第六章 第20話「星の気力」
前回のファントムブレイヴ
ヤマトと対峙する、ダイチと北斗シン。北斗シンは確実に勝敗を決するため大技“グランシャリオ”をダイチの協力のもとヤマトに放つ。見事命中したはずだったが、ヤマトは無傷、気力の半分を使った北斗シンの後隙を狙われ、斬られてしまう…
ヤマトは顎をさすりながらこちらを見る。
「しかしお前、俺の攻撃に対応できていたでござるな、あれがなければそいつは仕留めきれたでござる」
対応できた…?いや、反応できただけだ、金剛杵ひとつではガードになっていなかった。
「雷殿ダイチ隊員…よく聞いてくれ、ハァ…1つ伝えておきたいことがある…っ」
「支部長、あまり喋ると傷が…」
僕はヤマトをチラリと見る。
「心配するな、俺は侍…不意打ちのような姑息な真似はしないでござる。殺り合うなら正面からと決めているでござるよ」
北斗支部長は僕にだけ聞こえるように小声で話す。
「よく聞いてくれ…天星力というのは、実はありふれている力なんだ…この星に流れる気力、それは血管のように空に大地に海に流れている…僕はそれを上手く使えるだけにすぎない…ハァ…」
支部長は僕を指差す。
「君や君の父のように天候に干渉できる気術は、少なからず星の気力に触れている…掴めるはずなんだ星の気力を…君の父はできている、君にもできるはずだ…!概念を変えるんだ…!」
「すまない、頼んだ」と支部長は僕の手をグッと握り力無く目を閉じる。
星の気力が僕にも使える…?父さんもできている…?
「話は済んだでござるか?」
「あぁ」
「では…尋常に…勝負!」
ヤマトは刀に手を掛けたかと思うととんでもないスピードでこちらへ迫る。僕は金剛杵を前に出し高圧の電流を流す。刹那、刀と金剛杵がぶつかりバチィッと激しい閃光が走る。
「あまり触れない方が良さそうでござるな」
「炸裂する金剛杵!」
ヤマトはヒラリと飛び上がる。
星の気力の前にこいつがなんでピンピンしてるかを突き止めないと…今の様子を見るにまるでダメージが入っていない、なぜだ…?
「避雷針展開!」
僕は金剛杵を打ち上げ弾けさせる、避雷針を一時空中へばら撒いた。
「雷鳴…!」
針から雷を発生させ背後からヤマトへ放つ。
「破ッ!!」
増幅させた衝撃で雷を掻き消される。その隙にヤマトの近くの針へ飛ぶ。
「韋駄天!」
雷の如き速さで飛び出し、雷を纏った蹴りを放つ。ヤマトは刀でこれを防いだ。
ダメだ、解明しようにも攻撃が当たらない…“概念を変える”その言葉で思いついた最悪のパターン、何か道具や術式を使う素振りもなくヤマトは回復した…ということは気術で己の自然治癒能力を増幅させている可能性がある…
「考え事か?舐められたものでござるな」
ヤマトは僕を弾き返すと、空中でまるで地を蹴るかの如く、空を蹴った。
刀が来る…そう思い構えたが、ヤマトはさらに内側へ踏み込んでくる。トンッと胸を小突かれる、「まずいっ」と何かをなす前に僕は鈍い衝撃と共に吹き飛んだ。
「ぐっ…!」
地面に叩きつけられる前に体勢を直し着地する。
どうする…回復は止められない、星の気力は何のとっかかりもない、どうすれば掴める…?
考えを巡らせる間も無くヤマトが迫る。すんでのところで飛び上がりそれを躱す。
考える暇が無い…もうやるしかない、可能性があるとしたらこの“天空眼”…今まで戦闘時にそこまでリソースを割いていなかった、ただ周囲の動きを視る能力だと思っていたから、だけど今、天空眼一点で気力を使う…!
ヤマトの攻撃を躱しいなしながら天空眼に集中する。
「逃げてばかりでござるな!」
ヤマトが周りを駆け回り始める。すると、地面がまるで槍のように僕に向かって突き出してくる。
「あいつ、増幅した衝撃のベクトルまで操作できるのか…!」
地面の槍が次々と突き出し僕を追う。
「まだだ、もっと出力を!」
その時あることに気付く。
「僕から電気が出てる?」
天空眼は電磁波の動きを見て周囲の動き人の動きを視る能力…それは、そこにある電磁波を見ているだけだと思っていた、だけど違う。天空眼は僕から電磁波を流して視ていた…つまり今までは僕が見ようとした対象に電磁波を放っていた。
「じゃあ、これを全方位に最高出力で出せば…!」
徐々に徐々に僕の電磁波が広がっていく、空気はピリつき時折地面を電気が走る。天空眼の概念が変わった…
「これが天空眼の本来の使い方…」
「ピリピリするでござるな、何をする気だ?」
「分かる…視界の届く全てが僕の射程範囲だ…!」
僕は瞬時にヤマトの目の前に飛ぶ…
「韋駄天!」
「っ!?」
電気を纏った蹴りを放つ、それは見事に命中しヤマトは吹っ飛ぶ。
針が無くてもこの電磁波に乗って飛べる…!
追い討ちをかけようとした時“それ”が視界に入る。
「…?」
細い糸のような光、それがどこからともなく伸びている。
「もしかして…これが…」
それに手を伸ばそうとした時ヤマトが反射するようにこちらへ迫ってくる。
「ようやくこのレベルに来たでござるかっ!」
僕は逆にヤマトへ向かうように駆ける。ヤマトとぶつかる寸前、ダンッと踏み込みヤマトを宙返りで躱わす。そして金剛杵を出し、頭上から潰すように振り下ろす。
「振り下ろす金剛杵っ!!」
ヤマトはこの放電しながら振り下ろした金剛杵に対し、デコピンのように指を弾いた。
まるで爆発が起こったような衝撃が起こる、金剛杵はその衝撃で止められたが、こちらの衝撃で地面が凹み、ヤマトは膝をつく。だけど僕もヤマトの衝撃で上空へ弾き飛ばされた。
「くぅっ…!届かない!」
天空眼にリソースを割き過ぎて攻撃に気力を大きく乗せられない、今のでも結構乗せた方だけど…
でもさっき見えたアレは…と、またあの光の糸がすぐ近くに伸びていた。
今までこんなもの見えたことなんてなかった、確実に天空眼の出力を上げているからだ…
「確証はないけど、もしこれが星の気力なら…!」
僕は手を伸ばし、その光の糸を掴んだ
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ではまた次回でお会いしましょう〜