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ギルドの保証人

「知り合い?」

「彼氏」

「違うぞ!?」


 受付嬢に問われ当然の様に答えたマーリーを訂正する。


「じゃその彼氏どっか連れてって。

 邪魔だから」

「違うって」

「何? 仕事選んでるの?

 そんな事しなくても私が養ってあげるのに」

「選ぶも何も、そもそもギルド資格すらない。部外者はとっとと出ていけ」

「ああ、お金無いのか」


 首を振り否定する。

 そして、椅子から立ち上がる。

 残り少ない金と命。

 いっそ……娼館にでも……。


「保証人の方か。

 家出でもしたの?」

「身寄りは無い」


 尚も問い掛けるマーリーに答え、荷物を手に取る。


「じゃ、私が保証人になろう」

「は?」

「いいよね?」

「ウチは問題ないわ」


 確認するように問い掛けるマーリーに受付嬢が適当に答える。


「どう?」

「どうって……」


 願ってもない話だが……代償が怖い。


「大丈夫だよ。問題起こしたら死ぬより酷い目に合うから」


 ニコッと笑うマーリー。

 それは、大丈夫とは言わない。


「ただ、一つ条件がある」


 やはり。

 俺は片手で尻を抑える。


「ギルド登録証、見せて」

「ん? それだけで良いの?」

「君に損のない話だと思うけど?」


 確かにそれだけなら損は無さそうだが。


 何かの罠か?

 いや、俺を罠に嵌める理由がわからない。


 男は罠とわかって居ても行かねばならない時もある。特に女の前では。

 親父の教えだ。


「わかった。

 是非、お願いします。

 マーリーさん、俺の保証人になって下さい」

「オーケー!」

「じゃこれに漏らさず記入して」


 受付嬢が入会用紙を手渡す。


 それに自分の名と年齢を書き入れ血判を押す。

 そして、それをマーリーに手渡す。


「ヒザマルか。変な名前」

「は? 名前も知らない彼氏だった訳?」

「へへへへー。ミステリアスで楽しいでしょ」


 名を書き入れながら楽しそうに笑うマーリー。

 彼氏では無い。


『You! 付き合っちゃえよ!』

「うおっ」


 突然奇声を上げ、二人から怪訝な顔を向けられる。


 変なタイミングで声出すな! びっくりする!

 お前、いつ消えるんだよ!


『さあ?』


 鬱陶しい。

 甚だ鬱陶しい。


「はい。どーぞ」


 同じく名前を書き入れ、そして血判を推し、受付嬢へとそれを手渡すマーリー。


「ありがとう。

 ヒザマル・ソラーレです」

「マーリー・ルーナエ。よろしくね!」


 差し出した右手を握り返し、そしてウインクするマーリー。

 ……かわいい。


『男だけどな』


 知ってるよ!


「次は、あっち」


 受付嬢に示されたのは『解析の間』と札の掛かった部屋。


「本気で戦って来ーい!」

「はい」


 俺は、二本の剣を手にそこへ。

 親父に聞いたことがある。

 あの中には決して勝てない敵が居て、自分の強さと弱さを示してくれるのだと。


 だが、死ぬことは無い。


 唾を一度飲み込み、大きく息を吐く。

 扉を開けた瞬間、暗闇に包まれた。


 ◆


「お疲れさん」


 中で待ち構えていたのは『自分』だった。

 真っ黒で俺と同じように剣を構えていた。

 俺と同じ様に剣を振るう。

 奇妙な体験だったが、ああして向き合うと自分の隙の多さがよく分かる。

 それでも勝てないのだ。

 まだまだ修練が足らない。


「結果出たよー」


 マーリーが片手に紙を持って叫ぶ。


 何でマーリーが見てるんだと思うが、そう言う約束で保証人になってもらったのだから仕方無い。


 ヒザマル・ソラーレ レーヴ王国所属

 ギルドランク:ストーン

 戦力ランク:スチール+

<身体能力> 腕力:17 理力:9 素早:16 体力:12

<所持技能> 剣:1 曲刀:2 ナイフ:2 馬術:2

<特記事項> 呪い


「はい。これがヒザマルの能力」


 身体能力は15で一般成人男性並み、30を超えると強者、40を越えようものならば英雄並みと言われている。

 まあ、まずまずか。


 所持技能の武器や魔法の熟練の度合いである。


 1~2:訓練トレイニー

 3~4:巧者スキルフル

 5~6:熟手プロフェッショナル

 7~8:玄人スペシャリスト

 9:名人エキスパート

 10:達人マスター


 と言う感じらしい。

 達人マスターは、世界でも数えるほどらしい。


 それらから総合的に判断したものが『戦力ランク』である。

 これは『ギルドランク』同様、ストーンからプラチナまで。ただし、スチールからは-と+があり全十六段階での表示。

 俺は下から四番目という事になる。


「まずまずね」


 と言うマーリーの評価。


「で、この呪いって何?」


 特記事項に書かれた文字を指差すマーリー。


「人には言えない」


 一つ二つ謎がある方がモテる。

 親父の言葉だ。


「ふーん」


 ジト目のマーリー。


「ま、良いけど。ちなみに私はどっちもブロンズだから」

「え」


 そうなのか。


「はい、これ。ギルドカード。無くしたら再発行に銀貨五十枚だから」

「ありがとうございます」


 受付嬢から、何の縁取りも無いカードを受け取り懐へしまう。


「ついでに、さっき見せたカードの持ち主の能力って教えてもらえます?」


 親父のカードの事だ。


「手数料、銀貨二枚」


 何をするにも一々、金が掛かる……。


 仕方なく金を払い親父の情報をもらう。


 ########## レーヴ王国所属(失効)

