第六章 第18話「第4支部戦線」
前回のファントムブレイヴ
特異点の遺跡に入れないのは自分が妊娠しているからだと告げられたハヅキ、完全に受け入れる前に犬神がその子の魂を預かると現れる。チップがそれは禁忌ではと問うが、子が神の器と特異点の子だと告げ特例で預かると言うのだった。ハヅキはそれを了承し子どものために特異点の遺跡に入っていく…そして場面は変わり…
ーサブサイド第4支部・ダイチが飛ばされた直後ー
「どうしよう…戻るにも徒歩じゃなぁ」
と第4支部を見上げた。あまり1人で他支部に来ることないから気後れする…
「そんなこと言ってる場合じゃないか…」
その時外に設置されていたスピーカーが鳴る。
〈止まりなさい。…サブサイドの隊員だな、どうやってここに来た。急に現れたようだが〉
「第3支部第4隊、速坂…あっ雷殿ダイチです!隊員証もあります!敵に飛ばされここへ来ました!」
〈……入れ〉
先ほどのオペレーターとは違う声でそう促され、僕は第4支部内へ入った。
「失礼します」
入るや否や奥からツカツカと男性が歩いてくる。
「やぁ、はじめましてだね。第3支部雷殿ダイチ隊員」
その人を見て僕は背筋を伸ばす。
「おはようございます!北斗支部長!」
その人は前支部長龍田ハヤトの後任として新たに第4支部支部長となった北斗シン支部長だった。
「支部長か…やはりまだ慣れないね。とりあえず話を聞こう、こっちへ」
「はい」
北斗シン。支部長になる前は第4支部第1隊隊長で龍田ハヤトの弟子、相当の実力者であり気術は“天星力"という星の力を使う珍しい気術。異名は「星帝」…正直、天星力のことを聞きたすぎてうずうずしている自分がいる。
そして、応接室に案内された。
「君は雷殿支部長の息子だそうだね、だいたい話は聞いてるよ」
「はい、僕も最近知ったんですけど…」
「失礼だが、あの人のような横柄な人でなくて少し安心したよ」
父さん…どこいってもあんまり評判良くないな…
「それで?“敵に飛ばされた”と言ったが第3支部で何が起きた?」
「それが…」
僕は見たままを支部長に伝えた、ただ主様が別世界の月永くんと言うことは伏せて…
「なるほど、今頃第3支部は大変なことになっていそうだな」
「かもしれません」
「ついに最前線支部に来たということはここにも来るかもしれないな…奴らは前線支部への攻撃の傾向から隊員よりも建物を積極的に狙っている、サブサイドの連携機能の停止が優先と取れる。昨日までにある程度の避難をしておいて正解だった」
北斗支部長はスッと立ち上がる。
「とにかく君はすぐに戻った方がいいだろう。車を貸す、運転はできるね」
「はいっありがとうございます!」
その時だった
「「!!」」
「君も気づいたかい」
「はい…」
「おでましか…」
僕と支部長は外へ飛び出す。
「これは…想像以上だな、今待機しているうちの隊員ではまるで歯が立たないぞ」
圧倒的な気力に反応し飛び出して来た僕らは主様の仲間と思しき人影を視界に捉える。
「支部長、待機している隊員は支部の防衛に充てて下さい。代わりに僕が戦います」
「君たちの実力は聞いている、有難いが戻らなくていいのかい?」
「今から戻っても恐らく間に合わない、ならここで確実に目の前の敵を倒す方を選びます」
「フッ…うちの隊員の面目が、などと思ったがそんなことを言ってる場合ではないな…君の力を借りよう、失った気憶の力を見せてくれ」
「はい!」
そしてその人影は躊躇いなくこちらへ歩いてくる。
「ここがサブサイドの最前線支部でござるか…2人飛び出して来たが、たった2人で俺の相手に足りるとでも?」
「止まれ!お前、主様とやらの仲間で間違いないな!」
「その通り!名はヤマト!ここを潰させてもらうでござる!」
ござる…?
ヤマトと名乗ったそいつは腰に刀を携え、1本に束ねた蒼色の髪をたなびかせていた。
「ダイチ隊員、油断は…してないと思うが、僕が奴の能力を伺う、まず君はサポートに回ってくれ」
「了解!」
天星力が見える…!
「悪いが即刻排除だ…“天星剣”」
バッと手を開くと地面からキラキラと気力が北斗支部長の手に集まっていく、それは次の瞬間に光る剣へと形を変える。
北斗支部長が走り出す。見惚れていた僕は慌てて支部長の背中に避雷針をくっ付ける。
「ふむ…」
ヤマトは迫る北斗支部長を見て刀を抜き、動かずその場で刀を振り下ろした。
「!!」
その瞬間、北斗支部長は立ち止まり剣を構えた。
ガギィン!と剣と剣がぶつかったような音が響く。斬撃を飛ばした…でもなんか違和感がある。
ヤマトは次々と刀を振る、北斗支部長は数発凌いだ後斬撃を躱し、またヤマトへ近づいていく。
「ふんっ」
ヤマトは踏み込む、するとヤマトの目の前から地面が捲れ上がり北斗支部長を空へ弾き上げる。
「天星弓!」
剣が弓に変わり1本の矢を放った。その矢は途中で弾け、何十本にもなってヤマトへ降り注ぐ。
「すごい!」
だがヤマトは避ける素振りもせず深呼吸した。
「フーーーッ!!」
上へ向かって息を吐く、それはなんと竜巻を起こし矢を全て巻き込み吹き飛ばした。
だが北斗支部長はその間を縫い、ヤマトの目の前まで迫っていた。持ち替えた天星剣をヤマトへ振り下ろす。ドンッという音と共に衝撃波が走る、ヤマトは刀でガードしたもののその手は震えていた。
「このまま斬り伏せるっ!」
「舐めてもらっては困るでござる…破ッ!!!」
ヤマトが叫んだかと思うと次の瞬間には北斗支部長が吹き飛んでいた。支部長が地面を転がる。
「北斗支部長!!」
僕はすぐに付けておいた避雷針に飛んだ。
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ではまた次回でお会いしましょう〜