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国境を目指す

「ジェルメーヌ・メルクリィです。

 よろしくお願いいたします」


 そう言って優雅に一礼する女性。

 コルセットの付いたドレス姿で折れそうな腰を強調する一方、その上にたわわな膨らみ。

 あの間に顔を挟んでみたいと言うのは男なら誰しもが思うだろう。


 フルグレイが俺達を紹介する間、顔をそむけながらつぶさに観察する。


『……みっともない』


 うっせ。


 この淑女が、旅の案内人だそうだ。

 国境を越えた先で落ち合うのかと思っていたのだが、サゴラから一緒に行くらしい。


 ここから馬の旅。

 向こうの国内で乗り捨てることになるだろうからと、買い取りで。

 その費用は流石にフルグレイの父君持ち。およそ金貨一枚分。


「では、参りましょう」


 トップハットを頭に乗せ、ジェルメーヌは馬に跨った。


 ◆


「ジェルメーヌさんは貴族令嬢なのですか?」


 馬を歩かせながらエリシャが問い掛ける。


「いえ? そんなことはありませんよ」

「そうなのですか? あまりに上品で優雅でしたので」


 サラゴを出発して半日ほど。

 四人で馬を走らせていると、貴族令嬢とその護衛にしか見えない気がするのは確かだ。


 馬の歩行に合わせ、ジェルメールの胸が揺れる。


「そう見せるのも淑女の嗜みですよ」


 ジェルメーヌを挟んで反対に居るエリシャに、おそらく上品な笑みを返した筈だ。

 俺からは見えないけれど。


 それに、何故か複雑な顔をするエリシャ。




 途中、再びピス大聖堂を通り過ぎた。

 早くも本格的な橋の修繕が始まっていた。

 エリシャが、表情を固くして少し速歩で通り過ぎる。

 色々と思う所もあるのだろう。

 果たして、この旅で彼は不名誉を返上出来るだろうか。


 ◆


 宿場町で宿を取り、そして早朝に刀を振る。


 いつの間にかエリシャも出てきて真似をしてした。


 鍛錬を終え、タオルで汗を拭いながらそれを眺める。

 甲冑を外すと彼の線の細さがよく分かる。


 ……あれ?


 剣を振るのを止め、汗を拭いながらこちらを見る。


「どうすれば強くなれますか?」


 この前、ぶっ倒された俺に聞くかね。


「習ったことを体に覚えさせれば良いんじゃないかな」

「成る程」


 そう言って彼は再び剣を振り始めた。


 ……おかしい。

 何か、妙に色っぽい気がする。


 ……マーリーの所為かな。


「今日も長旅だから、程々にな」

「はい!」


 そう声を掛け、先に切り上げる。


 その日も平穏な旅だった。


 ◆


「明日、国境を越えてからは大変な旅になると思います。

 今日は、ゆっくりと体を休めて下さい」


 夕食を食べ終わった所でジェルメーヌがそう言った。


 多分、途中でへばってたエリシャに釘刺したんだろう。

 程々で切り上げろって言ったのに。


「どんな感じなんですか? 国境の先は」

「……荒れています」


 俺の問い掛けに、少し考え彼女はそう返す。

 なんとなく、そこに他の言い様が無かったのだろうと想像する。


 宿すら無いのだろうか。


 じゃ、ゆっくりと風呂に……思わず、ジェルメーヌを見てしまう。


 一緒に入りませんか?


『それは、言ったらあかんと思うぞ?』


 知ってる!


「じゃ、ヒザマルちゃん。たまには一緒にお風呂行こうか!」

「……はい」


 楽しそうなフルグレイにジト目を送りながら同意する。


 ◆


「ヒザマルちゃん。

 悪いんだけど、明日からエリシャの事、ちょっとでいいから気にかけてやってくれる?」

「了解」

「当然、僕も気にかけるけど、剣で突っ込んで行かれちゃうと僕だと追いきれないからさ」

「そんなに危険なの?」

「僕が見た頃でも、ここいらより野盗や魔獣の話が多かったからね。

 それから時間も経ったし、魔獣も亜人もうろつき出す頃だ」


 魔獣や亜人は秋の深まりから春にかけて人里へ現れることが多い。

 人間の蓄えた食料、あるいは人間そのものを狙って。


「僕はまあ、自分の身ぐらいは守れるから」

「知ってる。ジェルメーヌさんは?」

「彼女も大丈夫だろう」


 そう言って意味深な笑みを浮かべるフルグレイ。


 彼女が一番戦えなそうなのだが。

 でも、まあ、馬の扱いは巧みだったな。


「それとも、やっぱあの子は置いて行くべきかな。

 どう思う?」


 暫し考えてからそう切り出すフルグレイ。


「勝手に付いて来て目の届かない所で野垂れ死ぬよりはマシじゃ無いかな」


 そう即答する。


「だよねぇ……。

 可愛いけど面倒な姪っ子だ」


「え?」

「ん?」

「今、何て?」

「面倒。

 あれ? ああいう人の言うことを聞かないようなのが好み?

 マーリーも同類だけど、ちょっとあれより酷いと思うけど?」

「そうじゃ無くて。

 姪っ子?」

「そうだけど?」

「え、女の子?」

「そう。女だてらに騎士を目指す幼気な女の子」


 マジか。


「男だと思ってた」


 変な事言わなくてよかった。


「ははは。非道いな。それは。

 気軽に手出しちゃ駄目だからね」

「いや、出さないけど」

「本気なら止めないけど」

「冗談」


 後、二年しか生きれぬのに本気で向き合うつもりなんかないさ。


「出すなら、ジェルメーヌさんの方が良い」


『無理じゃろ』


 わかってるよ!


「それも、やめた方が良いよ」


 フルグレイもしたり顔で笑う。


 上気せる前に上がろう。

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