第六章 プロローグ「放たれた絶望」
ー某所ー
「主様〜ルリもルカも準備できたよ〜」
「あぁ、分かった」
薄暗いその場所で十人ほどの影が蠢く。
その内の一人が主様に近づく。
「主様、ここに近づく人間が3人…」
「分かっている、…まぁいい、ここまで来させてみようじゃないか」
数分後、その3人のために重い扉を開ける。
「「「っ!!」」」
「何を驚く事がある、目的の場所はここだろ?」
扉の先には年老いた男が3人、目を見開いて主様を見る。
「貴様が“主様”か?」
その言葉に一人が飛び出しその老人の首元に刃物を突き付ける。
「うっ!?」
「“貴様”だと?誰に口をきいているのか分かっているのか?」
「ヤマト、引け」
ヤマトと呼ばれたその男は鋭い眼光はそのままに後退する。
「発花イツキの残していた情報は正しかったのか…」
「発花イツキ…やはりあいつが何かしら残していたか。まぁいい俺は気が長いんだ、お前達が何者で何の目的があってここに来たか聞いてやろうじゃないか」
老人の内の一人が話し始める。
「我らは王都七賢者“外向派”のモッツェーニ、ヴァニラ、ミルルクである、我らも外の世界の旅へと同行させていただきたく参った次第…そのためならばなんでもお力添えいたします」
「ほぅ…」
主様の仲間達がざわつく。
「我々の目的は分かってるな?目的が達成されればこの世界は崩壊する。それも承知で王都七賢者ともあろう3人がここへ来た…つまりこの世界を裏切ったと」
外向派の3人が跪く。
「全て承知の上…!」
それを聞いた主様は呆れたような顔をする。
「発花イツキは俺の信条までは残してなかったみたいだな」
「?」
「お前らが外の世界へ行きたい理由はなんだ?大方、知的好奇心なんだろうが…その程度のことでこの世界を裏切った…裏切りという行為は人間の愚かさと醜さを体現したものだと俺は思う、そして一度裏切りを働いた者はどこへ行っても裏切る…加えて俺は裏切りというものに極めて嫌悪感を抱く」
「我らはそのような事は…!」
主様はその言葉には聞く耳を持たずそれを遮るように言い放つ。
「自分達が働いた行いを悔いながらここで人生の幕を閉じるんだな」
「「「!?」」」
その瞬間3人を光が包み、その光の中からドサリドサリと倒れる。
「俺は人殺しじゃない、だから殺しはしない」
すると、3人はもぞもぞと動き出すがその目は虚でまるで産まれたての赤子のように「あうあう」と言葉にもならない言葉を呟き始める。
「今のを防げないということは大した実力者でもなかったか…」
主様はその3人の横を通り過ぎ扉へ向かう。その後ろをルリとルカが浮遊しながら着いて行く。
「あはは!脳が壊されて赤ちゃんみたいになってる!」
「きもーい!あはは!」
「全員に告ぐ…今より我々の邪魔となるものは全て排除対象とする、そして神の器と“特異点”を手に入れ次の世界へと行くぞ」
長らくその場を根城としていた彼らは絶望の足音を踏み鳴らし、ついにこの世界へ放たれた。1人は我が野望のため、その他は主であるその1人のため…
彼らにとってただの通過点にすぎないこの世界は圧倒的な力によって蹂躙される事になるのか…
ファントムブレイヴを読んでいただきありがとうございます!
興味を持っていただけましたらブックマーク等してもらえると励みになります!
今回から最終章の始まりです!
ではまた次回でお会いしましょう〜