第六章 第5話「第3支部戦線」
前回のファントムブレイヴ
サブサイドを襲う主様の仲間達、その魔の手が最前線へも伸びる。第3支部にはイデアルと王都でエクレールを襲った姿を変えられる人物、そして今まで姿を見せていなかった主様がヒロト達の前に現れる。だがその姿に第4隊の5人は戸惑いを隠せなかった、主様は別世界から来た月永ヒロトだったのだ…
影の刃と光の刃がぶつかり合う。その場で迫り合いをするだけで辺りに衝撃が走る。お互いに剣を弾き一旦距離を取る。
「ショウスケ、ここは任せる」
「当たり前だ」
俺は一言だけ言い残し、目の前に立つ別世界の自分へ刀を向ける。
「言っておくが、神力で来なければ無意味だぞ」
「決まってるだろ、行くぞチョコ…!」
「…チョコと呼ぶな…!」
犬神であるチョコがスゥッと現れ俺の中へ入る。
「神力同士のぶつかり合い、久しぶりだ」
「「神力解放!」」
互いに体内に貯めている神力を体中に巡らせていく。そして、背中から後頭部を大きく囲うように向こうは光の、俺は影の光輪が浮かぶ。
影で造り出した刀を一度手の鞘の中へ納める…
「夜天【神影】…!」
一気にその刀を引き抜く、その黒いはずの刀身は極限まで研ぎ澄まされ光を反射し白く輝く。
奴は空中へ飛び上がった、俺はそれを追い斬りかかり再び刃をぶつける。
影と光の刃が交わりまた凄まじい衝撃が駆ける、かかっていた雲が逃げるように2人から遠のいていった。
「おおおおぉぉぉ!!!」
俺はそこから連撃を放つ、おおよそ刀と刀がぶつかり合うような音ではない音が響いている。
剣を交えて分かる、純粋な剣術なら俺の方が上だ…!
「制限解除フェイズ2・羅刹!」
手の先から影が侵食し額に影の角が生え、髪、肘、踵から影が炎のように噴き出し、たなびく。
奴の刀を弾く。
「っ!!」
一瞬奴が引く、そこを逃さず叩き込む。
「二歩一撃歩法・一影」
軽い一撃、だがそれは奴の刀を持つ左手を的確に狙いガードさせない為の一撃。
「ニ影」
そのまま流れるように右手を弾く一撃。
「三尺秋水!!」
奴の肩から胴体を真っ二つにするように斬り、地面へ向けて叩き落とした。
「追撃行くぞ!」
俺はそのまま空中で構える…
「刹那落とし…!」
目に見えぬほどの速度で急降下する、影の軌跡を残しながら奴へ放つ。ガギィンッ!と甲高い音が響いた。
「何!?」
奴は立ち、俺の刹那落としを光の刀一本で止めていた。
「さすがに強いな、少し舐めてたよ…だが俺には届かないな」
その瞬間、光の刀がブワッと光り俺を吹き飛ばす。
難なく着地し夜天を構え直す。
「神力がまだまだ攻撃に乗ってない、節約か或いは未熟なだけか…どちらにせよ俺に勝つのは無理だ、断言する」
「大した自信だな」
「神力の使い方を教えてやるよ」
奴の刀が眩く光る。
「明星…!」
斬り上げるように刀を振るい、そこからこちらへ向けて激しい斬撃波が発生する。
それを受け止めるが…
「ぐっ!」
俺はそのまま空中へ弾き上げられる。
「閃光・昇竜」
俺へ向け一直線に斬撃が爆発するような光を纏いながら放たれた。なんとか空中で体勢を整える。
「犬神神術・虎狼!!」
夜天に神力を更に纏わせ、その閃光を叩き落とすように放った。
それらは空中でぶつかりとてつもない衝撃を発しながら大爆発を起こす。
俺は吹っ飛ばされながらも無事着地する。
「さすがに純粋な神力のみで放たれる神術には掻き消されたか」
奴を見ながらチョコへ言う。
「神力生成しながら戦うぞ」
(無理を承知だな?)
「当たり前だ、神力が切れる方がまずい」
俺は夜天を構え直し、駆け出した。
◇◇◇
ヒロトと別世界のヒロトが飛んでいき、俺とイデアルと真っ黒なやつはその場に残された。
「さて、残念だが俺はじっとできるタイプじゃねぇんだ。2人同時でもいいかかってこい」
「あらカッコいい2対1でも勝てると思ってるのね、おバカさん」
そういいながらイデアルは俺を指差しなぞるように動かす。その瞬間、目の前がカッと光り爆発する。
「ぐっ!」
「うふふっ」
「てめぇよぉどうせ俺の能力知ってんだろ」
俺は炎を纏った腕で爆炎を振り払う。
「こんなもん効くかよ」
「じゃあこれなら…」
俺は杖を振るイデアルを無視し手を開き2人に向ける。
「螺旋・鳳仙火っ!」
回転する大火球を放つ、同時に俺の体が光りさっきより大きな爆発が起きるが同じように自分の炎で掻き消す。
爆炎の最中、黒いやつが動くのが見えた。そいつはうにょうにょと体の形を変え見慣れた姿になる。
「…!!俺だと!?」
そう、そいつは俺になった。しかもそこから俺と同じ構えをして火球を放つ。火球同士がぶつかり巨大な爆発を起こす。
「なんだてめぇ、また別世界の俺か?んなわけねぇよなぁ背丈まで変わってるじゃねぇか」
「貴様に答える必要はない」
「癇に触るやつだ…!」
「さぁ、これを見てもまだやるつもりかしら?大人しく主様を待った方が賢明だと思うけど」
「黙れ、男に二言はない。かかってこいって言ってんだ」
「どうしてそんなにバカのくせに上から目線なのかしら…!」
イデアルが杖を振る、その瞬間俺の胸の辺りが今までで一番大きく光る。俺はそれを炎で包もうとするが…急に光が小さくなりスーっと地面に落ちる。
「!?」
イデアルは驚くが俺の後ろを見て納得する。
「発花…あの魔女は私が相手する」
「っ!支部長!」
「あら、直々に御指名だなんて光栄だわ」
支部長はイデアルを睨む。
「少々訳アリでな、そっちの姿を変えられるやつも捻り潰したいところだが…お前に任せる」
「しょうがねぇ!譲りますよ!」
俺は勢いよく地面を蹴り俺の姿をしたこいつにドロップキックを放つ。
「てめぇはこっちだ!」
防御はされたものの吹き飛ばすことに成功する。支部長の射程範囲にいるとこっちも危険だし支部長に気を使わせるわけにはいかねぇ。
「本気で我々に勝てると思っているのか」
「当たり前だろ、てめぇらこそ俺らに喧嘩売ったこと後悔すんじゃねぇぞ」
「我らに後悔など、かけらも無い」
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ではまた次回でお会いしましょう〜