第五章 第17話「回転と屈折」
前回のファントムブレイヴ
ショウスケの前に現れる5人の脱獄者、ショウスケはその中にヒロトの父親のシュウジを見つける。だが、他の4人に阻まれ逃げられてしまう。ハヅキとイズミも合流し脱獄者達と対峙する。その頃ヒロトは瓦礫となった折原家を見つけていた。
「デカくなるだけだと思わないように…だと?」
俺は白炎を右拳に纏う。
「んなもん知るか、どうでもいいんだよ」
ダンッと地を蹴って飛び上がり溝落ち向けて拳を振り切る。
「ぐぅん…確かに重い拳だが巨人となった俺には痒い程度だな」
「そうか…ならお前でいろいろ試すか」
落下しながら睨み上げるが、その時にはもう奴の足の裏が俺の頭上に上がっていた。
「タフなんだろ?じゃあ簡単にやられんなよ」
俺は右手の炎を渦を巻くように回転させ始める。
「ヒロトを見てまだ俺は成長しなきゃいけないって思い知ったよ、だから苦手な勉強をしたんだ。この炎のパワー、これ以上のパワーをどうやったら発揮できるのか…案外簡単だった勉強も大事なんだな」
俺は着地すると迫る巨大な足を見上げる。
「それは回転、回転による運動エネルギー…この技は今初お披露目だ、光栄に思うんだな!」
限界まで炎を回転させていく、まるで炎がミサイルのような形を成す。
「白炎・連翹…!」
奴の足裏へ拳を突き上げ、放つ。ドンッという衝撃の後、奴の足は押し返され、まるでI字バランスのように天高く上がる。
当然奴はバランスを崩しそのまま倒れていく、がパッとその巨体は消え元の大きさに戻った奴が落下してくる。
「ぐあああああ!!」
足を押さえながら地面を転がる。
「まだ応用技とかさぁ試したいんだ、またデカくなってくれよ」
「ぐっ!クソが!」
フラフラと立ち上がるが俺が連翹を放った右足は宙に浮かせたまま片足で立ち上がる。
「と思ったが俺らにはあんまり時間ねぇんだった」
「うおおおお!」
奴は飛び上がり今度は両腕を巨大化させ、ラッシュを撃ち込む体勢をとる。
「殴り潰してやる!」
「白炎榴弾!」
両腕目掛け榴弾を放つ、ラッシュ前に着弾し炸裂する。だが、奴の右腕は爆炎の中振り下ろされる。
「タフさはやっぱあるみたいだな、だがただそれだけだ」
俺は左足を踏み込む。
「白炎・螺旋向火葵!」
俺は回転を加えた向火葵を巨大な拳に向けて繰り出した。
「ぐああああああ!!」
まるでその巨体が嘘のように奴はぶっ飛んでいく。その巨大な腕で木々を薙ぎ倒しながら倒れた。
「威張ってた割にはそんなもんか」
俺は気力制御リングを取り出し、奴に取り付けた。
◇◇◇
私とイズミさんは全身黒ずくめの男と鳥男と対峙する。
「僕一人で大丈夫そうだ、鳥くんは休んでなよ」
「鳥くん!?」
その黒ずくめのが1歩前に出る。
「女2人、久しぶりの獲物にしては上等だな」
すると、その男がスゥっと消える。
「!?」
「イズミさん、私に任せてください」
今の消え方…見覚えがある…
「“略奪の光姫”発動!」
失った気憶を解放し、略奪と同じ要領で今男が消えたあたりの光を屈折させる。
すると、徐々にその男の姿が現れる。
「やっぱり」
「へぇ、これは驚いた。僕と同じか似た気術」
男は目を細め、まるで仮面の様な笑みを浮かべる。
「君は僕が殺してやるよ…鳥くん、やっぱりそっちはあげる」
私は冷や汗をかく、確実にあいつの気術は“屈折”…自分の周囲の光を屈折させて姿を消してる。対して私の略奪は“対象の瞳に入る光を屈折させて私に集める”気術…つまり略奪は無効化される可能性が高い、プラス私の光の気術も全て屈折によってあいつには届かない
「ハヅキちゃん、大丈夫なんか?」
「はい、イズミさんは鳥男の方をお願いします」
「OK、なんかあったらお互い協力するんやで」
「はいっ」
かと言ってイズミさんと私なら、私が確実に勝機を見出せるはず…
「略奪!」
私は男から光を奪う。
「っ!ふふ、なるほど見えなくなった…目に入る光を屈折させてるね…分かってると思うけど効かないよ?」
「スター・クロスバレッズ!」
2対の棘の付いた光の球を出現させる。それを奴の両側から激突させる、が当然奴に当たる直前でまるでクロスバレッズが避けるように進行方向が変わり空を切った後私の下へ戻ってくる。
「ぐっ…!」
「当然だよね、光でできたそれも屈折する」
奴は懐からナイフを取り出しクルクルと回す。
「どうする?もう終わり?後は体当たりでもしてくるかい?」
「返還の矢!」
返還の矢は略奪でマーキングした対象の位置へ屈折によって追尾する必中の矢、そして着弾時に複屈折させ対象の体全体へ衝撃を与える。ただこいつには追尾も複屈折も効かない可能性がある。
「それでも打つ!私はあんたみたいな奴らに苦戦してる暇はないの!」
僅かに集めた光と自分の光を乗せ矢を放つ。だが、矢もまた奴に当たる直前で曲がる。
「だけど、その矢は何度でもあんたに向かう、私の返還の矢は必ず当たる!」
「無駄だよ」
返還の矢がグルンッと大きく曲がり空へ飛んでいってしまう。
「ありゃ〜どっかいっちゃったね」
奴はナイフをこちらに向けると、まるでカウントダウンをするように一定のテンポで歩いてくる。
私はクロスバレッズで足元の石を弾き上げ奴のナイフを持つ手を目掛け打つ。だが、もう一方の手で簡単に受け止められる。
「光以外の物質は屈折させられないのね」
「そうなんだ、でも同じ気術を持たない相手には姿を消して近づくから関係ない。でも異常に気配に敏感な奴に捕まっちゃってね、相討ちだったんだけど僕はなんとか死なずに済んだんだ、彼の正義感のお陰で急所は外れてたんだよ」
私は何も出来ぬまま奴は目の前まで迫っていた。
「さぁ、もう射程圏内だ。僕を避けるその光の球で防いでみなよ」
そういいながらナイフをグッと握り直す。
「逃げないね、逃げられた方がそそられるんだけど」
「その言葉そっくりそのままお返しするわ」
私は見せつけるようにインカムのスイッチを押す
「イズミさん!」
「ん?」
男の眉間にシワができる。
「何の連絡だい?しょうがない、何かしでかす前に…死ねよ」
気力が籠ったナイフを突き出す、だがそのナイフは私に届くことはなく残像を残しながら左の方へ吹き飛んだ。
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ではまた次回でお会いしましょう〜