第三章 第20話「目覚め始める力」
9本の尾を携えたその狐幻獣は、あたしたちを見回した後尻尾をドリルのように鋭くさせる。
「…ロロロロ」
その独特な鳴き声を出しながら9本の尻尾をあたしへ向ける。
「さっきのお返しってわけ…」
あたしは両手に槍を構える、その瞬間9つの尻尾が迫る…が、それはあたしに届くことはなかった…
「ヒロトっ!」
ヒロトが剣を持った機械籠手を6本造り、計8本の腕と剣で尻尾を止めてくれた。しかし、ヒロトの様子はいつもと違っていた。
黒いオーラを纏い、恐怖を覚えるような殺気を放っていた、聖域の時の怒っていた状態とはまた違う…
「大丈夫なの…?」
そう聞いた瞬間ヒロトは尻尾を弾き返した。
「ロォアア!!」
魔級幻獣が吠える、がその開かれた顎はすぐに閉じられることになる…蹴り上げられたヒロトの足によって…
「ログッ!?」
その巨体が跳ね上がる。
「嘘…あの幻獣が反応できてなかった…」
すぐに体勢を立て直した幻獣はまた尻尾を鋭く尖らせ9本全てをヒロトへと放つ。ヒロトはそれを確実に弾き返していく。
「なん…なの…」
「どうなってやがる…」
「あのリミッターを外した状態ではないよねあれ…」
「月永くん…」
その時インカムに連絡が入る。
〈もしもし!聞こえますか!?そちらどうなってます!?〉
「あたしらも何がなんだか」
「月永くんが…」
〈月永くんがこちらから呼びかけても反応がないんです。とにかく、もうすぐにそちらに2人が到着します。あとはその2人に任せてください。〉
「了解…しました」
連絡が切れたあとも未だ幻獣とヒロトは戦っていた。
「さすがにやべぇ感じがするな…俺が止めてくる!」
「ダメだよ!発花くん!」
ヒロトと幻獣のもとへ行こうとするショウスケを突如現れた人影が止める。
「あぁ速坂の言う通りだ、あれはお前ではどうにもならん」
その人を見て全員が驚く。
「「「支部長!?」」」
そうその人は斎條支部長だった。
「またせたなお前ら」
背後からもう1人男の声。
「リョウスケさん!」
口にタバコを咥え首を鳴らしながら安堂リョウスケさんが歩いてくる。
「ていうか2人が失った気憶保持者だったのか」
「本来なら安堂ともう1人で来させたんだがな、今回は特例だ…月永はいつからああなった?」
「ほんの少し前です…」
「分かった、私が月永を相手する」
みんなが動揺する。
「第4隊には後で説明する…安堂、ヤツはやれるな」
「りょう〜かいっ」
そうして、2人は幻獣とヒロトが戦っている方へ歩き出した。
「失った気憶解放…火煙龍」
そう言ったリョウスケさんの腕や頰が白く侵食され所々から火の粉が噴いている。
そして、今吸っていたタバコを吸いきり新しいタバコに火を点けた。
「さぁて…どう料理してやろうか」
フゥーッと吐いた煙を残してリョウスケさんが消える、それと同時に幻獣と月永くんが吹っ飛ぶ。
「ロロロォオ!」
「…………」
「へぇ〜こいつぁ生きがいいな」
幻獣が木に叩きつけられる。恐らくリョウスケさんの回し蹴りが入った。目でギリギリ追える速度…
「お前の相手は俺だ、狐ちゃ〜ん」
人差し指と小指を立て手で狐を作って幻獣を挑発する。
「ロォアア!!!」
◇◇◇
「…セリカからお前のその力をできる限り引き出せと言われた、だがそれにはお前の強い意志が必要だ…聞こえたなら意識を保て」
月永は無言でその8本の剣で斬りかかってきた。
「ふん…聞こえないか」
剣が触れる寸前で月永を重力で地面に叩きつける。
「…ぐぎっ!」
「どうした失った気憶もその力もあってその程度か?私はまだただの気術しか使ってないぞ?」
そう言うとゆっくりと重力に対抗しながら月永は立ち上がる。
月永の纏うオーラは確実にドス黒くなってきていた。
「失った気憶解放。全支配」
今もなお重力に耐えている月永の額を指で押す。
「落ちろ」
月永はまるで落下するかの如く吹っ飛んでいき木に叩きつけられる。
私はゆっくりと月永へ近づいていく。
「目に付いた強い者強い者へ闇雲に戦いを挑む…それではまるで“野犬”だな」
月永は飛びかかってくるがそれも抑えつける。がすぐに立ち上がり私に剣の切っ先を向ける、それを避けつつ月永の胸のあたりを押す。
また落ちるように吹っ飛んでいった。
「重力がかかった状態でよくそこまで動けるものだ…さて、そろそろスイッチが入ったか?」
月永を包むオーラは真っ黒になりもう月永の姿は見えなかった。目を赤く光らせたそいつは喉を鳴らす。
「グルルルッ」
「呑まれてるぞ、しっかりしろ」
月永は一瞬にして私の目の前に現れた。
8本の剣が私を貫かんと迫る。
「ふっ…やるじゃないか」
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ではまた次回でお会いしましょう〜




