第六章 第21話「天星眼」
前回のファントムブレイヴ
北斗支部長から星の気力について聞いたダイチ。感じたことのないその力を掴むために“天空眼”の出力を最大まで上げる。天空眼の出力を上げたことで天空眼の本来の力を認識したダイチ、ヤマトと熾烈な戦いの中、ついにそれを掴む
◆◆◆
ー数年前、サブサイド第1支部ー
「なるほど、雷殿支部長は気術に目覚めた時からもう星の気力が見えていたと…」
「あぁ、それが何かは理解していなかったが掴めば力が流れ込んでくる、その力は自分の気力のように扱える、そして他の人間には見えていない、それはすぐに理解した…なぜ俺にしか見えないのか、それは自分が天才だからだと解釈した」
「見えるのは雷殿支部長の気術由来ということで間違いなさそうですね、でも見えているのはほんの一部それも星の気力の太いところから漏れ出た綻び…」
北斗シンは、天才の部分は華麗にスルーする。
「その綻びというのは何だ」
「星の気力の流れはまるで血管のように太い流れ細い流れがあります、そしてその太い流れから溢れるように漏れ出た糸のような流れ…それを僕は綻びと呼んでいます。その綻びはやがて動植物に吸収される、故に気術“天星力”を持たない人にも見える…ということでしょう」
◆◆◆
光の糸を掴んだ瞬間、身体に一瞬燃えるような熱さを感じる。見ると身体が一瞬北斗支部長が纏っていたキラキラした気力に包まれた。
「やっぱりこれが!星の気力!」
ヤマトは即座にこちらへ飛び、刀を振るい無数の斬撃を飛ばす。
この力…使うなら、眼だ…!
感覚的にそう思った僕は天空眼に使っていた気力を星の気力に切り替える。一度目を瞑りカッと開く。
「これは…っ!」
こちらに飛んでくる斬撃、その少し先を斬撃の残像のような影が進む。斬撃はその影を追うように向かってくる。
「もしかして…もしかするのか…」
信じ難い、でもこういうのは漫画なんかで見たことがある…!これは、未来視!…1秒程度、先が視えてる!!
「名付けるなら!……“天星眼”だ!!」
斬撃に向かって突っ込む、視える、確実に躱せる!
そのままヤマトへ迫る。ヤマトが更に刀を振るおうとするのが視える。
ヤマトの周囲から“雷鳴”を放つ、ヤマトは雷鳴を刀で斬り弾いた、僕は金剛杵を携え迫る。
「振り下ろす金剛杵!」
約0.5秒先、ヤマトが声の衝撃破を放つ姿が視えた。僕はぐるんと身体を捻る。
「破ッ!!」
視えた通りヤマトが衝撃破を放つ、だが既に僕は身を躱している、そのまま横から金剛杵を撃ち込んだ。
「ぬっ!?」
それは見事に命中、ヤマトはそのまま吹っ飛んだ。
追撃だ!ヤマトを中心に電気を集める。
「囲み襲う雷鳴!」
ヤマトを覆うように電気を集め、炸裂させる。まだだ、まだ追撃を…!1秒先を視ようとしたが、今まで視えていた影が視えない。
「まさかっ星の気力がもう…!」
使えたのは約10秒…こんな未来視がずっと使えるはずもないか…
僕は辺りを見回す、すると頭上を星の気力が通っているのが見える、それにすぐさま手を伸ばしパシッと掴んだ。
「なんでござるか…?まさか勝利のガッツポーズのつもりじゃないでござろうな?」
体勢を立て直していたヤマトが僕を見て怪訝そうな顔をする。
「んなっ!僕はポーズなんて…」
その時、ハッとする。父さんも技を使う時ポーズを取っていた…あれはもしかしてポーズじゃなくて、星の気力を掴んでいた…?
だとすれば、父さんのあれを見るたび恥ずかしくなっていた僕を恥じ、父さんに謝りたい…!
