第二章 第29話「守るため」
そこに現れたのは最悪の男だった…
「あんた、あの筋肉バカを倒したの…」
「あぁ、まぁさすがに一筋縄じゃいかなかったがな」
見ると帝もボロボロだった。
「見たところ、俺、グッドタイミングみたいだなぁ」
「何がグッドタイミングよ…バッドタイミングの間違いでしょ…」
「こればっかりはこの子に賛成ね…今あんたの相手してる場合じゃないのよ、帝」
あたしもリサも帝に殺気を送る。
「おー怖い怖い、でもどの道俺に負けるんだから一緒じゃね?」
「…めんどくさいわねぇ!アオイ!先こいつやっちゃうわよ!」
「えっあっうん!」
リサにアオイと名前で呼ばれ少し戸惑うあたし。そして、帝へ一歩踏み出した瞬間あたしは目眩に襲われる。
「…うっ」
膝をつくあたし、気づけばリヴァイアが横にいた。それはつまり青龍の鎧の解除….気力の限界を意味していた…
「おいおいおいおい、よく分からんがそんな状態でよく俺を倒すなんて大口が叩けたなぁ?」
見ればリサの前にももうタロースの姿はなかった。
帝があたしの前に来る。
「ほい」
帝はあたしの肩を叩く。
「これでお前も条件を満たしたな」
帝はあたしたち二人を見て言う。
「これでお前たちが俺に攻撃した瞬間、審判が発動しお前たちにダメージが入る…もっとも攻撃する力すら残ってないようだけどね」
…あたしは攻撃に移ろうとするリヴァイアを止める…
「……棄権する」
「おっ?」
「はぁ?何言ってんのあんた!」
「正直言って今のあたしたちにあんたに勝つ術はない、それにこれ以上リヴァイアに無理させる訳にもいかない…その上あんたに倒されるぐらいなら棄権したほうがマシよ」
「ほぅ…」
「リサも、やめておいた方がいい…失った気憶をあれだけ使って、これ以上気力を使えばどうなるか…リサだけじゃない、パートナーがメデューサとタロースがどうなるか分からないわけじゃないでしょ…」
あたしはリサを強く見つめる。
「うぅ……そうね…私も熱くなりすぎたわ…私も棄権する…でも、帝…あんたに負けるからじゃない、この子たちを守るためよ」
リサは帝を睨む。
「おいおいおい…はぁ…つまんねぇなぁ」
帝はくるりとあたしたちに背を向け去っていった。
〈第3試合勝者、第4支部帝コウヘイ〉
あまり聞きたくないアナウンスが流れる。
「でも、よかったの?棄権で」
「え?」
「棄権は無条件でポイントが5ポイントになるのよ」
「あっ」
忘れてた…かっこつけて棄権なんて言っちゃったけど、これポイント的にはマズイんじゃ…
「バカなんだかなんなんだか…まっ私はほんとに倒れちゃいそうだからまた後でね」
リサはそう言うとメデューサに乗って行ってしまった。
「あたしたちも戻ろっか」
リヴァイアに肩(?)を貸してもらいながらみんなのもとへ戻った。
◇◇◇
フィールドのゲートからふらふらとアオイが戻ってきた。
一番に駆けつけたのはハヅキだった。
「アオイちゃん、大丈夫!?」
「ちょっと大丈夫じゃないかも…」
アオイはその言葉をいうや否やそのまま倒れこむ。
「おっとっと」
俺はそれを受け止めた。
「とりあえず医務室に運ぼう、リヴァイアも瓶に戻ってな」
俺はアオイを背負い、医務室へと向かう。
「ハヅキは借りてる寮に行ってアオイの着替え持ってきてくれ、ダイチはなんか食うもん、ショウスケはこのまま俺に」
「「了解」」
医務室に着くと空いているベッドにアオイを寝かせる。
「まさかリサが失った気憶所有者だったとはな、こりゃ他にもいるかもな」
「そうだな…そうなると気になるのが…」
俺は一人の顔が浮かぶ。
「ハヅキか?」
「あぁ、あいつだけまだ発現してない…それをそこまで気に病んでるとは思わないが、それでもな」
発現には個人差がある、とは言っても周りでこれだけ発現されちゃ俺なら多少なりこたえる。
ガララッと医務室の戸が開く。
「アオイちゃんの服持ってきたよ」
「ありがと、とりあえず服がボロボロだから着替えさせてあげてくれ俺らは出てるから」
俺とショウスケはカーテンを閉め医務室の外へ出る。すると、廊下から誰かが走ってくる音が響く。
「ショウスケ様〜〜〜!!!!」
飛びかかってきたリサをかわすショウスケ、そしてそのまま転がり壁に激突するリサ。
「いたた…受け止めてくれないなんて酷いですわショウスケ様〜でもそんなところもス・テ・キ!」
「鬱陶しいな!何の用で来たんだよ!第2の借りてる寮は違う棟だろ!」
「まぁそうかカッカなさらずに旦那様」
廊下の奥から黒川ヤマトが現れる。
「旦那様いうなつってんだろ」
「でもほんとに何をしに来たんだリサ」
リサは俺たちから視線を逸らし頬を赤らめる。
「…あの子に…その…なんというか…お礼を言いに来た…のよ」
「え?なに?」
リサのグーパンが俺の腹に命中する。
「一発で聞きなさいよ!」
「…はい」
「姫、あまり動かれるとお体に触ります」
リサは医務室の方を向き話し始める。
「あの子が止めてくれなきゃ私は帝とやり合ってたかもしれない、そうなれば私は確実に気力切れを起こしてた。主人が気力切れになればパートナーとの繋がりが薄くなる、ましてや戦闘中にそれが起これば…暴走を引き起こしかねなかったのよ…」
はぁ〜と深くため息をつくリサ。
「これじゃビースト使い失格ね、これじゃショウスケ様に認めてもらえるはずないわ」
「そ…そうか」
リサは黒川ヤマトを連れ廊下を戻って行く。
「あの子に伝えといて、「ありがとう」って。あと、私より直接攻撃を受けてるからかなり疲労してるはずよ。ちゃんと診てあげなさい、ヒロト」
リサが見えなくなった頃にショウスケが口を開く。
「あいつもいいとこあんな」
「おっショウスケがリサを褒めるとは、明日は雪かな?」
「雪はもう今日降っただろ」
「あー確かに」
「二人とも〜麗未さんにご飯買って来たよ」
「サンキューダイチ」
医務室の扉の小窓から見るとハヅキがカーテンを開けるところだった。
「さて、アオイをねぎらってやろうぜ」
数時間後、アオイは目を覚まし医務室からは5人の談笑がしばしの間聞こえていた…
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ソロバトルもあと2試合、残りの二人がどんな試合を見せるのか乞うご期待!
ではまた次回でお会いしましょう〜




