第三章 第12話「トリオ」
夜が来た。聖域には昼夜の概念がないのかと思ったが少し前から薄暗くなり、今ではすっかり普段の夜だ。
「おい!ヒロト!火が点かねえんだけど!」
建物の外でショウスケが騒いでいる。
「失った気憶使ってみな?」
そう言ってやるとショウスケは金色の炎を纏う、そして持っていた木を全て炭にしてしまう。
「やりすぎ」
「…さっきまで表面が温かくなるだけで全く火なんて点かなかったのに…」
「ここにあるものは全て魔力を持っているらしい、生活するのにも力を使うってことだ」
「しかし、魚は冷えているぞ?」
ツバサが氷の箱に入った魚を持って来ながら言う。
「冷やすことは出来ても、たぶん直接凍らせることは出来ないんじゃないか?」
ツバサは魚を1匹手に持ちそれを氷漬けにする。そして、その氷を解き驚く。
「本当だ…冷えただけでまだ生のままだ…」
「とりあえずそれ焼いちまおうぜ〜腹が減ってしょうがねぇ」
「そうだな、一度飯にするか見張りを頼んでるダイチを呼んでくるよ」
俺は周囲に針を撒きに行ったダイチを探す。
◇◇◇
「はい、これでOKよ」
リサちゃんが女の子の長い髪を三つ編みに綺麗に整えてくれた。
「すごぉい!かわいい!」
「これぐらい当然でしょ?」
「私、みんなみたいに髪長くないからなかなかそういうのと縁がないんだ〜」
私は髪を触りながら言う。
「ハヅキもあたしらみたいに伸ばせばいいのに」
「いや〜でも私には似合わないよ〜」
「いいんじゃない?黒髪ロングって清楚っぽいじゃない」
「別にそういうのは意識してないんだけど…」
すると、リサちゃんとアオイちゃんがにやにやしながらヒソヒソと話し始める。
「はは〜ん、あれはヒロトの趣味かしら」
「かもね、それをどこかで聞いて意識してんじゃない?」
「ちょっと!何話してるの!?」
「「別になんでもないわよ」」
ふと見ると女の子が私たちの話に耳を傾けていた。
私は少し2人にむっとしながら女の子に話しかける。
「そうだ、あなた字は書ける?名前を教えて欲しいんだけど…」
そう言うとその子は何かハッとした様子で外へでた。そして、おもむろに地面へ字を書きはじめた。
私はみんなを集める。
まるで習ったばかりのような字の書き方で地面に木の枝で綴っていく。
「な…まえはわすれ…た、でも…みんな…わたしのこと…えでん…とよぶ」
「エデン…」
「楽園って意味だね」
「みんなって誰のことかしら…」
エデンと呼ばれているその子がまた文字を書く。
「わから…ないおぼえて…ない」
「…記憶が無いの?」
その子は俯く。するとそこへ発花くんが近寄る。
「まぁなんだ飯でも食って元気だしな」
と魚を差し出す。しかし、その子はまた文字を書く。
「わたし…たべなくて…へーき」
そう書き残して建物の中へ入っていってしまった。
月永くんが発花くんの肩に手を置く。
「ショウスケ…振られたな」
「うるせぇ」
そうして、その夜は交代で見張りをし幻獣の襲撃に備えた。しかし、意外にも幻獣の姿は全く見られず平和な夜を過ごした。
◇◇◇
「全員起きろ!」
月永くんのその声で眼が覚める。女の子もそれの声で起きた。
「あなたはここで待ってて」
女の子に言い聞かせ私は外を見る。その光景に私は絶句した。
「…おでましだ」
そこには既に月永くん、発花くん、速坂くんの3人がそれと対峙していた。
「ド…ドラゴン…?!」
そう、3人が対峙していたのは巨大なドラゴン…人と同じ大きさほどもある爪、鋭い眼光、緑色の鱗に覆われた体、そんなまるで漫画にでも出てくるようなドラゴン型幻獣がそこに降り立った。
「こいつは倒し甲斐がありそうだなぁ」
「だから発花くんは危機感が無さすぎるよ」
「兎にも角にももう逃げる事はできないな」
発花くんがこちらへくるりと振り向く。
「こいつは俺ら3人の獲物だ!お前らそこでみてな!!」
その瞬間、発花くんとリサちゃん以外の全員が「はぁ!?」と声を上げる。
「ショウスケ様ステキー!」
あの人は本当に馬鹿なのかもしれないとついに私も思ってしまった…
◇◇◇
ショウスケの言葉に驚いていると、ショウスケがニッと笑い言う。
「俺らならいけんだろ?」
それに俺とダイチも応える。
「「当たり前」」
俺たちは失った気憶を発動させながら薙ぎ払われたドラゴンの腕を避ける。
「外套機械籠手・阿修羅【極ノ型】!」
背後に機械籠手を4本、自分の腕に機械籠手を装備、そして自分の腕で夜天【極】を構える。
速攻でドラゴンの腹の下へ入る、が、その瞬間ドラゴンが羽ばたいた。
「なっ!?」
風圧で飛ばされそうになるのをなんとか耐える。ドラゴンは空へ舞った。
「まずい!ブレスだ!」
見上げるとドラゴンが深く息を吸い今まさに、炎のブレスを吐いた。
辺りが熱気に包まれ、赤く染まる。
「止めなきゃ全員まるコゲだ!止めるぞ!」
「僕が止めるっ!」
そう言ってダイチがブレスへ向かって飛び出した。
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ではまた次回でお会いしましょう〜




