第五章 第24話「クソ親父」
前回のファントムブレイヴ
白夜の2人と月永シュウジの戦いは激しさを増し、圧倒的な分解の能力に2人は全力を掛けて次第に月永シュウジを追い詰めていく。もう一息、そう思った時3人の前にヒロトの祖父でありシュウジの父、月永ケンスケが現れた…
俺達と父さんの間に入り、父さん側に立つじいちゃん。
「敵になるんだな、じいちゃん…いつからそうなったんだ」
「決めたのは最近じゃよ、ある事実を知ってからじゃ…もう2人しかいない家族のためにわしは生きる」
そう言いながら何かの機械を取り出した。
「俺のためでもあるっていうのか?それが」
「あぁ、ヒロトのためでもある」
そして、その機械を父さんに向ける。
「なんだそいつは?俺に何かしようとでも?」
「まさか、お前を勝たせるためのものじゃ」
するとその機械がカチッと開く。そこから父さんへ向けて流れる光…
「これは…気力」
「気力の補給じゃ、これでもう倒れかけのあの2人を倒せるじゃろ」
じいちゃんはこちらを見る。だがその時、父さんがじいちゃんの頭を掴んだ。
「足りねえなぁ…」
「何!?」
「どういう風の吹き回しか知らないがな、俺は家族なんていうクソみたいな呪縛を解くために戦ってるんだ…お前も含めてな!」
「っ!!」
父さんがじいちゃんから機械を奪い取り、バラバラに分解する。
「昔はよく廃棄された機械を俺が分解してお前が組み立ててたなぁ…今じゃ逆か」
「シュウジ…!」
「俺を助けるんならお前の気力も寄越せ、このまま分解されたくなきゃな」
「ぐっ!」
「じいちゃん!」
俺は見ていられず刀を造形し構える、だがその瞬間にはじいちゃんは俯き父さんへ気力を送っていた。
そして父さんはじいちゃんをそのまま投げ捨てた。
「少ないが、ガキ2人なら十分だ」
父さんは再びオーラを纏う。
「ショウスケ」
「ヒロト」
俺達は同時に呼び合う。
「分かってるな…?俺はもう限界だ…」
ショウスケが少し俯きながら言う。
「あぁ、ここからは俺1人でやる」
「バカ言え、俺も戦う」
「バカはどっちだ」
「俺の気力を渡す、かつリンクも絶やさねぇ…それでケリつけて来い」
「気力も渡して、リンクも絶やさないって?無理だろうが」
「…2分だ、たった2分だが絶対に絶やさない…!」
ショウスケの目は本気だった。
「…分かった、信じる」
「頼んだぞ」
俺とショウスケはガシッと手を握り合う。ショウスケの残り少ない気力が俺に流れ込む、そしてショウスケの白炎もまだ使える。
ショウスケはそのままバタリと倒れる。
「…1人なら…アレ、使えんだろ…?」
「あぁ、2分間全力だ…!」
父さんはこちらへ歩いてくる。
「なんだ、勝手に1人沈んじまったか」
「何言ってんだ、俺達は“白夜”…沈まねぇよ…!!」
俺は一気に気力を解放する。
「制限解除・フェイズ3“毘沙門”・モード白夜!!」
腕、脚を濃い影が覆い全身を影が侵食する。額からは2本のツノが現れ、持っていた夜天がまるで刀の形を拒むように変形した。それを手でなぞり真っ直ぐに整える。
「制御できている状態の毘沙門を見せてやるよ…“阿修羅・白夜の型”」
背面に影籠手を2対造形し、2つに刀を2つに白炎を纏わせる。
「何をしても結局は気術、分解可能なんだよ」
そんな言葉は気にせず、一瞬で距離を詰める。
「っ!」
父さんはその速さに驚く。
白炎を纏わせた影籠手を突き出し爆発を起こす。
「ぐっ!」
そのまま、刀を持った影籠手2本を同時に振り下ろした。
刀身は分解されたがその衝撃は凄まじく、地面に斬撃痕ができる。
父さんはそれを耐え、こちらを睨み上げるが俺は隙も与えず腹に蹴りを放った。
「ごぉっ!?」
父さんは吹っ飛ぶが瞬間俺の脚にも鈍い痛みが走る。
