第六章 第26話「ルリとルカ」
前回のファントムブレイヴ
第2支部に飛ばされたアオイ、そこでリサと支部長来栖カズサ、そして第2隊隊長の金澤ケントと出会う。
アオイが第3支部であったことを話していると、自然の怒り発生のサイレンが鳴り響く。リサとアオイは自然の怒り討伐に飛び出す。
そして、なんと主人様の手下だった金澤ケントは毒入りの点滴を来栖カズサに投与しその場を去るが、別世界の自分が現れ淘汰されてしまう…
あたしは前を行くリサを追いかける。その先を見ると小高い丘の上に何か影が動いている。
「リサぁ!!」
「!?」
こちらを見たリサが立ち止まる。
「あんたなんで!」
「支部長の指示!それにこれもどうせ主様が絡んでる、あたし達も戦いたいの」
「…支部長の指示なら…頼りにするわよ!」
そう言ってまた走り出す。あたしは“頼りにする”の言葉にニヤっとしてその後に着いていく。
「なんか素直になった?」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
ここ最近仲良くなれたことに嬉しさを感じる。
「それよりそろそろ戦闘態勢!結構ヤバそうなのがいるわよ!」
「わかってる…普通の自然の怒りじゃない」
「メデューサちゃん!」
リサの待つ宝石がキラリと光る、するとリサの足下から岩の蛇が地面を割り現れる。
「リヴァイア!ドラゴン・ソウル!」
リヴァイアがあたしの中へ入り、渦を巻く。水の角、水の尻尾が生え、龍の鱗の籠手、胸当て、脛当てが出来上がり、体に装備される。
「何それ!?」
「これが協闘型の真骨頂!先行くよ!」
ドンッと踏み込み丘の上空へ飛び上がる。
「見えた…!」
木々の間で蠢く巨体が2つ。
「ウーパールーパー…?」
そいつらの前に着地する。
体色が赤と青の巨大なウーパールーパー、そいつらがこちらをギョロリと睨む。
すると、赤い方がガパリと口を開いた。
「ルリ、なんか来たよ」
「もう来たんだ、じゃあ…殺しちゃおうねぇ」
青い方がそういった瞬間…
「!?」
その巨体からは想像し難い速度で尻尾が薙ぎ払われる。
あたしはそれを右腕でビタリと受け止めて見せた。
「ルリ、もっと本気でやって」
「ルカ許してよ、この体になるの久しぶりだからさぁ」
「なんなのこいつら…」
次はルカと呼ばれた赤い方が口を開けると気力が口の中に溜まっていく。
「タロースちゃん!山の鉄鎚!」
ルカの頭上で何かがキラリと光ったかと思うと湧き出すように岩が生まれ体を成していく。
空中で生まれた岩のゴーレムは両手を握り締めルカの脳天へ振り下ろした。
「ぐんっ!?」
口は無理矢理閉じられ、気力がルカの口の中で暴発する。
「2人いたんだ」
ルカが煙を上げながら喋る
「生意気〜…特にそこの手懐けられてる“次元獣”が気に入らない〜」
あたしは聞いた事のない言葉に眉を顰める
「次元獣…?」
「自由になりなよ」
青い方…ルリが深く息を吸い込み、次の瞬間絶叫する。
「ギャエアエアエアエアエアエ!!!」
「何これっ!!?」
「ぐぅっ!!?」
とんでもない声量に思わず耳を塞ぐ、空気がビリビリと震え、辺りを駆け巡る。
まるで、体の内側から揺さぶられているような感覚。
体が思い通りに動かせない…!リサの方を見ると、完全に座り込んでしまっていた。
「よいしょっ」
その瞬間、ルカがリサを吹っ飛ばす。
「リサっ!!」
「げほっ!!?」
リサは木に叩きつけられその場にうずくまってしまう、主人を守るべく動くはずのメデューサとタロースはその場で固まってしまっていた。
「まさかっ!」
「お前も終わり」
気付くとルカがあたしに向けて腕を振り下ろしていた。
「ぐっ!!」
両腕でそれを受け止める。
「あら?効いてない?」
不意に絶叫が止んだかと思うと眼前に尻尾が迫っていた。
「やばっ!」
あたしはそれを防ぐことができずまともに攻撃をもらい吹っ飛ばされる。背中で木を1本薙ぎ倒し、そのまま地面を転がる。
「ルリ、あいつに効いてないよ。ちゃんとやって」
「あれで“剥がれない”ってことはもうほとんど魂が同化してる、でも合体は解けそうだったでしょ?」
それを聞き、腕を見ると籠手の龍鱗がポロポロと一部剥がれていた。
なるほど…あれはあたし達の繋がりを剥がすジャミング…だからメデューサ達は剥がされて動けなくなってた…
「もういいよ、さっさと終わらせよう…あれ、いない」
あたしはすでに立ち上がりこいつらの背後を取っていた。飛び上がり足を蹴り上げる。
「龍の滝落とし!!」
あたしはルリを狙い、水を纏ったかかと落としを放った。
「ぐえっ!」
すぐにルカの尻尾が飛んでくる。ルリの背中を踏み台にし身を躱わす。
着地し、すぐに走り始める。
「体が大きいから周りをちょろちょろ走り回ろって魂胆かな?」
「でも、僕ら次元獣は知っての通りある程度なら自在なんだよ」
そういうとやつらの背中から触手が伸びる、そして絶叫。
「ギャエアエアエアエ!!!」
「くっ!?」
あたしの周りを大きな触手が取り囲む。
そのまま呆気なく捕まってしまった。
「あらら、もう捕まっちゃったねぇ」
あたしは空中に上げられ、どんどんと締め付けられていく。
「このまま潰してやる」
「ぁぐ…!!…龍の逆鱗…!!」
鋭い水の鱗を全身から突き出し、触手を切り刻んだ。
触手から抜け出し、改めて2体と対峙する。
あのジャミングをどうにかしないとまともに戦えない…このままじゃ勝てない…!
あたしは、1つ思いついた案を実行することに決める。
「リヴァイア、無茶するよ!」
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ではまた次回でお会いしましょう〜