 ギルドランク:ゴールド

 戦力ランク:ゴールド+

<身体能力> 腕力:42 理力:30 素早:37 体力:45

<所持技能> 曲刀:9 剣:7 槍:6 ナイフ:6 馬術:6 体術:6 杖術:5 弓:5


「うわ。何この人!」


 名前の塗りつぶされた親父の情報を見て絶句する俺の横でマーリーが目を丸くする。

 凄かったんだな……親父。


「誰のカード?」

「……師匠。行方不明の」


 そう言ってごまかした。

 半分は間違って無い。


 ◆


「で、ヒザマルはどうして冒険者ギルドに入ったの?」


 登録を終え、再び壁に貼られた依頼を眺める俺にマーリーが尋ねる。


「王都レグラスを目指してるんだ」


 その為に、金を。

 そういう前にマーリーが貼られた紙を指差す。


「よし! じゃこの仕事を請けよう!」


 それは、護衛の依頼。

 目的地はベルソー。

 ここエビルアと、王都レグラスの中間に位置する都市だ。


 ベルソーまではおよそ十日の行軍を予定。

 積荷は主に葡萄酒。

 道中、食事は支給。

 悪くない話だ。

 しかし。


「資格が」


 要ギルドランク、スチール以上。

 つまり俺には無理なのだ。


「大丈夫。私がねじ込む」


 条件はこの上無い。

 成功報酬で金貨二枚。


 ベルソーから、俺の目的地、王都レグラスまで蒸気機関車で行ける。


「わかった」


 ◆


 その日の内に出発だと言われ、マーリーに勧められるままに最低限の買い物だけは済ます。

 主に水と食料。


 そして、再び冒険者ギルドへ。

 マーリーと共に今回の責任者だと言う男に挨拶をする。


「はじめまして。ヒザマル・ソラーレです」

「カッツェ・デーンだ。

 見ない顔だな」


 日に焼けたごつい男。

 ただし、左腕が無い。


「今日登録したてのホヤホヤだよ!」


 明るく言ったマーリーにカッツェと言う男が唾を飛ばしながら怒鳴る。


「ふざけんな! そんなひよっこ連れてく余裕は無いんだよ!

 何考えてんだ!」

「頭数だけでも多く見せた方がいいでしょ。

 これでも戦力はスチール+だから」

「それにしたって……。

 おい、この時期怖いのは何だ?」


 言われ答える。


「岩バッタ」


 岩バッタ。

 子犬程の大きさのバッタである。

 春小麦の収穫が終わったこの時期に凶暴になり、場合によっては人間の子どもすら餌にする。

 この前までは、そう言った魔物から畑を守る事を領主から承って居た。

 最もあの辺は、他に餌となる山があり人を襲うことはほぼ無かったが。


 ここから、王都に向けては所々荒野が広がる。

 その場合、岩バッタの危険性は跳ね上がる。

 群れで襲われ集落が消滅したと言う話も聞く。


「違うな。野盗だ。

 特に今年はこの辺の治安が悪い」

「そうですか」

「それに銃も持ってないのか」

「俺は剣で戦うんで」


 その答えが気に入らなかったのか顔を顰めマーリーを見る。


「おい! お前、面倒見れんのか?」

「言うほど心配して無い」


 あっけらかんとしたマーリーの言いっぷり。


「バッタは狩れるのか?」

「問題ないです」

「死んだら餌にするからな」

「了解」


 人の死体であれ群がる習性がある。

 万が一は、そうすべきだろう。


「わーりー。遅くなったー」


 一際大きな声がギルドに響き、カッツェは心底嫌そうな顔をした。


 ◆


 荷馬車一台に、護衛が六人。


 ポンポンと、一定のリズムで蒸気を吐き出す動力機関の付いた荷車。

 馬一頭で山程荷物の積まれた車も難なく引いて行く。

 話には聞いて居たが凄い。

 自走は出来ないらしいけど。


 お荷物扱いされ、荷車の後ろからついて行く俺にマーリーが状況を説明してくれた。


 ここ暫く国境を接する西国と雲行きが怪しい事。

 その影響で、冒険者ギルドの腕に覚えがある連中が傭兵として呼ばれて、或いは勝手に移動をしているのだと言う。

 他の地域はその影響で人手が不足気味な上、開戦を見据え物資もそちらへ流れて居る。

 結果、警備の薄い物流を狙う不届きな輩が増えて居る。

 そう言う訳らしい。


 本当ならマーリーもこの依頼は受けたく無かったとボヤいて居た。


 しかし、ギルド長に頼まれ断り切れなかったらしい。


 そんな風に、馬車から少し離れマーリーにくっつかれながら歩く俺をからかおうとする無粋な輩はおらず、露骨に避けられて居るか、それともマーリーの正体が知れ渡って居るか。

 両方だろうな。


「交代だ」


 夜は、村で宿を取る。

 しかし、荷物の番は交代で行う。


 夕食後から夜更けまで荷物の側に居た俺の所にカッツェがやって来た。


「お前、ヒゲキリさんの知り合いか?」

「師匠です」

「そうか」


 日中、襲ってきた岩バッタの群相手に奮戦した。

 それで、幾分か見る目が変わったのだろうか。


「ヒゲキリさんは元気か?」

「行方不明。どこでどうしてるか」

「そうか。行方が分かったら教えてくれ。一言、礼が言いたい」

「伝えておきます」


 親父、聞いたよな?

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