けただろうか。


 同数ぐらいの農民に無手で立ち向かってだからな……。

 怪我をさせたら明日からの仕事に差し支えるって。

 対して俺はまだまだ全然未熟だ。


「半分は斬ったか?」

「そんなに斬ってないでしょう」

「それくらいの活躍に見えた。

 冒険者か?」

「ええ」

「お陰で救われた。礼を言う」


 小さく首を振り、壁の下へと目を向ける。


 この場での勝利は確定的だった。

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