第二章 第16話「今は」
医務室のベッドで気を失っているアオイとショウスケを3人で囲む。
正直、勝てる相手ではあった、だがショウスケが強力な幻術にかけられてしまってはどうしようもなかった…それに、とショウスケを見る。幻術は解かれているはずだがずっとうなされている。それほど強力だったということか…
「っだぁ!!?」
突然ショウスケが起き上がる。
「大丈夫か?ずいぶんうなされてたが」
「…ハァハァ、どこだここ」
「医務室だよ」
「ってことは、負けたのか…」
すると、アオイも目を覚ます。
「…みんな、ショウスケ…」
その瞬間、ショウスケが飛び起きアオイへ土下座する。
「すまなかった!!俺の心が弱かったせいで!!」
「もういいよ…けど一つだけ聞かせて?あそこまで恨んでる人がいるの?」
ショウスケが珍しく険しい顔を見せる。
「すまん。それは言えない…けどお前たちの誰かじゃない、それは絶対だ」
「そういう問題じゃないよ発花くん、誰とかじゃなくてなんで僕たちに言ってくれないのかってこと」
ショウスケはらしくもなくうつむき見たこともない苦しそうな表情を浮かべる。よく見ると握りしめた拳が震えていた。
「……今は言えない。今は……」
パンッ!パンッ!
俺はこの空気を変えるために大きく2回手を打ち鳴らす。みんなの視線が俺に注がれる。
「この話は終わりっ!ダイチの言いたいことも分かるがみんなだって話したくないことの一つや二つあんだろ?それに”今は“って言ってるんだからいずれ話してくれんだよな?」
「あぁ…」
「じゃあ、もう何も言うことはないな…一回戦負けたんだからせめて三位決定戦ぐらいは勝ってもらわないとな」
俺はハヅキに目で合図を送る。
「あっそうだよ!いい成績残さないと支部長が怖いよ~?」
ハヅキが両手の人差し指を立て頭の横に持っていき角を表現する。
ふふっとアオイが吹き出す。
「じゃあ見てるからな頑張れよ」
俺たち3人は医務室を出て待機席へ戻る。2人の勝利する姿を見るために…
◇◇◇
「大丈夫?」
「当たり前だろ?…さっきはすまなかったな」
またショウスケは謝る。けどその顔はしっかりと前を向いていた
「もういいって言ったでしょ?さて、勝たないとねみんなのために」
「あぁ、俺のほんとの実力を見せてやんないとなぁ」
あたしたちはフィールドへ出る。対峙するのは第4支部のタッグ、ということは決勝に進んだのは第2支部か…これ以上点数を離されるのはまずい…
いや、それよりも今は目の前の相手に集中しないと
「次は頼みますよミチカさん、僕らはもう後がないんですから」
「わかってるって言ってんじゃん!トモヤくんはくどいよ~」
メガネで黒髪のトモヤと呼ばれた男が呆れている一方、ミチカと呼ばれた女は地面につくほど伸びたオレンジ色の髪の毛を翻してこちらへ歩いてくる…女というか女の子といった方がいいような容姿をしているけど
「あんたたちは負けるわ!このミチカ様によってね!」
突然こちらを指差し勝利宣言をするミチカ、その後ろで顔に手を当てているトモヤ。心中お察しする…
「でもさっき負けたんだろ?」
「うるさいわね!あんたたちだって負けてんでしょ!」
「恥ずかしいからやめて」
あたしは呆れた声でショウスケを止める。
あたしたちは今不利な状況にある、敵はあたしたちの能力を知ってる。けどあたしたちは知らない、それがどれだけ不利なことかショウスケは分かってるんだろうか…
◇◇◇
不安だ…発花くんが女の子と絡んでる…それはすなわち…私は第2支部の席を見る。
案の定、リサちゃんが鬼の形相で相手チームの女の子を睨んでいた…
リサちゃんかわいいとは思うんだけどなぁ、でも発花くんは興味ないみたいだし…
〈タッグバトル3位決定戦、始め〉
始めの合図が出される。いやそれは一旦置いておこうと私はリサちゃんから視線を外した。
◇◇◇
始めの合図とともにショウスケは炎を纏い、あたしはリヴァイアを出現させる。さすがに今回は大丈夫だろうとショウスケを見る。
「衝炎!」
「嘘でしょ?」
あたしの思いとは裏腹に、ショウスケは発砲したような音を発し一瞬でトモヤの目の前まで距離を詰める。
あのバカ!と思いながら見ていると思いのほかショウスケの拳がトモヤの顔面を捉えていた…
吹っ飛ぶトモヤとあまりに突然の出来事で驚くミチカ、そして叫ぶショウスケ。
「3位は渡さねぇ!!」
土煙の中トモヤが立ち上がる。
「…君…僕のメガネを割りましたね?それがどれだけやってはいけなかったことか…教えてあげましょう!」
レンズのほとんどないメガネを掛けなおし目を光らせる。トモヤの体の周りにいくつもの術式が浮かび上がっていく。しかしショウスケは臆することなくトモヤへ手をこまねく。
「来いよ…」
こうして3位決定戦が幕を開けた…
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