第二章 第21話「代償術式」
3人が睨み合う、最初に動いたのは加賀タクミだった。
それに合わせ俺も動く、黒川ヤマトへその切っ先を向けていたタクミへ攻撃を仕掛ける、がその妖刀は分かっていたかのように俺の方へ向いた。
「っと!」
俺はすんででかわす、その後の追撃も見切り反撃をしようとした時俺とタクミの足下に術式が展開されるのが見えた。
「黒柱」
その術式から黒い柱が突き出る、俺はかわしきれず手で防ぎながらその柱を受ける。
タクミは難なくよけたようだ。
俺は間を空けず攻撃に移る。
その場に両手を突きイラプションを仕込んだ後そのままヤマトの頭上へ飛び上がる。
「火焔桜・花吹雪!」
俺の背後にいくつもの炎の桜が咲き乱れ、その桜から散った花びらがまるで嵐のようになりヤマトへ襲いかかる。
一瞬ヤマトの目が怪しく光る。
するとヤマトを囲い守るように黒いバリアが現れる。しかし、俺の火焔桜はそのバリアを割る。
「何!?」
さすがに驚いた様子のヤマト、そこへタクミが斬りかかる、が…
「残念、そこは噴火注意だぜ」
あと一歩踏み込めばヤマトに刃が届くというところで俺の仕込んだイラプションをもろにくらうタクミ。
「ぐぁあ!」
すぐ近くで噴き上がった炎にヤマトも咄嗟に顔を覆う、いや顔全体じゃない…確実に目だけを守っている。
「お前、その目…なんかしてやがるな」
「…気づきましたか、さすが旦那様です」
術式、使用時には必ず詠唱が必要となる。詠唱時には周囲に気力で書いた文字が現れたり、手で印を結んだりする。ただそれを省略できる方法がひとつだけある…それが…
「“代償術式”…一般的な詠唱術式と違って体の一部を気力に侵食させそれを媒介として術式を使うやり方。お前のはそれじゃないのか?」
「大正解です」
「てめぇ正気か、じゃあ今ほとんど目が見えてねぇんじゃねぇのか」
「不動院家に仕える者として姫を守るのは当然。そのための力を得たまで…それにこの特殊な眼鏡のお陰で少し目が悪い程度で収まってますよ」
「そこまでする必要あんのかよ」
「どう思われようが知ったこっちゃありません。姫は私の光なのですから」
全く…なんなんだほんとにどいつもこいつも…
「そうかい、でも残念なことにその光には勝利を届けられねぇな、俺がいるからよ」
そう言って地を蹴り駆け出す。
駆け出した瞬間から俺の周りに術式が展開されていく。
こいつ、この一瞬でこれだけの数の術式を…
黒い柱やら稲妻やら色々なトラップを全てかわしていく。
「この術式軍を初見で…!」
「この程度じゃあ俺は止まらねぇな」
ついにヤマトの目の前にたどり着く、そして俺は炎を纏う
右手に大きな炎が咲きヤマトへ向けられる。ヤマトは瞬時にバリアを二重、三重に張るがそんなのは無意味だった
「豪炎・向火葵!」
バリアを破りながらヤマトをぶん殴る。
ヤマトは悲鳴もあげられず壁へ叩きつけられた。
「……」
「ふぅ…これで終わりか?」
その瞬間、背後に気配を感じる。
「っ!!」
振り向いた時にはタクミが妖刀を振り下ろすところだった…
だがその妖刀が俺に届くことはなかった、突如現れた黒い柱によってタクミは吹っ飛ばされた。
俺はまた振り向く。
「お前…」
「ふふ…私が負けてしまったのなら…あなたが一位でなくては困るのでね…」
そう言ってヤマトは倒れ込んだ。
「ったく…」
俺は終わったと思い元来た方へ戻ろうとする、が
「ゲヒャヒャヒャー!俺がまだいるゼェ!」
そのカンに触る声に俺は思わずキレてしまった…
一瞬だけ失った気憶を解放する。
「てめぇはぁ!鉄球のくせに水を指すんじゃねぇ!このボケがぁあ!!!」
俺の方へ飛んで来ていたやつを黄金の炎でぶん殴り地面に叩きつける…叩きつけられたやつの周りにはクレーターができていた…
〈第1試合勝者、第3支部発花ショウスケ〉
俺はその放送を聞いて拳を高く上げる。
「まずは1つ目ぇ!!」
◇◇◇
どや顔で帰ってくるショウスケを迎える。
「どうよ」
「やるじゃんか、最後失った気憶使ったけどな」
「あれはついかっとなってだな…てか勝ったんだからいいんだよ」
ショウスケはあたりを見回す。
「みんなは?」
「みんな準備してるよ、次は俺だから迎えは俺だけ、それよりも…」
俺は聞きたいことがあった。
「お前よく代償術式なんて知ってたな?あれって結構術式の中でもグレーなもので知る機会なんてそうそうないと思うんだが」
ショウスケが一瞬ビクッとなって目をそらす。
「そっそうか?案外みんな知ってるもんだぜ?」
明らかに何かを隠してる…
「…今は言えないって言ってたことと関係あるのか?」
「……少しな…じゃあこれはお前には言っておく。俺には妹がいたんだ」
「妹!?聞いたことないぞ?」
「言ってないからな、…でその妹が死んじまったんだけどどうしても生き返らせたくて調べたことがあるんだ…その…蘇生術を」
蘇生術…禁忌とされてる術の一つだ、それ故にほとんどの文献や情報が王都で管理されている。それを調べたのか…
「で俺が見つけたのが“代償蘇生”、代償術式を使って術者の命を代償に対象を蘇生させる術。まぁそのころの俺にはそんな技術も気力も勇気もなかったんだけどな」
こいつ見た目の割りに重いもの背負ってるんだな…俺はそれを聞いて気が楽になった。こいつは優しい、それは間違いない。
「で、それ以上は聞いちゃいけないんだろ?」
「あぁ…」
「バカ、暗い顔するなよ?俺は今ので確信した、ショウスケはショウスケだ」
「何言ってんだよ」
俺はショウスケの横を通りフィールドへ向かう。
「見てな、俺も一位取ってきてやるから」
「当然だろ?」
俺はショウスケの声を背に受けフィールドに立つ。
「行くぜっ!!」
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ではまた次回でお会いしましょう。




