第五章 第18話「虎vs鳥」
前回のファントムブレイヴ
体を巨大化できる男と戦うショウスケ、新しく習得した回転の力を利用した技で圧倒する。戦いの中、郷田隊長が危機的状況だということを知る。
ハヅキは屈折の術式を使う男と対峙する、悉く光の気術を屈折させられ、苦戦を強いられたかに思われたが…
光丘ハヅキが黒ずくめの男と対峙する横で鳥男と対峙する虎ノ門イズミ。
「変身系の気術ね、鳥男の鷲見コウダイ。あんたの事は知ってる…うちの住んでた地区で好き放題してた奴や」
「全く勝手な男だ、まぁ獲物がいるならばそれでいい」
「獲物…?」
「お前の事だ、小娘。切り裂いてただの肉塊にしてやろう」
「ふふっ…鳥風情が何言うとるんや、獲物はあんたや」
「強がるな小娘、空を支配できる私に勝てる余地は無い」
「見せな分からんかぁ?」
すると、イズミの体から気力でできた猫のような尻尾と耳、そして手の甲から巨大な爪が生え、徐々に特有の縞模様が体に現れる。
「鳥如きが“虎”に勝てるんかって言うてんねん」
「ほう…鳥が虎に勝てるかは知らないが、変身系の気術ではない限りお前は人間だ」
男はバサッと大きな翼を広げ飛ぶ。
「お前は飛べない、ただ私の一方的な殺戮だ」
「術式・迅速、壁」
イズミは術式で小さな壁をいくつも空中に出現させる。そして、それを踏み台にして空へ駆け上がり次の瞬間には鷲見コウダイの上を取っていた。
「一方的な何やて?」
「何!?」
イズミが爪を振り下ろすがコウダイはギリギリで身を躱す。
「術式…」
「そうや、術式解除の気術士、それすなわち術式のプロや。初歩的な術式でここまでできるんやで?」
イズミはまた壁の術式を使いコウダイを追う。そして彼に近づき術式を使用する。
「標準」
コウダイの体に陣が描かれる。
「さぁ1段階上のレベルの術式や」
イズミが気弾をいくつか作り出す。
「鋭敏、回転」
気弾が細長くなり回転し始める。
「加速!」
そして、それらがまるで銃で放たれたようにコウダイへ向け発射される。気弾はコウダイを追尾し始めた。
「空にいるのがあだになったなぁ、標準の追尾能力はそなに高くない。やから地上なら簡単に地面に激突させられるんやけど…空なら追いかけ放題や」
その時、イズミのインカムに連絡が入る。
〈イズミさん、私が合図したらその鳥男から離れてください〉
最中、イズミの視界にハヅキの返還の矢が明後日の方向へ飛んでいくのが入った。
「了解。上手くやりや」
そこで通信が切れる。
「向こうは少し相性悪いみたいやなぁ」
気弾に追われているコウダイがグンッと方向を変える。
「ならばこんなもの撃ち落とせばいい」
とコウダイは迫る気弾を足で全て撃ち落とす。
「でもまぁ、うちのことも見とかなあかんわなぁ」
「っ!!」
コウダイの真上を取ったイズミ、爪に気力を込める。
「タイガークロー!」
「ぐあああ!!」
コウダイの背中をイズミの爪が切り裂く、そしてそのまま地面へ落下し叩きつけられる。
「術式・拘束」
よろよろと立ち上がろうとするコウダイの周りに陣が描かれそこから気力の鎖が伸び、コウダイの翼に巻きつく。
「ちょっとだけ大人しくしときや」
イズミは壁の術式を使って空から降りてくる。その時、またインカムに連絡が入る。
〈イズミさん!!〉
その連絡と同時にイズミはコウダイから距離を取る。その瞬間、凄まじい速さで地を這うように飛んで来た返還の矢がコウダイに命中しそのまま連れ去る。
「すごっ!速すぎひん?」
矢が飛んでいった方向を見るとすでにハヅキと戦っていた男に命中し2人を地面に叩きつけていた。
◇◇◇
地面に叩きつけられた2人へ私は駆け寄る。
「やっぱり、あなたの屈折の効果範囲は自分から半径30〜50cmぐらいしかなかったみたいね」
「ぐ…あ…」
だが、激突と叩きつけたときのダメージはあっても複屈折のダメージは無くそれは全て屈折させられていた。
「一緒に動いてたならもっと連携取るべきだったね」
と私は気力制御リングを取り出し2人に取り付けた。
◇◇◇
俺がデカくなる気術のこいつを木に縛り付けているとハヅキとイズミさんがもう2人を引きずりながら現れる。
「無事だったか」
「当然やろ?」
「発花くんも大丈夫そうだね」
「あぁ、俺はこのまま森へ入って郷田隊長の安否確認に行く。ここを頼んでいいか」
「うん」
「頼んだで」
「あぁ」
その場を2人に預け俺は急ぎ森へ入る、家のある位置はそう遠くないすぐ見つかるはず…とその時、少しだが風が駆け抜ける。
「風…方向がおかしい、森の中だと風の方向が変わることなんてあるのか?」
俺は何かを感じ立ち止まる、瞬間…背筋に悪寒が走る。
「なんだ、この感じ…どこかで…殺気?」
俺は再び駆ける。すると木々が折れ、家だったであろう瓦礫のあるエリアにたどり着く。
「やっぱり、あいつが潰したって言ってたのはここの家か」
その時、木陰で何かが動く。
「誰だ」
「発…花か…」
その声は郷田隊長だった。
「っ!大丈夫か!」
駆け寄ると郷田隊長が肩で息をしながら横たわっていた。
そして、視界の隅にも人影が映る。そちらを見ると西園寺さんが木にもたれかかり俯いていた。
「何があった!西園寺さんは無事なのか!?」
「発花…すまない…西園寺はおそらく……」
「なっ…!!!」
「発花…俺と…西園寺の事は…誰かに連絡して来てもらう…お前はすぐにやらねばならないことがある…!」
「何言ってんだ、放っていけるか!」
「いいや、ダメだ…!お前にしか出来ないことだ…!」
郷田隊長が俺の胸元をグッと掴む。
「月永を止めろ…!!」
「月永シュウジか?今はそれどこr」
郷田隊長が俺が言い切る前に否定する。
「違う!月永ヒロトをだ…!」
「え…?ヒロトを?」
「今のあいつは人を殺すかもしれない…!」
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ではまた次回でお会いしましょう〜