第六章 第16話「特異点」
前回のファントムブレイヴ
新しいモード“ルミナス”を発動させるハヅキ。ドラゴンの姿となったチハルとの激しい戦いを繰り広げる。ルミナスでチハルを圧倒していくハヅキは、ついにトドメの一撃をチハルへ放った。落ちていくチハルをハヅキは助け、居場所を作るとチハルに約束する。
そしてここへ来た目的を果たすため、チップはハヅキに語り始める…
「説明するわ、特異点とはなんなのか…」
チップさんが話し始める。
「特異点…それは全世界でも数人にしか発現しない幻の力。それは世界間を自由に行き来する力」
「自由に行き来する力…?」
「通常、世界を渡る時は順番に世界を回っていく必要がある。この世界は犬神様が守護する犬の世界、そして次は亥神様が守護する亥の世界…馴染みのある干支の順番と言えば早いわね」
「えっ?てことはこの世界以外に11個も別の世界があるってこと…?」
「えぇ、そうよ」
とんでもない話だった、つまりこの世界に来ていた世界渡航者はひとつ前の鳥の世界から来てたってこと!?
「今言ったように世界は順番に回って行かなくてはならない、つまり一度その世界を出ると一周しないと元の世界には帰って来られない…でもそのルールを無視できるのが、特異点の力。特異点は好きな世界に直行できる力なの、それも通常の世界渡航よりもかなり少ない力でね」
「奴らが欲しいのはその少ない力で世界を渡れる力?」
「目的にもよるけど恐らくそうでしょうね、世界渡航には相当の力を消費する。一度渡れば数日で回復できるようなレベルでは済まない。過去に別の世界で特異点を巡って戦争が起きたこともあったわ、それも全世界に影響を及ぼすレベルのね」
「そんな力が私に…?それになんでこんなギリギリになの?もっと早く準備できたんじゃ…」
「それはあなたを、ひいてはこの世界を守るためよ。奴らにとって特異点の力は欲しい力であるとともに脅威となる力。唯一、神力に神力以外で対抗できる力なの、つまり早々にあなたが特異点だと分かれば奴らは今よりもっと早く動き出していたわ、だから犬神様はあなたにも月永ヒロトにもあまり接触せず成長を促していた」
「神力に対抗できる力…じゃあ私が今ここに連れて来られたのは…」
「えぇ、そうよあなたは…“月永ヒロトが負けた時の最終手段”」
私はそれを聞いてムッとする。
「月永くんが負けるかもしれないって判断したってこと…?」
「可能性はある、それも大いにね、そう犬神様は判断されたわ」
「…」
「あなたにはすぐにでも遺跡の中に入ってもらうわ、いつあの2人がぶつかるか分からない…あなたが目覚めるのが早ければ早いほど2対1に持ち込んで勝てる可能性を上げられるの」
私は月永くんが負ける可能性があると聞いてモヤっとしていたけど、それを聞いて歩き出した。
「わかった、正直私にそんな力があるとか受け入れられたかって言われたら“はい”とは言えないけど…私だってサブサイドの隊員、生半可な気持ちで入隊した訳じゃない」
「強いわね、正直動揺して話にならないかと思ってたわ」
「動揺してるよ、でも私しかできないならやらなきゃ…!」
2人で遺跡の中へ降りていく。
「ここには前にも来たけど何も起こらなかったよ?」
「それは犬神様がそうしていたからね、それにここはまだ扉の前…あなたが行くのはあの扉の向こうよ」
扉…確かにあの奥の模様、扉みたいだけど
「中に入ったらどうしたらいいの?」
「私も分からないわ、ただ犬神様は入れば分かると…さぁ、あなたが押せば扉は開くはずよ」
「わかった」
私は扉に手を当てグッと力を込める…でも何も起こらない、ただ壁を押してる感覚…
「…動かないけど…」
「…え?」
チップさんも驚いたような声を出す。
「そんなはず…その扉は特異点の素質を持つ魂を持った人間だけが開くことができる扉…あなたは確実に特異点の素質を持ってる…なのになんで…」
「魂…」
チップさんは動揺し何やら思考を巡らせている。
「扉が開かない…それが起こりうる可能性……」
眉をひそめぶつぶつと呟く。
「もしかしてあなたの中に何かがいる…?」
「え?私の中?」
チップさんと顔を見合わせる、お互いにある可能性が頭をよぎり視線が下がる。
「えぇ?だって、え?」
「もしかしてあなた…心当たりある?それなら説明はできる、あなたと別に魂があるなら扉は開かない…!」
「そっそんな!だだだってちゃんとして…」
「ちゃんとしてたってかなり低い可能性でそうなることもある…」
私は本気で動揺する、正直さっきの話よりも…
「あなた妊娠してるのよ!」
「えええええええ!!?!?!!」
ファントムブレイヴを読んでいただきありがとうございます!
このハヅキとチハルの戦い、書いてる途中で気付いたんですがワ◯ピースのカ◯ドウvsル◯ィじゃん!ってなったものの前から構想があったものだし今更書き換えられないのでそのままいきました。一応意識した訳じゃないと言うことだけここに記しておきます。
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ではまた次回でお会いしましょう〜