第三章 第5話「聖域ウルファリオン」
眠い目をこすりながら車を降りる。
辺りは薄っすら霧がかかっていて、朝焼けを美しく反射していた。その中に伸びをする人影がひとつ。
「あっおはよう月永くん」
「おはよう、早いなハヅキ」
「やっぱ車じゃちゃんと寝れなくてね〜」
今日の朝飯を車から取り出し、ハヅキが広げていた簡易テーブルに並べる。
今日持って来たのはサンドイッチとおにぎりだ。
「多分ちゃんとした朝飯食えるのは今日ぐらいだからちゃんと食っとけよ」
「何日ぐらいここにいるんだろう…」
「さぁ?なんかあの預言者さんはこれでもかってぐらい荷物詰め込んでたけどな」
「一応は2泊を予定してるよ!」
テーブルからひょこっと顔を出す預言者セリカ。
「うわっ!!」
「月永くん驚きすぎ〜☆」
まるで少女のように俺を茶化す。
「気配なさすぎでしょ」
「そんなことはさておき今回の目的を説明するからみんな起こして来てねー」
そう言いながらサンドイッチ片手にどこかへ行ってしまった。
「あの人ほんと何考えてるか分かんないね…」
「あぁ…」
◇◇◇
朝食を済ませ、全員の準備が完了する。
「では!聖域ウルファリオンへレッツゴー☆」
この人と一緒だと調子狂うな…
預言者セリカを先頭に森の中へ入っていく。少しすると聖地ウルファルスが見えてきた。
「改めて来てみると不思議な所だな…」
崩れた神殿のようなこの場所は息がつまるような何やらただならぬ気配が漂っていた。
広場にはいくつかの術式陣が描かれていて、あそこでみんな気術に目覚めた…
セリカはその横を通り過ぎていく、その時神殿の壁に何か文字が刻んであるのが見えた。
「あれ…」
「あれは古代より残された伝承の一部だよ、今は崩れて全部は読めないけど」
「伝承…あの有名な?」
「月永くんが言ってるのは“始まりの伝承”のことかな?残念だけどここに書いてあったのは“終焉の伝承”世界の終わりが記されていたの〜」
世界の終わりが記された終焉の伝承、そんなものもあるのか…一体何が書いてあるんだ。
「気になるみたいだけどあれはセリカも分からないの、あそこに書かれていたのが終焉の伝承だったってことぐらいしかね」
至るところに文字のようなものが刻まれた岩がゴロゴロしている、がどれも見たことのない文字で読むことができない。
そうしているうちにコケや蔦で覆われた石製の巨大な門のような建物が見えてきた。
「あれが聖域ウルファリオンの入り口、“聖の門”」
皆興味しんしんにその門を眺める。何故か俺もその門に興味をそそられた。周りの建物や装飾は風化しているものの、その門はしっかりとその場に立ち俺たちを迎えていた。
「この先は聖域、心してね」
預言者セリカが門をくぐるとその姿が見えなくなった。
「消えた!?」
ひょこっと顔だけ門からでてくる。恐らく結界か何かが張られているのか。
「速く来る」
警戒しながらも預言者セリカに続き俺たちもその門をくぐる、すると門をくぐった瞬間辺りの景色が変わる。
辺り一面の小さい白い花、所々に生えている木はどれも同じ色はなく各々が存在感をかもしていた。
何か石の建物が崩れたような跡、透き通った水が流れる渓流と池、そして、天からいくつも降り注ぐ光の筋がさらに風景を幻想的に仕上げている。
「なんだ…ここ…」
「ここが聖域ウルファリオン、この世界の始まりの地」
「始まりの地…」「綺麗だね…」「なんだか落ち着くわね」「空気も澄み切っているまるで」「別世界だ…」
皆、空いた口が塞がらないという状態だ…それもそうだ、こんな風景を見せられたら誰でもこうなる…
「はいっみんな注目!美しさのあまり呆気に取られるのは分かるけどもうここは危険地帯だよ」
その言葉でハッと我に帰る。
「多分だけどもう気配を嗅ぎつけてると思うからそろそろ来るよ」
「え?何がですか?」
「今回の討伐目標…幻獣」
そう預言者セリカが言った瞬間、目の前に10mほどの巨体が現れる。
「っ!!!」
俺たちはその場から散開する。
異常なまでの殺気、それなのにここまで接近するまで気付かなかった…
そして、その姿を見て全員が確信しただろう、幻獣と呼ばれたその存在の正体…
「こ…こいつは…」
うさぎのような耳に猛獣のような顔、体は人型のカイブツ…
俺はその異常な気配に圧倒されながらもその異形の名前を口にする。
「自然の怒り…」
ファントムブレイヴを読んでいただきありがとうございます!
興味を持っていただけましたらブックマーク、評価等していただけると励みになります!
いよいよ幻獣と激突、その強さやいかに
ではまた次回でお会いしましょう〜




