第六章 第4話「邂逅」
前回のファントムブレイヴ
1ヶ月以上目を覚ましていなかった神の使いの末っ子、ステラが目覚め予言の邪魔をされたと姉2人に告げる。2人は遂に主様が動いたと対策に動き始める。一方、ヒロトは遂に習得した神力を扱うため犬神と修行の日々を送っていた。そして、ある日の夜サブサイドの前線支部が攻撃され始める…
朝4時頃、サブサイドの一室で俺達第4隊は集まっていた。
「…ねみぃ」
ショウスケが半開きの目で言う。
「待機してるだけってのもキツいね…眠気が…」
ダイチも険しい顔をしながら虚空を見つめる。
「お前ら朝弱かったのか」
「4時は朝じゃねぇだろ…」
「4時は朝じゃないよ…」
2人がハモる。
「それにしてもサブサイドが襲撃されるなんて、私達何か悪いことしたかなぁ」
「だとしてもあたしらにここまでする理由にはならないね」
「前線支部が簡単に潰されてる、半端な奴らじゃねぇよ。2人ともいい加減目覚ましとけよ、他の隊は街に見回りに行ってて支部に戦闘員は俺らしかいないんだ」
その時その場にいる全員がピクリと反応する。
「マジか」
「来やがった」
俺達はすぐに外へ飛び出す。
そこにいた2人の内1人を見た瞬間、アオイが睨み付けながらその名を叫ぶ
「イデアルッ!!」
その名前を聞いたことである疑問が確信に変わる。
「お前がいるってことは、やはりこの件は主様って野郎が動き出したってことだな」
その魔女は鍔の広い三角帽子の奥で不敵に笑う。
「ふふっ…お察しの通り、これから主様がやっとこの世界での目的を果たす時が来たの…残念だけど、もうお終いよ」
もう1人の方は全身黒尽くめで男か女かすらも分からないがこちらをジッと見ている。
「あの時の決着を今着けてやる!」
アオイがイデアルへ向かおうとする。がハヅキがそれを止める。
「アオイちゃん!落ち着いて!」
「なんで止めるの!?」
「上…居る…」
「上?」
ハヅキの言う通り、姿は見えないが上空に圧倒的な気力を感じる。
「あら、流石にあれだけ神々しいオーラを放っていれば気付いちゃうのも無理ないわ。ほら、いらっしゃるわよ」
そう言うと2人はその場で跪く。その瞬間、雲の裂け目から一筋の光と共に俺達の前に1人の男が現れる。
「「「「「…!!!!!」」」」」
俺達全員がその姿に言葉を失う。俺以外の4人が俺をチラリと見る…俺もこの状況を信じ切れずにいた。
「まさか、そういう気術とかじゃねぇよな…」
「当たり前だ」
その声も耳を疑いたくなる。
「“事実は小説より奇なり”と言うがまさに俺達2人の事を表していると思わないか?月永ヒロト」
「俺も丁度そのことわざが頭をよぎったよ…」
「そうだろうな、なにせ俺も……“月永ヒロト”だからな」
そう、そこに現れた主様は…別世界の俺だった…
俺はすぐさま刀を造り出す。
「まぁ落ち着けよ、俺は一度話をしに来た。まずは会話をしようじゃないか」
「話だと?」
「そうだ、ある条件さえ了承してくれれば俺達はこれ以上攻撃することはない」
「今まで散々裏で手を回してただろうが信用できるか」
「ご覧の通りの理由だ、淘汰が完了しないまま姿を晒す訳にはいかない」
俺と俺の会話を4人は困惑しながら聞いている。
「条件を言おう、ズバリお前だ月永ヒロト。お前が俺に淘汰される、それだけだ」
「予想はしてたがそのままか、つまり俺に死ねと」
「人聞きを悪くすればそうだ」
目の前に立つ俺と同じ顔のやつにそれを言われ無性に腹が立つ。
「それはつまり逆も然り、俺がお前を淘汰すれば全部丸く収まるって事だな」
「…この世界だけを見ればな」
俺は気力を高めていく。
「よく考えろ、お前1人の命でもうこの世界から手を引くと言ってるんだ、仲間達に邪魔者は排除するよう伝えてある、時間が経てば経つほど死人が増えるぞ?」
「お前もそう思うなら、さっさと決着つけよう」
「…まぁいい、俺も少し戦いたかったんだ。その前に…」
と指をパチンッと鳴らす、するとハヅキ、アオイ、ダイチに魔法陣のような物が展開される。
「どこかへ行っててくれ」
「!?」
その瞬間3人がパッと消える。
「テメェ!何した!」
「記憶にあった座標へ飛ばしただけだ…確かサブサイドの最前線支部の座標だったかな?用は邪魔だから遠くへ行ってもらっただけだよ」
「俺は邪魔じゃねぇってか?あ?」
残ったショウスケが睨み付けながら言う。
「いや、お前には用がある。そこで待ってろ」
「はぁ!?」
「無事ならそれでいい…」
俺は制限解除フェイズ2“羅刹”を発動させ、フルパワーで斬りかかる。向こうも光の剣を造り出しそれを受ける。刃がぶつかり合った瞬間に地震のような衝撃が辺りを駆け、地面が捲れ上がった。
◇◇◇
サブサイド第2支部、正門前
「きゃっ!!」
あたしはあまり出したことのないような悲鳴を上げてしまう。
「あれ?なんともない…」
そして、目の前の景色が一変している事に気づく。
「ここ、第2支部?」
◇◇◇
サブサイド第4支部、正門前
「あっ!!」
パッと目の前の景色が変わる。
「避雷針を置く間も無かった…!」
別世界の月永くんが言ってたように本当に移動されられただけらしい。
「ここは、第4支部だ…」
◇◇◇
「きゃうっ!!」
景色が揺らいだと思ったら既にどこか別のところへ飛ばされたみたいだった。
「ここ、なんか見たことあるような」
辺りを少し見渡す。そして、気付く。
「…ダズ村のある山の麓だ」
「正解」
後ろで声が聞こえ、慌てて振り返る。そこには犬が1匹。
「え?」
「間違えてないわよ、私が喋ったの。光丘ハヅキちゃん」
「もっもしかして犬神様と何か関係ある方?」
「理解が早くて助かるわ、私はチップ…あなたは飛ばされる時に犬神様がここに飛ぶように行き先を変えたの」
「どうして?」
「到着したら説明するわ、来なさい」
そういってチップさんは山を登っていく、私は困惑しながらもその後を追った。
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ではまた次回でお会いしましょう〜