第五章 第21話「月永シュウジvs影炎」
前回のファントムブレイヴ
殺意に駆られたまま父の元へ辿り着くヒロト。凄まじい猛攻を畳み掛けるがそれも全て分解されてしまうが、拉致されたホダカちゃんは助け出す。
ショウスケはヒロトを追いかけ、ヒロトを正気に戻すため1年前の借りを返すため拳をヒロトへ振るう。
月永シュウジはヒロトが息子だと分かると「俄然殺したくなった」と言うのだった…
俄然俺を殺したくなった、父さんはそう言った。
「しかし、よく生きてたもんだあの嵐の中外に放り投げたのに」
「なんで俺を殺したい」
「そりゃあ、お前の母親…あの女を思い出すからだ。あのクソ女をな」
「てめぇも相当クソだけどなっ」
ショウスケが吐き捨てる。
「過去何があったのか知りたいんだ、なんで母さんを殺した」
「…せっかく息子と再会したんだ、いいだろう話してやる。過去を告白し息子と共に未練を全て消す事で俺もまた一歩自由になれるだろうからな」
◆◆◆
今から約20年前
月永シュウジと妻、月永リホは結婚当初から仲は良くなかった。ヒロトが産まれてからも頻繁に些細な事で喧嘩をし、その度に月永シュウジは家に帰らず女と遊び歩いていた。
ある時から何か吹っ切れたのかはたまたただ魔が刺したのか、月永リホも祖父と祖母にヒロトを預け遊び歩くようになった。
そして、事件の日。2人はお互いが遊び歩いている事に対しての大喧嘩を繰り広げていた。
「もういい!!もう無理!今すぐ私の前から消えて!」
「あぁ俺もそうしたかったところだ!」
お互いが睨み合う。
「何してるのさっさと行って」
「去るのはお前だリホ、外は嵐だ俺は家に残る」
「はぁ?出て行くのはあんたよ!」
とリホは台所の棚を開け包丁を取り出す。
「じゃなきゃ殺す」
「意味のない事を」
シュウジの中でリホのその行動を見た瞬間何かが切れた。
「分かった、消えるよ」
ドッ…
「かっ…!!」
リホの腹にシュウジの渾身の一撃…
衝撃で体が浮き、くの字に曲がる。壁に叩きつけられたリホはピクピクと痙攣する。
「これでお前の視界から消えるな」
シュウジはリホの顔を踏みつける。
「5…4…3…2…1…」
「…ヒ…ロト…」
リホは最期にヒロトの名前を呼び意識を失う。
「はぁ…こうなっちまったらここにはいれねぇな」
シュウジは泣いているヒロトを一瞥すると、ヒロトの服を掴みまるで物のように持ち上げる。
「もう1歳か、いやまだだったかな…」
シュウジはヒロトを掴んだまま外へ出る。そして林の方へと歩いていった。林の真ん中あたりまで来るとヒロトをドサっと落とした。
そして、自分を見つめるヒロトを一瞥した後その場を去った…
◆◆◆
「あの時の感情なんざ憶えてないが、一応息子だからな自分の手で殺すのは嫌だったのかもなぁ」
「やっぱクソみてぇな野郎だ」
ショウスケが眉をしかめる。
「どうだ?知りたかったことは知れたか?」
「いや、その状況…俺はどうやって生き残ったんだ?」
「俺が知るか。話は終わりだ、俺にはこれ以上はどうでもいい今お前を殺して俺は完全に自由になる」
父さんから気力が溢れる。
「ヒロト…来るぞ」
「あぁ、考えるのはぶっ飛ばしてからだな」
「だけど、どう攻める?さっきのヒロトの攻撃すら分解するんだぞ」
「現状分かってる倒し方が気力切れのみ…お互いのやってみたいことを試して弱点か突破口を探すしかねぇ」
俺は影をショウスケは炎をお互いに纏わせる。
「最初からいくぞヒロト」
「あぁ、連携で畳み掛ける」
「「リンク!!」」
「黒炎!」「緋炎!」
俺の刀に赤い炎が迸り、ショウスケの炎は黒く染まる。
「「モード“影炎”!!」」
「久々な感じするぜ」
「実際久々だからな」
俺達は同時に駆け出す。
「リンクか、まぁだからなんだって話だな」
父さんの右側から刀を振り、左側からショウスケが拳を放つ。だが、緋炎の刀身の先は分解され無くなり、ショウスケの拳に纏っていた炎も消え、生身の拳が気力を纏いガードされた腕に当たる。
俺達は半歩距離を取り即座に刀を修復、炎を纏い直す。そしてそこから同じように2人で連撃の嵐をぶつける。
「「おおおおおおぉぉ!!」」
父さんは確かにあまり身動きは取れないでいたが、ダメージはほぼゼロ。俺達の気力が虚しく消費されていく。
父さんが動く、俺を腕を振るい払い除けショウスケの腕を掴んだ。
「ぐっ!」
「っ!ショウスケ!」
俺はすぐさま間合いを詰め刀を振りかぶる、父さんが腕をこちらに伸ばすが刀を振るフリをしてその腕を躱し、ショウスケを蹴る。
「ぐぅっ!!」
その衝撃で掴まれた腕は外れ、一度距離を取る。
「もうちょいやさしく蹴れよ!」
「外れなかったらどうすんだ!」
ショウスケはお腹をさすりながら起き上がる。
「だが、今のでいくつか分かったな」
「あぁ、あれだけの連撃も全て分解…同時多方向からの攻撃も分解…ほんとに気力切れしかないのかもな」
「あともうひとつ」
「もうひとつ?」
「今俺が掴まれた時間は2秒程度だったが、その間体内の気力は分解されてない」
「…なるほど、父さんの気術の5秒触れられると体内の気力を分解されるっていうのは徐々にではなく」
「恐らく5秒後に一気にだ」
触れていられるのは最大5秒…それにまだ気術の全貌が見えたわけじゃない
「ヒロト…やってみないか?俺達の全力」
「全力?」
「向こうも失った気憶持ちなんだ俺らも全力と全力のリンク…試してみようぜ」
「なるほど…やったことなかったな失った気憶同士のリンク」
「いくぜ?」
お互いに気力を解放する。
「「失った気憶解放!!」」
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