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ファントムブレイヴ 〜影と光の世界渡航者〜  作者: 月永ヒロト
第五章「大罪人の逆襲」
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第五章 第19話「開いた扉」

前回のファントムブレイヴ

鳥男、鷲見コウダイと対峙する虎ノ門イズミ。術式で終始圧倒し、最後はハヅキの返還の矢でまとめて2人を捕らえる。その後、ショウスケが森へ入り郷田隊長達の様子を見に行くと折原邸は潰され、郷田隊長と西園寺ケイウンが倒れていた。そしてショウスケは「月永ヒロトを止めろ」と郷田隊長から告げられた…


ショウスケが郷田隊長の下へたどり着く数分前、ヒロトは潰された家の横で折原家の表札を見つける。


「まさか…っ!!」


それを拾おうとした時、視界の端に人の足が見える。俺はすぐさま駆け寄った。そこに倒れていたのは郷田隊長だった。


「隊長!大丈夫ですか!!」


心臓は動いてる、俺は気力を隊長へ流す。その瞬間、腕を引き剥がすように掴まれる。


「えっ!」


「月永…西園寺を…」


郷田隊長は震える手で指をさす。その方向には西園寺さんが木にもたれかかり俯いていた。


「っ!西園寺さん!」


俺は西園寺さんの呼吸と心臓の鼓動を確認する。だが、共に動きがない。


「西園寺さん!!聞こえますか!?」


俺は呼びかけながら気力を流す。だが、流し込んでいるはずの気力が溢れる。


「体が気力を必要としてない……」


俺はその事実が信じられなかった。何度も気力を流し込もうとするが、西園寺さんの体には一切の気力が入らなかった。


「なんで…そんな…」


気力を必要としていない、それは生命活動が完全にストップしているという事…すなわち……死

体内に気力が無ければいくら心臓を動かしたとしても息は戻らない。


「間に…合わなかったのか…すまない…俺がいながら…」


郷田隊長が弱々しく呟く。


「何があったんですか…」


「月永シュウジだ…奴は尋常ではない…」


◆◆◆


郷田コウイチロウは何者かの気配を察知し、発花ショウスケのインカムに連絡を入れていた。


「郷田だ。折原邸付近で気配を感知、西園寺と対応する」


その最中、折原邸から叫び声が聞こえる。すぐさま西園寺ケイウンが折原邸へ向かう。


「ん?…何!?」


直後、折原邸上空に巨大な足が突如現れた。

郷田隊長はインカムの通信を切り、飛び上がる。気術を発動し大きな気力の手でその足を止める。


「どこから現れた!」


「隊長!子供が連れ去られた!」


「何!?」


西園寺が慌てて扉から出てくる。それとほぼ同時に男が1人郷田隊長に迫る。


「させるものか!」


西園寺が血で大鎌を造り出し、同じくその男へ向け飛び上がった。

西園寺が大鎌を振りかぶり、郷田隊長は気力を厚くし防御の姿勢を取る。だが、それらは全て消える…いや分解される。


「「何!!?」」


大鎌はパシャッと血に戻り地面へ落下、郷田隊長の気力の手も纏っていた気力も消え、巨大な足が振り下ろされる。


ズダァアン!!!


その足は郷田隊長、西園寺諸共家を踏み潰した。

なんとか体勢を変えて足に弾かれる形になった2人は木に叩きつけられる。


「「ぐっうっ…」」


2人が顔を上げるとそこにはもう巨大な足は無く、無惨にも潰された折原邸だけが残っていた。


「あ…あぁ…そんなっ!」


2人の前に男が降り立つ。


「お前が!」

「月永シュウジ!」


「その通りだ、サブサイドの犬共」


月永シュウジの背後で突如赤子を抱いた男が現れる。


「透明化か…」


西園寺が一瞬にして鎌を造り月永シュウジへ振り下ろすがまたも鎌はただの血に戻る。

そして、西園寺の首を月永シュウジが掴んだ。


「っ!離すんだ!ウチの隊員に触れるな!!」


郷田隊長が凄まじい量の気力を放出し月永シュウジを睨みつけ、拳を放つ。だが、西園寺を郷田隊長の方へ向け盾にする。


「ぐっ!外道がっ!!」


やがて、西園寺の腕がだらんと垂れる。


「西園寺!!!」


月永シュウジは西園寺を投げ捨てた。


「知ってるだろ?5秒で無気力状態にできると」


そして、月永シュウジは郷田隊長へ手を伸ばした…


◆◆◆


「一方的だった…こちらの攻撃は何も通らず…ただ一方的に気術も気力も分解によって掻き消された…パワーには自信があった…だが気力で防御されては気力無しのパワーでは押し勝てなかった…西園寺は気術に自身の血を使う…恐らくそれが原因で…間に合わなかった…」


俺は震えるほど拳を握り締める。そして、ハッとする。


「待て…!じゃあやっぱり!」


俺は振り返り折原邸を見る。


「折原さん!レンジ!」


2人を呼ぶ、だが木が揺れる音だけが森に流れる。


「レンジには俺の影で造った剣を渡した…場所は分かる…」


俺はその剣の位置へゆっくりと瓦礫を崩さぬよう近づく。そしてそれは目に飛び込んで来た。

小さな手…手だけが瓦礫の隙間から見える…そしてその手は剣を握りしめていた。俺はその剣を影に戻し回収する。


「戦おうとしたんだな…レンジ」


剣が無くなった事で、少し瓦礫が動く。すると体があるであろう隙間から赤い“それ”が流れてくる。


ドクンッと俺の中で何かが動いた気がした…


【そこから少しの間の記憶が無い】


◇◇◇


「月永…?」


折原邸の残骸の中で月永が下を向いたまま動かない。何を見たのか、ある程度は予想がついた。


「月永、一度みんなと集まるぞ…奴に勝つには…作戦が必要だ…」


月永に呼びかけるが、こちらを見ようともせず聞こえてもいないようだった。

恐らく話さない方がいいのだろうとそう思ったが、状況が状況故にそうもいかなかった。


「月永、一度整理がいるはずだ…そして、支部長や国の支援と共に奴を討とう」


再び呼びかける、だが月永から返ってきたのは、凄まじい殺気。徐々に影の気力が溢れ出す。


「殺す」


そう呟いた瞬間、黒い気力が月永を包む。月永はゆっくりと瓦礫から降り、その手に刀を造り出した。


制限解除リミットブレイク・フェイズ3“毘沙門びしゃもん”…」


その瞬間、圧倒的な気力量に爆発のような衝撃が起こりその衝撃が風を生み森を駆け抜ける。

月永のその姿は正に“鬼”であった。腕と膝から下には影の鎧を纏い、額から2対の黒い角が生え、目のあたりまでまるでリヒテンベルク図形のように影が侵食している。体からは黒い気力が溢れ揺らめいていた。


「月永…」


名前を呼ぶ、だがまばたきをして目を開けた時にはもうそこに月永はいなかった。


そして、発花ショウスケが到着する。


◇◇◇


ー某所ー


「ふっ…」


ニヤリと笑う影。

それに気付いたルカが聞く。


「主様?どうかしたの?」


「…扉が開いた」


◇◇◇


ーアグリシオン上空ー


「さぁ小僧、課題の始まりだ」


犬神が地上を見下ろす。


「感情が大きく揺さぶられ、精神の扉が開いた。どうそれを制御する?」



ファントムブレイヴを読んでいただきありがとうございます!

興味を持っていただけましたらブックマーク等してもらえると励みになります!

ではまた次回でお会いしましょう〜

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