「そう受け取ってもらって結構、実際に僕が勝つからね!」
「笑止!」
ヤマトが駆け出す。
「天星眼!」
「妙な事をし始めたな!もう、確実にお前を殺しにゆくでごさる!」
地面が槍のようになり僕へ迫ってくる。それらを全て躱し、ヤマトへ狙いを定める。
「囲い襲う…」
その時、1秒後を進むヤマトの影が飛び上がり剣を構える。その場所へ同時に飛ぶ。
ヤマトは飛び上がり刀を構えるが、その瞬間に背後から“韋駄天”を撃ち込む。
「ぐっ!?」
ヤマトを地面に叩きつける。が、すぐさまヤマトは飛び起き刀を構える。
「共振」
ヤマトが刀をトンとつつく、すると刀身が振動し始めた。細かい振動が凄まじい勢いで起こっている、刀身からは刀とは似つかないチェーンソーのような音が鳴り響く。
ヤマトは、地を蹴りこちらに飛び上がってくる。
「金剛杵」
僕は、金剛杵を両腕に携えた。あの刀、相当ヤバそうだな…飛ぶなら、奴の下!
ヤマトの下に飛び、金剛杵を撃ち込もうとした時ヤマトの行動に驚く。なんと目は僕の方を向き、体を捻りこちらに刀を振おうとしていた。
目で追った!?このスピードを?いや…自己治癒能力を増幅できるなら感覚系統も増幅できるはず、それで追えたのか…!
即座に金剛杵を盾にする、そして刀が振るわれた。
「っ!!?」
その振動する刀は止まることなく金剛杵を斬った、そしてそこからさらに衝撃波が発せられ、僕は吹き飛ばされ地面に落ち、転がる。
まずい…もうすぐ星の気力が…!だけど余所見する暇はない、実際にもうヤマトは追い討ちをかけにきている。
「その刀さえ落とすことができればいいんだ」
「刀は侍の命、落とすことなどありはしないでござる」
「やっとチャンスが来た、あれだけ近くで金剛杵をバラバラにできた…1本、お前の手に触れればいい」
バラバラになった金剛杵は数十本の避雷針となり今も数本、ヤマトの体に纏わりついている。
「行け」
纏わりついていた針が1本、意思を持ったようにヤマトの右手に飛んでいき刺さる
「斬り伏せる!」
「雷針」
閃光…バチィッという炸裂音とともにヤマトの右手に焼け焦げるほどの電撃が走る。
「ぐあっ…!」
宙を舞う刀、それを見た瞬間に僕は飛び上がりヤマトの胸ぐらを掴んだ。そしてそのまま空へ飛ぶ。
「放せ!!」
ヤマトは僕の腕にデコピンを撃つ、気力を撃たれた部分に気力を集中させ耐える。
「ぐぅうううっ!!!放すか!!」
「ぐはっ!」
僕はお返しに電撃を浴びせる。
ヤマトを倒すには、回復する間もなく攻撃し続けるしかないという結論に至った僕は、ずっと雷雲を呼び続けていた。
上昇を止め、落下し始める。
「もう逃げ場はない!これで終わりだ!!」
雷雲から激しい音が鳴り始める。
「降り注ぐ雷神!!!」
「破ッ!!」
ヤマトの衝撃波をまともに食らう。
「ぐぐぅうっ!!放すかぁ!!」
カッと天が光る、その瞬間まるで龍のような稲妻が僕たちを穿った。
「が…っ!!」
ヤマトだけがその雷撃を浴びる。その威力にヤマトは一瞬白目を剥いた。
その一撃を皮切りに無数の稲妻が降り注ぐ。
「ぐぁあああああ!!!」
ヤマトは叫びながら体をジタバタさせる、その手や足が当たる度に、衝撃が僕の体を走る。
「ぐぅっ!みっともないぞ!」
「俺は主様にここを任された!それを果たすためならば恥も外聞もないでござる!!」
なんて忠義…あの別世界の月永くんにそこまでできるのか…!その後も容赦無く雷は落ち続ける。不意に強い衝撃が手に走り、思わず手を離してしまう。
「…俺は…任されっ…」
だがそのままヤマトは落下していく。
「ハァ…ハァ…」
回復はもうない…その証拠に僕への衝撃がどんどん弱くなっていた。
僕の…勝ちだ…っ!
ヤマトを追うようにゆっくり降下していく。
◆◆◆
「ところで、雷殿支部長…星の気力を掴む以外に何やらポーズを取っているみたいですが、あれは…?」
「あ?男が技を撃つ時にはポーズを決めるだろうが」
と雷殿リョウは「当たり前だろ」というようにビシッとポーズを決める。
北斗シンは「そうだ、こういう人だった」とその質問をしたことを静かに後悔した…
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ではまた次回でお会いしましょう〜