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亡命の計画

 泊まっている宿の一室。

 宴会場の様な部屋へ呼ばれる。


 中には既に何人かの男がおり、その中の一人、フルグレイが手を上げる。

 俺とエリシャが、部屋の隅であるそちらへ向かう。


 値踏みする様な視線に晒されながら。


「何です? これは」

「仕事の説明だよ」


 小声で尋ねたエリシャにフルグレイが応える。


「護衛って、僕達だけじゃ無いんですか?」

「そもそも、僕らも護衛役じゃ無いからね」

「え?」


 その疑問は、ジェルメーヌが現れて一旦棚上げとなる。


「皆さん揃った様なので、依頼の詳細を説明します。

 私は今回の責任者、ジェルメーヌ・メリクリィと申します」


 全員の前に立ち、優雅にドレス姿で一礼するジェルメーヌ。


 部屋の中には、俺達三人の他に六人の男。


「皆様に護衛していただく対象ですが、フレデリック・オゥ・ブリズニツ及びミラーシャ・オゥ・ブリズニツ。

 この二人になります」

「え!?」


 エリシャが、声を上げ驚く。

 男達の視線が一気に集まる。

 ジェルメーヌが刺す様な目で睨む。


「……すいません」


 誰だろう。

 後で聞こう。


「悪いがこの仕事、降りさせてもらう」


 男が一人立ち上がる。


「わかりました」


 表情一つ変えず、ジェルメーヌが承諾する。

 織り込み済みだったのか。


「では、申し訳ありませんが宿に部屋を用意して居ますのでそちらでこちらの仕事が終わるまでお休みください。

 報酬はお支払いできませんが、宿代はこちらでお支払いしますので」

「何?」

「すいませんが、名を聞かれた以上このままお返しする訳には参りませんのよ」


 にこやかな笑顔を向けるジェルメーヌ。


「何で監禁される必要があるだよ。

 誰にも言う訳ないだろ」

「魔法器具で拘束される前に出て行け」


 尚も抗議する男にジェルメーヌが冷たく言う。

 気圧されたのか、それ以上の抗議はせず部屋から出ようとする男。


「何で降りるんだ?」


 集まった護衛の一人がそいつに、そう声をかける。


「その二人はこの国を滅茶苦茶にした元凶だ。

 犯罪者を逃す手伝いなんか御免だ」

「そうか。呼び止めて悪かった」


 犯罪者なのか。


 男が退出してからジェルメーヌが続ける。


「では、目的地と移動方法を説明します。

 本日夜、オルレアン郊外にある屋敷から護衛対象二人をオルレアン駅まで護送。

 そのまま蒸気機関車でセイールまで一昼夜かけ移動」

「え!?」


 思わず声が出た。

 蒸気機関車で移動とか、聞いてない!


「すいません」


 全員の視線が集まる中、狼狽しながら頭を下げる。


「その先の移動については改めて説明の時間を設けます。

 以上。

 質問はありますか?」


 ゆっくりと一同を見渡しながらジェルメーヌが問う。


「そんな時間に汽車が無いだろ」

「今日に限り走ります」


「敵は政府軍か?」

「明確な襲撃は想定してません。

 目的は要人を安全に護送する事。

 危害を加えようとする者は須く敵と見なします」


「護衛対象は五体満足か?」

「はい。健康状態は悪くありません」


「選りすぐりが集められたと聞いていたが、あの小僧たちは何なんだ?」

「彼らは護衛では無く同行者です。

 自分達の身は自分で守れます。

 そうですよね?」

「余裕があったら守ってもらいたいね」


 フルグレイが軽い口調で答える。

 誰かの舌打ちが聞こえる。


「あいつはデュラハンを退治したらしい。

 問題無いだろう」

「ああ、あの依頼のか」


 む。

 昨日、冒険者ギルドで見てた奴が居るのか。


 しかし、その言葉でひとます俺達への懸念は払拭されたらしい。


 その後、幾つかの質問が出てそれにジェルメーヌが答えて行く。


「それでは、作戦開始の夜まで護衛の皆さんはここで待機して頂きます。

 食事は宿の者に運ばせますので何なりと。

 ただし、酒はお控え下さい」


 そう言ってジェルメーヌは出て行った。


 俺達も護衛では無いので一度部屋から出る。

 出発に向け荷物をまとめねばならない。


 その前に、一度フルグレイの部屋に三人集まる。

 聞きたい事が、山程あった。


 ◆


「知ってたんですか?」


 部屋に入るなり、エリシャがフルグレイに食ってかかる。


「もちろん」

「どうして教えてくれなかったんですか!?」

「聞かれなかったから」


 聞いても教えなかっただろうなと思いながら俺の疑問をぶつける。


「ところで……誰?」


 二人が呆れた顔でこちらを見る。


「この国の王子と王女だった子達だよ」


 ほう。

 他国の王子王女の名前なんか知らないよ。

 それにしても。


「何で逃げ出すの?」

「この国に居たらそのうち処刑されちゃうからね」

「へー。

 何か悪い事したの?」

「どうかな。

 強いて言えば……いや、二人は何ら罪は無いと思う。

 だから、亡命するんだよ」

「なるほど」


 そう言うもんかと納得したが、エリシャが憤りながら続ける。


「してません!

 教会の命に背く蛮行です!」

「まあ、この国の問題でもあるから。

 下手な口出しをすると教会とこの国で戦争になるよ」


 困惑しながらフルグレイがなだめる。


「ところで、俺、ここに残っても良いかな?」


 蒸気機関車は……。


「ヒザマルさん!

 二人を見捨てるんですか!?」

「いや……」


 見捨てるって、機関車で移動するなら護衛とか要らなく無い?

 あれに追いつける奴なんかいないよ。


「ジェルメーヌちゃんに自分から申し出るんなら良いよ。

 多分、思いっきり股間を蹴り上げられると思うけど」

「すいません。

 一生懸命護衛します」


 股間がヒュンと来た……。

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