「ぐっ…」
「分解してもこの威力か…!」
「さすがに纏ってる影は分解されたけど、体内まで侵食してる影はその薄いオーラじゃあ分解できないみたいだな!」
「体内だと?」
「これは脳のリミットを外す技、フェイズ3はほぼ全てのリミットを外してる、体内まで補強しないと俺の体はボロボロになるんだよ」
だが、外装を分解されてしまうなら気力もそうだが体がキツイな…
3対の腕を構え、父さんへ向かい地を蹴る。
「真・白鬼夜行!!」
父さんは防御の姿勢は取らず、腕を振り上げる。
俺は構わず、無数の斬撃と白炎の爆撃を繰り出した。
「ぐおぉ!!」
最後の一太刀で父さんの横をすり抜けようとした瞬間、父さんは腕を振り下ろす。その拳は後頭部に命中し俺は地面に叩きつけられる。
「ごはっ!!?」
そのまま父さんは俺を掴み上げ投げ飛ばした。
俺は転がりながら立ち上がり立て直す、万全なら絶対に避けられた、あの距離でも毘沙門なら反応できたのに…俺もギリギリだということを改めて自覚する。
「阿修羅解除、夜天・一本集中!」
夜天に気力を集中させる、刀身が一層輝きを増す。
俺はまた距離を詰める。父さんの目の前まで行き、地面に拳を放つ。
「噴火・エッジ!」
次の瞬間、父さんの足元から火柱と影の剣が突き出す。父さんはそれらを薙ぎ払い、俺のいた場所を見るがそこにもう俺はいない。
俺は影を揺らめかせながら空を背に父さんを見下ろす。
「!!」
父さんはそれに気付くがその時にはもう影で造った足場を蹴っていた。
「花焔・刹那落とし…!!」
影と炎の花弁が俺の動いた軌跡を映し出す。俺は地面にしゃがんだような状態で、刀身が分解され半分しかない夜天を手の鞘に収める、その瞬間父さんを斬撃と炎の衝撃が襲う。
「がっ!!?」
「ハァ…ハァ…ハァ…」
俺は肩を弾ませながら父さんの方を振り向く。
父さんはまだ、立っていた。父さんもまた俺の方へ振り向く。
2人ともギリギリ…父さんは全身に纏っていたオーラが無くなり、腕に薄っすらと気力を纏っているだけに見える。俺も毘沙門の影響で全身を鈍痛が襲い、制限解除を保てる気力は残っていなかった。
お互い、次の攻撃が最後だと悟っていた。俺は残りの気力を右の拳に集める、ショウスケに貰った気力は使い切りリンクももう切れかけていた。
「こんなガキに…ここまでしてやられるとはな…だがお前を殺すという目的は必ず果たす…呪縛を解いてやる…」
「そうか…なら俺も迷う事なくぶん殴れるよ…父さん」
お互いに歩き出し、徐々に駆け足になっていく。
「「おおおおおぉぉぉ!!!!」」
お互いが拳を振りかぶり、当然そのまま拳が放たれるかと思われたが…父さんは先に足を前に出した。
「ぐっ!!?」
その蹴りをなんとか受け止めたが、父さんは容赦無くその拳を俺の左頬に放った。
「がぐっ!!」
「これは殺し合いだ!!正面から殴り合う訳ねぇだろうが!」
父さんはまた拳を振り上げる、俺は揺れる視界と飛びそうになる意識を歯を食いしばり無理矢理耐え足を踏ん張り、拳が振り下ろされる前に父さんの顎へ全力のアッパーを放った。
「最後までクズだな!こんのクソ親父ぃ!!!」
「ぐぉがっ!!!?」
父さんは仰け反り、天を仰いだままゆっくりと倒れる。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ……!」
沈黙…父さんは起き上がることはなく、意識を失っているようだった…
俺は膝をつき、両手をついてぐっと目を閉じる…目を開けると何故か目から流れたものが地面を濡らしていた…
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ではまた次回でお会いしましょう〜