第六章 第15話「ルミナス」
前回のファントムブレイヴ
ドラゴンとなったチハルと戦うハヅキ、略奪で視界を奪ってもなお正確な位置を把握する感覚と圧倒的な攻撃、防御を前に苦戦を強いられる。だがハヅキにはまだ実戦で使っていない秘策があった、チハルに勝つためハヅキはそのモードを発動させた
「略奪の光姫・モード・ルミナス」
掴んだ光がカッと輝き、私の中へ流れ込む。
両手足首に腕輪のように光輪が現れ、全身が淡く青白く光り、髪がふんわり逆立つ。
「いけるっ…!」私は漲るこの力にチハルに勝てる可能性を感じた。
「さぁ、肉弾戦といこうじゃない!」
「肉弾戦?僕と?笑わせる!ちょっとパワーアップしたくらいで人間がドラゴンと渡り合えるわけない!」
私は落下しながら右手に光を溜める。
チハルは翼をバサリと羽ばたかせこちらへ突進してくる。
「このままぶつかってぶっ飛ばしてやるよ!!」
「ルミナス・インパクト!!」
チハルの鼻先と私の拳がぶつかる、空間を割くように衝撃波が走った。
「くぅー!パンチってこんな痺れるの!?」
「がっ!?」
私は上空へチハルは下へ、お互いが弾き返された。
「バカな!!弾き返された!?」
「フラグ回収早かったね!」
「黙れ!!」
チハルはすぐにこちらを向き直し深く息を吸いこんだ。
「ルミナス・シールド!」
「燃え尽きろぉ!!!」
赤黒い豪炎をまるで火山が噴火したかのような勢いで放つチハル、その豪炎の前にシールドを張った。
シールドはチハルの豪炎を完全にシャットアウトする。
「シールドバッシュ!!」
そのシールドを炎ごとチハルの方へ押し込んだ。
炎では押し返せず、チハルはそのまま頭突きをするようにシールドへ激突し、突き破ろうとしている。
それを見て、右足に光を溜める。私は回転しながら落下していき、ぶつかる直前で右足を振り上げた。
「ルミナス・エッジ!!」
それと同時にチハルがシールドを突き破る。突き破ってきた脳天に莫大な光を纏ったかかと落としを命中させた。
「ゴガァッ!!?」
チハルは目を白黒させながら落下していく。
その時、フッと力が抜ける。
「うっ!?なんて気力消費…」
光はくれどそれは気力じゃないから、気力は補充されないまま一撃一撃でガクンと持っていかれる…
「でも、まだやれる…!」
チハルは墜落する寸前で翼を開き、顔をこちらに向ける。
「ありえない!僕が君に負けることは!!」
また猛スピードで上昇してくる。
「ポイント・ワープ」
チハルの腹の前にワープし、その瞬間に放つ。
「ルミナス・インパクト!」
「ゴハァッ!?!」
命中した、けどチハルはその場で耐え、爪を立てた手で私を襲う。
「くっ!!間に合わない…!」
気力を集め防御の体勢を取り、それを受ける。
「きゃあっ!!」
衝撃。爪の斬撃はほぼ防ぎ浅い傷で済んだけどあまりの衝撃に吹っ飛ばされた。
視界は奪ったまま、疲労からかワープした瞬間私を追い切れてなかった、この一撃も最初のよりは威力はない…!
体にグッと力を込める、モード・ルミナスが少しずつ維持できなくなってきていることが嫌でも分かる。
「やっぱり完璧じゃない、圧倒的な気力消費に追いついてない…」
たぶんまともに攻撃できるのはあと2回が限界…それで決める…!
「ポイントワープ!」
再び上空へ移動する。
チハルはすぐさまこちらへ迫り、豪炎の咆哮を放つ。
「ルミナス・光球!」
迫る豪炎に逃げずに突っ込む、正直あと2回の攻撃で倒せるか分からない…なら2回分の一撃をここで叩き込む…!
「熱っ!」
炎は防いでいるが熱はシャットアウトできずどんどん光球内の温度が上がっている。
「そのまま灼いてやる!!」
炎の火力が上がる。
私は構わず、両手に光を、気力を集めていく。
「これが私の全力!!」
パンッと両手を頭上で合わせる。
「略奪解除!術式・閃光!」
略奪を解除し、チハルに視界を戻す。目は開いたままのチハルは突然光に襲われる。さらに確実に怯ませるため閃光を放つ術式を使った。
「くあっ!!?」
チハルはあまりの眩しさに一瞬目を閉じ顔を背けた。炎が止む。
「しまっ…!」
「ルミナス・グリッター!!!」
光球を解除しながら、巨大な光と気力の塊となった合わせた両手を振り下ろす。まるで彗星のようなその一撃はチハルの顔面に命中した。
「グガッ…!」
チハルは白目を剥いて墜落していく。
◇◇◇
(僕は負けてしまった…のか…体に力が入らない…主様は許してくれるだろうか…許してくれないだろうな…どうしよう…主様にまで見捨てられたら僕は…)
チハルはそんなことを思いながら落下していく。
ドラゴンの体は徐々に剥がれ人の姿に戻っていく。
(あぁ…まずいこのまま落ちたら死ぬなぁ…でもどうせ主様に見捨てられるならここで死んでも…いいかも…)
「光球!」
地面に激突する寸前、チハルを光が包む。
「君はお人好しだなぁ…もう死なせてくれよ…」
「ハァ…ハァ…死なせるわけないでしょ!」
「僕を生かしてどうするの…拷問でもして仲間の情報を吐かせるかい…?」
「そんなことしないし、どうせ吐かないでしょ?」
「じゃあもういいでしょ…主様には顔向けできないし、この世界に居場所はないし、元の世界に帰りたくもない…淘汰も終わったから帰る術がないしね…」
「この世界での居場所なら私が作ってあげるよ」
「…え?」
「チハルの能力ならいくらでも居場所ができるよ、それにあの破壊衝動だってどうにかできると思う」
「は?」
「とにかく行くとこなくなったならこの世界にいればいい、言ったでしょ?私はあなたを否定しない」
「は…はは…でもそれは君たちが主様に勝ったらの話でしょ?無理だね、勝てないよ」
「そんなの…」
ハヅキが言いかけたところでチハルは言う。
「でも…ほんの少しだけ…ほんとにちょっとだけ…期待してもいいかも……」
チハルはそこで気絶してしまった。
◇◇◇
「ハァ…ハァ…」
チハルが気絶した後、チハルに気力制御リングを付け、私は膝をつきゆっくりと呼吸する。
「なんとか…なった…」
「よく頑張ったわ」
スッと横にチップさんが現れる。
「少しだけど気力を分けてあげる」
「ありがとうございます、少し楽になりました…」
「悪いんだけどあまり時間がないの、説明してもいいかしら…“特異点”とはなんなのかを…」
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ではまた次回でお会いしましょう〜